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少しだけ大人になってしまった私に -星の王子さま-

星の王子さま/サン=テグジュペリ


「いつまでも子どもでいたい」と思う
その理由がピーターパンとは違うことを感じていながら 長年見つからないままだった解は、とうの昔にサン=テグジュペリが記していた。

大人になると見えなくなってしまうものを
失いたくなくて 街を離れて川辺に住んだ

賑やかで明るい夜の繁華街に繰り出して
飲めない酒を煽るとき
いつから人と話すのに酒が必要だったか
何故こうしてまで人と居たいのか

そんな違和感ごと酒で流しこんで
そんなことをした自分を忘れたくて
また酒を飲みに街へ出た

私は王子さまの言う20億の人間の
どれにも分類されないと思っていたのに
まさか"酔っぱらい"だったとは。

そして最近は"点灯人"になりかけているけれど
それはまた別のお話とする。


街頭のない閑静な住宅街
河川敷のせせらぎと、
少し遠くで振動する夜行列車の音
オリオン座の三つ星が見える空に
雲の流れを知らせてくれる月明かり
そんな夜道のどこかに、猫がいるかもしれないと思うと浮き足立つ帰路

眩しすぎるネオンと煙草の煙が妨げていた
すべてが見える

あの時よりずっと一人でいる時間は増えたけど
あの時よりずっと心が満たされる

世界を広げなくてはと思って
たくさんの人に会って話を聞いていた時より
芝生に寝そべって 木漏れ日の隙間から
高い高い空を行く鷹を眺める時の方が
ずっと広い世界を感じられる


子どもの頃 通学路で見つけた
野いちごの前にしゃがみ込んで、
これがヘビイチゴと言うものだろか、
食べても平気だろうかと何十分でも議論した
あの愛しい友人たちは今 医者や銀行員をしている

一方で相変わらず河原に青い花が咲いたとか
赤く色づいた葉の最後の1枚が落ちただとか
そんなことばかり記録してきた昨年の自分を振り返って、悪くないなと思う。



たぶん今の私なら
星の王子さまと仲良くなれる

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