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「闇のファシリに対する防衛術」やります。

「あらゆる技術は使い手によって人を救いもすれば殺しもする」という原則に対して、ファシリテーションという技術もまた例外ではありません。

正しく使えば「対話を生み、深い気づきを得る」ことができるファシリテーションは、誤った使い方をすれば「人の思考を操る」ことができます。

僕はその「人の思考を操るファシリテーション」を「ダークファシリテーション」と名付けました。ダークファシリテーションが使われるのは、例えば、結論ありきで組み立てられたワークショップなどです。

そんなダークファシリテーションを、これまで細々と収集・整理をしてきました。
そのコレクションを見た人が「これは面白い!」と言ってくれたので、より研究するための動き出しを始めます。

それがこの「闇のファシリに対する防衛術」です。

これで何をするのか、詳しくはイベントページの説明にあります。また、どんな意義があるのかもこちらで説明しています。

このnoteでは、なぜ僕が「ダークファシリテーションを収集しようと思ったのか?」を書きたいと思います。

闇のファシリの誘惑

人生で初めてワークショップのファシリテーターにチャレンジしてからすでにそれなりの年月が経過しました。未だ、この技術の高みははるかに遠いですが、技術の成長に伴いある誘惑が浮かび上がってきました。

それは、
場をコントロールする誘惑
です。

目の前にいる、多い時には数十人の人々がこの時間「何を考え、何を語るのか?」を自分がコントロールしたいという誘惑です。

ここには強烈な全能感と優越感が漂いファシリテーションする自分の頭の中を曇らせます。

僕はその誘惑を理性的に
「そんなにコントロールしたいなら、対話の場を作る意味がない。」
と思うことで対抗してきました。

予想外の角度からの誘惑に負ける

ところが、ある時のことです。
あまりに生産性のない会議に出続けなければならない状況に追い込まれました。一言でいえば数ヶ月間、なんの進展もしない会議です。

これに我慢の限界を迎えてしまいました。
そして、ダークファシリテーションに手を出してしまったのです。

その時に使ったのをパターンランゲージの形にまとめたのがこちらの「対話のモルヒネ」です。

実行したのは、事前に設計した自分なりの結論にたどり着くように場を誘導する行為です。さも、その場で議論した結果、発見した結論かのように偽装して。

このとき僕は体験しまったのです
「対話の皮を被りながらも、場はコントロールできる。」
ということを。

それは強烈に湧き上がる新しい誘惑の発見でした。
コントロールすれば、楽に場を動かせる
という、対話の中で生まれる価値を信じる忍耐とは真逆の方向への誘惑です。

この誘惑に対処するために生み出したのが、ダークファシリテーションという概念でした。

ダークファシリテーションの必要性

ダークファシリテーションを作ることの必要性を僕は2つの面から感じています。

1つ目が、対外的な面です。
ダークファシリテーションという概念を作り、何がダークファシリテーションなのかを可視化することで発見することができるようになります。

「今、対話のモルヒネ使われてる」
と、意識できることで対抗が可能になります。対話のモルヒネを解消するのか、回避するのかはその場やその人の判断によりますが、少なくとも「使われた結果」を予想することができます。

これが1つ目の必要性です。

そして、ダークファシリテーションを集める中で感じているのは、これを確信犯的に使う人だけでなく無意識に使っている人も多い、という事です。

「今日初めてファシリテーションしますが…」
と一言目に言ってくる人は大抵使っています。お隠れ卑弥呼ヤギさんのお手紙借り物の青い鳥など。
僕はこの一言を聞いた時点で、まともな対話の場を期待しなくなります。

ただ、正しいファシリテーションはなく、状況や意図によって様々な解がある、という特性があります。
すると、無意識にダークファシリテーションを使う人に対して「なにがいけないのか?」を伝えるのはとても大変です。

そのため、パターンランゲージという方法を使って「そのダークファシリテーションがなぜ問題なのか?」をあらかじめ言語化しておく事で、ファシリテーターのスキルアップに繋がります。

1つの正解はないけれど、ドボンは沢山あるからです。これがもう1つの必要性です。

ダークファシリテーションを集めることで自分の振り返りができた

あの時、ダークファシリテーションを使って以来、僕は自分がファシリテートする時に「ダークファシリテーションを使ってはいないか?」という問いを投げられるようになりました。

「面倒な参加者を排除して自分に都合よく場を動かそうとしていないか?」
「この結論は最初に自分が考えた通りのプロセスを経て出たものではないか?」

対話の場作りを掲げる以上、これらを守らねば対話など生まれようがないように感じます。

最後に、しかしダークファシリテーションは必要な瞬間があることも確かです。
特に、対話を必要としない瞬間にはものすごく有効に機能します。面倒ごとに巻き込まれて、早々に脱出したい時や自分に降りかかる火の粉を避けなければならない時。

ダークファシリテーションはとても有効な武器になります。

最初に書いた通り、ファシリテーションが1つの技術であるのと同様に、ダークファシリテーションもまた1つの技術にすぎません。
どの技術が正しく、なにが誤りなのかを決めるのは人間です。

だからこそ、この武器を無意識に振るう人を減らし、意識的に使う人に対抗する手段を磨くことが大切だと思っています。

そんな場になるといいなぁ。
普通に飲んでるだけかもしれないけど笑

#週1note

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