「志願理由書・小論文」の添削・面接指導・対話の重要性

推薦入試のラッシュなのか、この時期に多くの学生が○○大学の推薦入試を受けるので、ご指導お願いしますとやってくる。私はどんな学生でも必ず4つの質問を本人に尋ねることにしている。

・高校時代に最も力を取り入れたことは何か?

・なぜ○○大学○○学部○○学科を志望するのか?

・大学に入学したら何に力を入れたいか?

・大学卒業後に何に力を入れたいか?

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これらは一見バラバラな質問に思えるかもしれないが、一貫して聞いていることはただ一つである。それは「あなたはどういう人ですか?」ということだ。高校時代頑張ったことは書けるけど、○○大学を志望する理由は書けませんという学生はたくさんいるだろう。ではどうすれば、書けるようになるのか。自分の人生に一本の軸を設定してみたらどうだろうか。最も分かりやすい事例を紹介させてもらおう。

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こういう事例は比較的少ないが、あえて例に挙げる。高校時代に剣道の全国大会優勝を目指して猛稽古を重ねた。高校時代に力を入れたこと。大学でもインカレ優勝をしたいので○○大学を志望している。大学でも剣道三昧で打ち込みたい。大学卒業後は地元の警察官になり剣道の指導者になりたい。

この人の場合は過去から将来に至るまで「剣道」という一つの軸で作られている。非常に分かりやすい事例である。大半の推薦入試受験者には該当しない事例である。高校時代力を入れてきたことと大学で力を入れたいことがズレている人が大半であろう。大学まで見越して高校1年から力を入れることを計画して過ごしている人がいたら、かなりすごいことだ。大半の人は目の前の1日1日を一生懸命過ごして、気がついたら3年生の推薦入試前ということが大半ではないだろうか。現場の高校生を悪く言うつもりは全くありません。現実として将来のことを真剣に考えて戦略的な高校生活を送れている人は少ない印象を受ける。ではどうしたらいいか。一番簡単な手法を紹介しよう。かつて前田祐二さんの『メモの魔力』という本の中でも紹介されている技法だ。それは抽象化である。

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高校時代に頑張ったエピソードから何を学んだのか、苦労話を単に語るだけではいけない。そこから重要の事項を抽象化させる。抽象化させると先ほど指摘したズレを解消させることが可能な糸口が見えてくる。高校時代に野球を頑張っていた人が大学では統計学を勉強したいという場合も、野球の試合で戦術面で相手チームの球の出方を全て分析して、予想しながら戦いにのぞんだというエピソードがあれば、そこから抽象化を試みる。単に目の前の試合を一生懸命取り組むだけでなく、試合データをもとに相手を分析することの大切さを学んだ。この分析という言葉が抽象化した中で出てきたキーワードとなる。これを経済学の分野で転用して再び具体的なエピソードを語れると良い。一見バラバラだった事象が抽象化したことで共通点や類似点が出てくるのである。この発想で日常生活のことを一つ一つ考えるとかなり深い視野を持つことができる。書くことの重要性を改めて認識した。

書いた用紙を見ながら、一つ一つの表現に対するツッコミを入れる。それに対して学生が答える。まるで大学のゼミのような濃い時間を経験できた。こういう直接対話を重ねる中で、視野を広げたり考えを深める教育活動の価値はかなり大きい。講義授業より数倍の価値がある。一対一の対話活動、しかも内容が深まる活動をどれだけ入れられるか。オクスフォード大学のチュートリアルのような教育活動が日本の高校でできればいいなぁという夢を見た1日であった。

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