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BLアワード2024の深層 『40までにしたい10のこと』はなぜ全世代で1位を獲得したのか


※BLアワードとは
発表前年に発売された商業BL作品の中から、最も輝いていたBLの最高峰をファンの投票によって決定するランキング。2009年より開始し、今回の「BLアワード2024」で15回目を迎えます。

今年の有効投票数は、驚異の22,536票!
改めて、ご参加いただいた皆様に感謝申し上げます。

去年に引き続き、「BLアワード2024」の投票結果からユーザーインサイトを探ってみようと思います!
昨年の記事はコチラ

BLアワード投票者のユーザー層

投票ユーザーの年齢分布は昨年と同様となっており、20代の投票者が最も多く、次いで10代からの投票が多い結果となりました。
10代・20代の投票数を合わせると全体投票数の50%を超え、依然として若年層からの支持が厚くなっています。

一方で国外からの投票数は昨年より大きく伸びた結果となり、全体の10%程となりました。
言語別の内訳をみると、英語圏からの投票が約5%と最も多い結果となりました。昨年は中国語での投票が多かったため、新たな傾向と言えそうです。

入賞作品の傾向

BLソムリエ メソッド8分類

年代別投票マップ

入賞作品を見ていくと、2024年はエロ控えめのラブコメテイストの作品が強かったように思えます。
また、2023年は王道甘々系タイプが全体的なトレンドとなっていましたが、2024年はジャンルが偏らず分散した印象です。
普段は闇BLの人気が高いTikTokでもライトなラブコメ系作品が人気となっていました。

エモーショナル部門 年代別投票ランキング

エモーショナル部門はオメガバースやdom/subユニバースといった特殊設定を用いた作品がTOP3を独占!
その中でもコア層である10代から20代の得票を多く集めた『この手を離さないで2』が堂々の第1位に輝きました。
一方、30代以上のユーザーからは『后宮のオメガ 上』『はじめて、はじめました。』など伝統的なBLらしい作品が人気を集めました。

ラブコメ部門 年代別投票ランキング

『40までにしたい10のこと』が全世代で1位を獲得し、その人気は圧倒的でした!
受けの年齢やリーマン設定を考えると30代以上の人気が中心なのでは?と想像していましたが、実際は10代から60代まで幅広く支持される結果になりました。

思い返せば、2021年にコミック部門1位だった「『オールドファッションカップケーキ』も40を手前にしたキャラクターが登場しているが、本作と同じく全世代に支持されていました。

年下部下とアラフォー上司という設定は一見ニッチですが、実は支持を獲得しやすいコンテンツなのかもしれません。
できる男だけど、いまひとつチャンスをつかめない受けが、年下の攻めに愛されて人生が変わっていく…。そんな設定の作品が今後のトレンドのひとつとなるのではないでしょうか。

ディープ部門 年代別投票ランキング

今年のディープ部門は、キャラクターのファッションや雰囲気がオシャレな作品が上位にランクインしている傾向にありました。

過剰な趣味性を持った作品、実験的な作品といったトゲトゲしさはそこまでなく、バランスを取りつつ趣味性を表現する作品が目立ったような印象です。
ストーリーに重点を置いた重めの作品は、昨年に引き続き停滞気味。節目がいつ変わるか注目ですね!

フェチ部門 年代別投票ランキング

『セックスドロップ 2』が全世代で1位を獲得!
作品のオシャレ感とエロの融合、そしてちょっと考えさせられるストーリー性も加わり2位にダブルスコアをつける完全優勝っぷりを見せました。

また、昨年からの傾向として、ファッショナブルなポップエロが主流となっているように感じています。
ピアス、アクセサリー、鍛えられた筋肉、タトゥーといったフェチ要素が作品にさらなる趣味性を付与しているのです。

2023年の作品は即断即決的にストーリーが進んでいく展開が増えていましたが、『セックスドロップ 2 』は多少モヤモヤ感を感じる部分をバランスよく残しており、読者へ負荷をかけるさじ加減が現代にジャストフイットしていたと考えます。

次に来る部門 年代別投票ランキング

「次に来るBL」部門は、例年より個性が強めな作品が支持される結果となりました!
作家性の強い作風が今の新人に求められているのか、それとも尖った作品を描くことで注目が集まるのか…。真偽は不明ですが、もはやディープ部門よりも先鋭的な作品が集まっている印象です。

それでも昨年は王道甘々作品が多く選出されていましたが、今年は異色作品がずらりと並んでいます。
業界全体で王道回帰が進むかと思いきや、ふたたびバリエーションが広がる兆候のように思えてなりません。

BLアワードの中でも「次に来る」部門はもっとも振り幅が広く、かつ劇的にトレンドが変わる部門のため、来年の予測をつけるのがなかなか難しいのですが、過去にとらわれず実験的な作品が許されていることが今年のランキングから読み取れます。
BLはまだまだ冒険できる余地があり、未来は明るいですね!

webtoon部門 年代別投票ランキング

今年から発足したwebtoon部門。ちるちる編集部の予想をはるかに上回る投票数が集まりました!
世間的には初期の過剰な期待の反動で「幻滅期」に入ったと思われるwebtoonですが、BLジャンルでは需要に供給が追いついていない状況となっています。

他ジャンルと比較してBLジャンルのwebtoonは爆発性こそないものの、継続的な安定性が見込めると思っています。
韓国産のwebtoonはジャンル分けすると「骨太」「王道甘々」のほぼ2ジャンルに集約されており、同じBLとはいえ現在の日本で展開されているBL漫画の文化とは異なる概念でコンテンツ展開が行われています。

世界では日本のBLよりwebtoonのBLが一般化しているため、BLの作法としてはwebtoonBLがスタンダートかつ軸となっていると言えそうです。

シリーズ部門 年代別投票ランキング

世代によって票を集めている作品にばらつきがあるのが印象的なシリーズ部門。
ファン待望の完結巻であり、唯一全世代からランクインしている『ギヴン9』が昨年の5位から大躍進を遂げました!

まとめ

今年、ユーザーから人気を集めた作品は王道をベースとしつつ、設定に若干のアレンジを加えたものが多くなっていました。
『40までにしたい10のこと』はアラフォーのリーマンという設定だけ見ると2021年にコミック部門1位を受賞した『オールドファッションカップケーキ』と重なるところが多くなっています。
10代から60代まで全世代に1位となったのは15年のBLアワードのなかでこの2作だけです。

今年初めて実施した有識者部門では1位が『相原君と嘉島君はラブコメかもしれない』、3位が『40までにしたい10のこと』となっており、
有識者投票のほうがユーザー投票より安定性の高い作品に支持が集まったのは意外な結果でした。

今年は王道優位の傾向が落ち着いて、シリアス系に寄せたストーリーが受け入れられているように思えます。
作品ベースは王道系の展開を意識して、設定に新鮮味を持たせた作品がヒットしやすい環境になっているのではないでしょうか?

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