「逆の境」

逆境で人がわかる。良い時は皆良いことを言う。相手が求めることをしてくれる時はみんな愛想よく振舞う。そのメッキは簡単には剥がれない。隠蔽や化粧の技術は現代では誰もが身に着け、高度化する一方だ。そんな状況を打開できる契機、メッキを剥がす装置、それが逆境だ。

解説しよう。まず抽象論から。
逆境は「安心」と「信頼」を振るいにかける。安心社会に慣れ切った蛙は「機会コスト」より「取引コスト」の方が高いと思い込んで疑わない。つまり「取引コスト」を下げることに重きを置く。実際は「機会コスト」の方が高くなっているにもかかわらず。そしていつも通りの明日を迎えることを疑わず、眠りについたら最後二度と目覚めることはない。社会を動かす燃料はすでに安心から信頼に移り変わっている。

次に具体論へ。
正直、具体論はしたくない。具体は常に変わるものでミスリードを招きかねないからだ。それでもシンプルかつ強力な具体的技術は、「相手の立場になってみて、絶対にしてほしくないことをしない」ってこと。してほしいことをする事は難しい。藁の山から針を取り出すようなものだ。しかし、してほしくないことをしない事は容易い。シンプルに自分だったら嫌だと思うことをしなければ良いのだ。その結果、もし自分が想像した結果にならなかったら。相手が嫌な顔をしたら。謝ればよい。白状すればよい。「あなたのことを考えて、よかれと思ってやった」と言う誰かを僕は許す。僕だってそうしたのだから。このスタイルはいい。シンプルでいい。そしてなにより不思議と大体うまくいくのだ。

隠蔽より白状する技術を磨こう。強がらず弱さを曝そう。そんなあなたを僕は信じる。


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