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「おとなの絵本プロジェクト」を卒業しました。

かれこれ4、5年に渡り立ち上げ当初から参加していた「おとなの絵本プロジェクト」の運営メンバーを卒業しました。

おとなの絵本プロジェクトとは、
「大人による、大人のための絵本読み聞かせ」をテーマにしたイベントです。要はカラオケの絵本読み聞かせ版だと思っていただければ、と。

全員が趣味で有志メンバーだけでやっている活動とはいえ、Facebookページの「いいね」は完全オーガニック(要は広告費ゼロ)で3,000を超えており、下手なマーケティング(笑)な連中には負けないプロジェクトです。
動員数が年間で1,000人を超えたことがあるのも、何気にすごい。

全国に「のれん分け」された活動があって、名古屋とか北海道とか大阪とか滋賀でも定期開催されています。他に出張開催やスピンオフ企画もあります。面白いのは、各地の活動は「大人が絵本を楽しむ」というコンセプトだけ共通しながら、それぞれが自由な解釈で楽しんでいるのが特徴です。

僕はこれの立ち上げ時から運営メンバーをしていました。主にカメラと機材係。そこは安定のいつもどおりです笑

初期メンバーの1人として、色々な人の入れ替わりを眺めてきた自分が「卒業」という形でプロジェクトを離れるわけですが、周囲からはかなり驚かれたようです。

「本当に卒業するの?」

とばかり言われます。
いや、言っていただけます。

一方で、

「なんで卒業するの?」

も、たくさん聞かれます。ここでなんかいい具合に気の利いた「〜だから卒業します!」があればみんな納得してくれるんでしょうが、これがなかなか難しい。
「音楽性の違いです( ー`дー´)」みたいな言い訳で誤魔化してしまえればどれだけ楽か…
と、心の底で(無意識に!)思っていたのを、15年来の友人に見抜かれて指摘されました。

「お前、ちゃんとそこは説明しろよ」

と、言うわけで卒業した翌朝からこちらのnoteを書き始めた次第です。やれやれ、3日もかかった。

僕は、僕が卒業する理由は絵本の活動なのだから、絵本で伝えるのがいいかな、と思っていました。

そう思って、当日も2冊の絵本を読みました。
それが、トップ画にもある2冊の絵本『空の飛び方』と『オレゴンの旅』です。この2冊を読みながら、僕が込めていた想いを言葉にしてみようと思います。

『空の飛び方』

これは「おとなの絵本プロジェクト」が始まった、第1回で読んだ本です。他にも、周年とか節目で読んできたお気に入りの一冊です。

物語は、ある日、ある男の人の元に空からペンギンが落っこちてくるところから物語は始まります。ペンギンは「空が飛べるんだ」と言い、男は「そんな訳はないけど、一緒にやってみるかな」と。ペンギンと一緒に空の飛び方を試行錯誤していきます。
最後は、空を飛ぶペンギンの群れを見たペンギンがふわりと空へ羽ばたいていくシーンで終わります。
空の飛び方

昔、これを読んだ後にこんなことを言われました。

「前に読んだときは、男の人があなたみたいだったけど、今回はペンギンの方があなたに見えた

なるほど、と。

そんなこと思ってもいなかったけれど、言われてみれば当てはまる気がします。僕は、コミュニティや状況に応じて「ペンギンを見守る男」と「空を飛ぶペンギン」の2役を入れ代わり立ち代わり演じていたんだなぁ、と。

おとなの絵本プロジェクトの中での僕は、「おとなも絵本を楽しみたいはず」と語るペンギンにしぶしぶ付き合う(本当はまんざらでもないんですが、嫌々感を出すのが男の照れ隠しってやつです)男でした。

そこには様々なペンギンたちが空から落っこちてきて、やがて空へ飛び立っていきました。

ずっと僕は、ペンギンたちを見送る側でした。

『オレゴンの旅』

この絵本と出会ってから、まだ1週間も経っていません。本屋さんで店番をしていたら偶然見つけたのですが、誰かに買われると悔しいので途中でこっそりバックヤードに隠しておきました。
(その後ちゃんと買いましたよ!)

物語は、星のサーカス団から始まります。クラウンの主人公は、友達のクマのオレゴンが「森に行きたい」と言うので、一緒に旅をします。
絵本の中ではドラマも事件も起こりません。
ヒッチハイクをして、1935年製の壊れたシボレーの中で寝て、貨物列車に乗り込んで、アメリカを旅するロードムービーのような絵本です。旅の中で持っていたものを手放し、最後は何も持たずにオレゴンと別れて道化は自分自身の旅に出ます。
その時、彼は「取れないんだ」と言っていた赤鼻を置いていく、のがラストシーンです。
オレゴンの旅

旅の最後に道化は何者でもなくなります。僕はこの物語の中に出てくる道化にとても感情移入しました。
そう、僕は彼と同じように、「森に行きたい」という友と旅をするのが楽しいのです。

ただ、その旅は自分自身の旅の始まりでもあるのです。

旅の終わりが、次の旅の始まりであるように。
僕は、自分でも気づかない内に「ペンギンを見送る男」から「クマと旅する道化」になっていたんだな、と。卒業を決めて、自分なりに理由を探していく中でこの絵本と出会って気づきました。

さて、そんな想いで2冊を読んでおとなの絵本プロジェクトを卒業してきました。そして、うちに帰り2冊の絵本を本棚に戻すために並べてみて、ふと気がついたことがあります。

空の飛び方』の表紙は、1人と1羽が向き合っています。

オレゴンの旅』の表紙では、1人と1匹が同じ方向を向いています。

僕に起こったのって、まさにこういう変化だったんだなぁって。

社会人になってからの僕は、誰かの「やりたい」を聞いて、それを信じて、一緒に形にしていく関わり方が大半でした。料理教室でもヨガ教室でも、その中では、僕は主役にならない立場を意識してきました。

でもある時ふと、砂時計の砂が落ちきったように、自分の旅がしたくなりました。

それは一人旅とはまたちょっと違います。クマのオレゴンと一緒に旅するように、誰かと一緒でもいいのです。ただ、その旅をする理由が自分の中にあるのです。

僕は自分の意思でいつでも旅をやめられる。
その自由を手にする覚悟が芽生えました。

その瞬間、僕の旅が始まってしまったのです。
僕がこの卒業を決めたのにそれ以上の理由はありません。

この先に何が待ってるから知らないけれど、
たぶん苦しいことや辛いことがたくさんあるけど、
だから、
近くに来たらまた寄らせてください。
きっとお土産をどっさり持っていきます。
今まで、ありがとうございました。
またね。

#週1note

これは「#週1note」という企画の中で作ったnoteです。
詳しくはこちら
https://note.mu/hiromi_okb/m/mcb1a9c4cee2c

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