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【政経会議】スパイ防止法徹底講義(1) 不要論の誤りと論点整理 1/2

2022年3月6日

猫組改め『政経会議』

深田萌絵TVメンバーシップの『政経会議』では、皆さんに政治経済を学んでいただくと共に、「この国には何が必要なのか」ということについて、話し合いの場を設けていきたいと思います。

まずは『スパイ防止法』について。

今までは断片的にかいつまんで話をしてきましたが、今回は1ヵ月間かけて総合的に深堀りしていきます。

スパイ防止法不要論

「スパイ防止法は必要だ」というのが私の考えである。

しかし、「スパイ防止法は必要ない」と考える方が意外と多くいることも事実だ。

左派の方々は、「戦前に多くの冤罪事件が生まれた。スパイ防止法を作ると国家公権力が好き勝手にそれを行使して多くの無罪の人たちが投獄される。例えば戦争に反対しただけで赤だとみなされて投獄される。自由や平和を愛して何が悪いのだ。」と主張している。

右派の一部の方々は、「1985年、野党の反対により廃案となった『スパイ防止法案』の改訂版が2013年に成立した『特定秘密保護法』なのだ。それで取り締まれるからいいのだ。」と主張している。

両者の指摘が正しい部分と、やや実態と異なる部分を解説しよう。

不透明な司法手続き

1985年にスパイ防止法が制定できなかった背景には日本の司法手続きの不透明さがある。

日本では逮捕せずに勾留できる期間が3週間ほどあり、先進国の中では最も長い。その上、「罪を認めたら保釈してやる。罪を認めなければ保釈しない。」と司法取引のようなことをする。

被疑者に「無実を訴えても帰らせてもらえない。弁護士とも相談できない。一旦、罪を認める形を取れば家に帰れる。弁護士とも相談できる。」と思わせて罪を認めさせてしまえば、後はどうにでもなる。

被疑者と捜査官は同等の立場であるべきだ。しかし、警察や検察が自分の立場を勘違いして権力を乱用することが横行している。

田母神先生の事例がある。

検察側から「罪を認めれば帰らせてあげます。」と言われた田母神先生は「やっていないものは認められない。罪を否定します。」と答えたら169日間もの間勾留されたのだ。

日本は罪を認めたら釈放されて、罪を否定したら勾留される仕組みになっているとアメリカ人などに話したら「What!? ナンデスカソレ??」という反応をされる。

このような不公平な状況が議論もされないままに残されていた。「司法改革を行わない限りスパイ防止法を制定するのは危険だ」という考えにも一理ある。

そういう背景もあって、1985年のスパイ防止法は成立しなかった。

スパイ防止法は事実上存在する?

2013年、特定秘密保護法が成立し、翌2014年に施行された。

「今は特定秘密保護法があるからスパイ防止法はいらない」という論調は右派から出てきている。

ただし私の観点からすると特定秘密保護法でカバーできる範囲は非常に小さい。事前に指定された秘密しか保護できない。そして罰せられる対象も事前に審査を受けた人だけである。

特定秘密に指定する直前に盗まれたものはどうなるのか?
審査を受けた公務員以外の人から盗まれた場合は?

当然、捕らえることはできない。

特定秘密保護法は、公式文書の一部を限られた人間からしか保護できない抜け穴だらけの法律であるにも関わらず、「スパイ防止法は事実上存在する。だから必要ない。」という議論が巻き起こっている。

「スパイ防止法に相当する『特定秘密保護法』があるし、『不正競争防止法』、『外為法』、『不正アクセス禁止法』もある。それで十分だろう。」という議論だ。

しかし、スパイ行為そのものは合法でそれに付随する犯罪行為しか取り締まれないという状況は、全体の枠組みから見れば穴だらけだ。

本来は全体を包括的にスパイ防止法でカバーすべきである。ところが現行法では部分部分しかカバーできていない上、それぞれに運用上の大きな問題がある。

民間の世界において、産業スパイに対しては『不正競争防止法』がある。ただしこれは「不正な利益を得る、または相手に損害を与える目的」があった場合に処罰の対象となる。

行為ではなく目的である。つまり加害者の心情を被害者が立証しなければならない。そんなことはまず不可能だろう。

CFIUSと経済班

国際的な企業買収のターゲットになった日本企業に機微技術ある場合には、『国家安全保障局経済班』が審査する仕組みになっているが、ここにも問題が多い。

まず範囲が明確ではないし、どれだけ専門家がいるのかもわからない。

また、CIA(中央情報局)やNSA(アメリカ国家安全保障局)など、アメリカの情報機関と連携できなければなかなか取れない情報もある。

海外にも日本にもフロント企業はたくさんあるが、ヒューミント(人的諜報)もできる公式な情報機関を設立し、経済犯罪を調査する能力がある人がいなければ、後ろの資本関係まで調査することは難しい。

アメリカにCFIUS(対米外国投資委員会)という、経済班と同じ外国企業の経済取引を審査する機関がある。日本の経済班はそのカウンターパートとして作られた。

CFIUSにはかなり多くの専門家がいて、その専門家の中には外国ロビー団体のフロントの役割を果たしている人もいる。中国や台湾も子飼いのロビイストを通じて自分たちに有利な判断をする人を送り込んでいるが、そのような人たちをウォッチする形で政治家もきちんと意見を述べている。

日本の経済班の問題は政権に対して忖度する傾向が強いことだ。

実際、パナソニック半導体の審議のときには、ほぼ機能していなかったと考えられる。

〈次回に続く(後編はnoteの有料コンテンツとなります)〉



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