【on BLUE / from RED編集部インタビュー・後編】BL商業デビューの条件とは?ヒット作のデビュー経緯を聞いてみた
ヒット作の裏側から見る、商業デビューの条件
こんにちは!
腐女子マーケティング研究所 所員のうーろんです。
今回は前編に引き続き、on BLUE / from RED編集部の仲俣さんのインタビューをお送りしたいと思います!
後編では仲俣さん担当作のデビュー経緯などをお聞きしながら、創作BL作家さんが商業デビューを目指すために必要な条件について探っていきます!
ぜひ最後まで楽しんでご覧ください!
担当作『君の夜に触れる』制作秘話
『君の夜に触れる』作:もりもより
もりもより先生との出会いは「美しすぎる一枚絵」
仲俣さん もり先生は、実は『君の夜に触れる』でのデビューまで漫画を描いたことがなかったんです!
──え!? それであの超絶クオリティ、驚きです……!!!
仲俣さん そうなんですよ。Twitterに投稿されていたモノクロイラストがとても美しく、「このイラストが漫画になったらどんなに素敵な作品ができるだろう…」と、いてもたってもいられなくなり、ご連絡をさせていただきました。たった一枚の絵だけで、今にも動き出しそうな躍動感があったり、オリジナルキャラクターの設定にも奥行きやテーマ性、物語を感じたのを覚えています。そしてそのイラストたちへの思いを、かなり長文でお送りしました…(笑)。
──一枚絵しか描いていない作家さんにマンガのご執筆をお願いするというのは、けっこうな賭けですよね……!
仲俣さん そうですね。編集長には「まだ一枚絵しかないよ!?」と心配されていたのですが、「でもこの絵がマンガになったら絶対素晴らしいんです!!!」と気持ちだけで押し切りました(笑)。当時新卒1年目だったんですけど、「いけます!」という自信とともにお声掛けに至りました。
──もり先生にとっても仲俣さんにとっても初々しい作品となった『君の夜に触れる』ですが、本作のテーマはどのように決められましたか?
仲俣さん 普段は作家さんのお好きな作品やジャンル、カップリング観、シチュエーションなどをお伺いして、その中から“多くの読者さんに商業作品として楽しんでもらえそう”と感じた要素を抽出してテーマを固めていただくことが多いですが、『君の夜に触れる』に関しては先生から最初にいただいた案を少し調整したくらいで、すんなりとテーマが決まりました。
一方で先生はマンガのご執筆経験がなかったので、ネームの作り方やマンガの描き方など、作業の部分に関しては一歩一歩手探りでした。社内にある「マンガの作り方」みたいな本を資料としてお送りすることもあり、初歩から学んでいった感じです。打ち合わせを何度も重ねたり、時には5時間くらい電話でお話ししたりすることもありました……(笑)。そんな風に連載を進めていったので、話数を重ねるごとにお話の構成もコマ割りも画力も魅力的になっていて、「この作家さんは、どこまで進化し続けるのだろう…!?」と毎回感動しています。
シュークリームの新人発掘
新人発掘は各編集者のセンス次第
──普段はどのような方法で新人発掘を行っていますか?
仲俣さん Twitterやpixivを通して作家さんにお声かけさせていただくことが多いです。メールアドレスが記載されている場合にはそちらから、記載のない場合にはDMからご連絡させていただく場合もあります。あとは同人イベントなどに出張編集部として参加することもあり、そこで直接お名刺を渡すこともあります。
──それぞれ編集者個人がフットワーク軽くアタックしにいっている感じなんですね!
仲俣さん そうですね。いずれも、編集者それぞれが「いい」「仕事したい」と思った人にアタックしているだけで、特別なことはしていません。
『凪くんと早崎くん』黄色乃ねこ先生 デビュー経緯——pixiv投稿から商業デビューへ
仲俣さん 『凪くんと早崎くん』はもともと黄色乃ねこ先生が個人的にpixivに公開されていた作品だったのですが、最初からかなり完成度が高くpixivの評価も高かったんです。端正な画面と惜しみないフェチ感、漫画のお上手さに胸を打たれ「うちで単行本化させていただけませんか?」とお声掛けした次第です。
こちらの作品に関しては既に先生のなかで描きたいものが固まっていて、マンガを描き慣れている方だったので、内容に関してこちらから意見することはあまりなかったです。黄色乃ねこ先生は「読者の求めているキャラの反応」を描くのがすごくお上手で、“ツンデレキャラがここでデレたら楽しいな…“というような、ツボをピンポイントに押してくれるところが素敵だなと感じています。
──商業デビューを目指す作家さんはpixivに作品を投稿してみるのが第一歩かもしれないですね。
仲俣さん そうですね! 一番近道なのは、ひとつの作品を完成させて投稿することだと思います。まずはだいたい24~32ページくらいの作品を描いてみると良いと思います。
BL編集者は持ち込みでどこを見ている?
──持ち込みは平均して月に何件ほどありますか?
仲俣さん 月毎にばらつきがあるのですが、イベント前などの多いときは20〜30件あるときもあります……!
──持ち込み作品を見る際には、どのようなポイントを意識していますか?
仲俣さん どんな作品でも、一番最初に目に入ってくる情報は“絵”なので、そう言った意味でまずは絵に注目しています。絵柄はもちろん画力など、色々含めて魅力的かどうかを判断しています。ネームや構成、キャラクターの魅力なども大事ですが、その作品の顔とも言える画力や基礎的なデッサン力は、鍛えておいて損はないと思います!
BLマンガ家デビューに向けて
まずはマンガを描いて読んでもらおう!
──BL商業デビューを目指すためには、まず何をすればよいでしょうか?
仲俣さん まずはマンガを描いてみましょう! 完成したらお友達でも家族でもTwitterでも持ち込みでも良いので誰かに感想をもらうのがいいと思います。
──自分が描いた作品を誰かに見せるのはけっこう勇気がいりますよね……。
仲俣さん そうなんですよね……! 大切に描いてきた作品がどう思われるかな……と怖くなる気持ちも分かるんです。ただその作品を通して、自分の意図していたことが何%伝わっているかを確認すると「読者さんを意識する」体験ができるかもしれません。
──普段から摂取しているコンテンツに対する感想を言語化する、というのもまた力になりそうですよね。
仲俣さん 商業BL作品のインプットのほか、映画やドラマ、観劇など、さまざまなカルチャーに触れている方は創作の泉が尽きない方が多いですね。言語化することで、自分の“好き“はどこからくるのか、どんな人やもの、関係性、シチュエーションが好きなのか……などが分かってくると思います。
そしてアウトプットの時に”好き”の引き出しがたくさんあると、「これを描きたい!」という意欲がすぐに出てくるんです。そういう引き出しを増やしていく意識が大切ですね。
「バズる作品」と「売れる作品」は性質が異なる
──昨今SNSでの創作活動が活発ですが、いわゆる「バズる作品」と商業で「売れる作品」とでは内容にギャップがあるように感じます。このような「創作BLブーム」を、編集者としてどのように感じていますか?
仲俣さん 個人的な所感ですが「バズる」作品は、“即落ち2コマ”や“ギャップ”など、1~4Pの間で【わかりやすさ】を求められている気がしています。タイムラインに流れてきて、大きなコマや大きなセリフがパッと目に入り、パッと「いいね」できる。「タイパ(タイムパフォーマンス)」を求められる現代では、無料でわかりやすい萌えを摂取できる作品が拡散されやすいのではないでしょうか。
──一方で「商業作品」としてお金を出して買ってもらうには、どのようなポイントが重要になってくるのでしょうか。
仲俣さん お金を出して本を購入していただくには「一冊を通して得られるカタルシス(=カップリングに対して、やっと想いが通じ合ってよかったね! と感じるようなときめき)」があるほうが手に取られやすいと思います。その方が自分の本棚に連れて帰ってくれることが多いんだと思っています。
──商業BL作品は1冊完結が基本なので、その中にいかにカタルシスを詰め込むかというのが勝負所なんですね。
仲俣さん バズる作品は1枚絵や即落ち2コマなどで完結する面白さが求められますが、商業作品では「いかにページをめくってもらうか」ということが重要。1ページ目から200ページまでめくらせ続けないといけないからこそ、作品を通じた豊かな満足感が必要になってくるんだと思います。
つまりまとめると、
Twitter人気→わかりやすさ、即効性の萌え
商業人気→余韻、一冊を通して得られる重厚な満足感
という傾向でしょうか。
Twitterでバズるものでも、長いストーリーに発展していきそうな素養を持った作品は商業BLに向いているのではないかと思います!
商業デビューを目指す作家さんへのメッセージ
──最後に商業デビューを目指す創作BL作家の方々にメッセージをお願いいたします。
仲俣さん Twitterでの「創作BL」タグで伸びることと「商業BL」として読者さんに楽しんでもらうことは、似ているようで少し異なる点もあります。商業では、冒頭で読者さんを引きつけ、そこからいかに「次のページへめくってもらうか」を考えることが商業デビューへの近道なのではないかと思います。
心ときめく素敵なボーイズラブ作品を、弊社はいつでもお待ちしております。少しでもご興味を持っていただけましたら、ぜひご投稿ください!
まとめ
いかがだったでしょうか!
まさかあのヒット作・『君の夜に触れる』のもりもより先生がマンガ未経験だったなんて、信じられないくらい素晴らしい作品の仕上がりですよね……!!!
たとえ一枚絵の段階でも、編集者が光るものを感じれば商業デビューに繋がることもあるようです。
しかしまずは何よりも「マンガを描き上げる」という経験が重要とのことでした!
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渾身の作品が完成したら、ぜひ編集部に持ち込みしてみてくださいね♪
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