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エントロピーの法則

 熱力学の第二法則。いわゆるエントロピーの法則に関する本を学生時代にいくつか読んだことがあります。なぜそんな本を読んでいたかというと、政治家をしていた父が環境問題へのアプローチをエントロピーの法則に基づいて行うべきだと考えていたからです。当時、父の手伝いをしていましたので、エントロピーに関する本を読んで、父に論点整理した資料をつくって渡したり、議論相手をしていました。

 文系の私は、なかなか理解するのが大変でしたが、私の理解では、秩序あるものは無秩序になる、形あるものは最終的にはなくなっていく、エネルギーをかけないと熱は下がってしまう。といった例え話から紐解いていきました。

 下の写真は、私の父の議員時代の写真です。190センチの大男で、理系。加えて父と私は性格が全然違うので「本当に親子?」と言われます。

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 ちなみに父は、環境問題のみならず社会一般にこのエントロピーの法則を当てはめたいと考えていて、それはそれは壮大なテーマとして取り組んでいました。結果として、ほとんどその壮大なテーマに賛同を得ることなく、政治家を引退することになったと思いますが、私は、父と興味深い議論をしたのを今思い出しています。

エントロピーの法則で考えてみる
1、人の手が入れば山は甦る
2、人のエネルギーは社会を維持する

1、人の手が入れば山は甦る
 秩序あるものは無秩序になっていく。それは、山づくりをしていても感じることです。山を放置していれば、必ずと言っていいほど山は荒れてきます。いつの間にか日が当たらなくなり、枝葉が散乱し、台風の風などで木が倒れていたりします。

 一方で、山の間伐や掃除をしていると山は甦るということを肌で感じます。木を伐採すると今まで入らなかった太陽の光が山に入ります。散乱した枝葉を整理することで、人間にとっても心地よい空間となります。年に一度の谷掃除も、谷にたまった枝葉や砂利を取り除くことで、水の流れが生まれます。秩序あるものは無秩序になっていきますが、そこに人のエネルギーを加えることで秩序を維持することができるだと思います。

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 例えば、80度のお湯の温度を維持するためにはそこにエネルギーをかけ続けなければいけないように、エネルギーをかけることで一定の形を維持することができるのだと思います。

 山づくりは、まさに、このエントロピーの法則が当てはまるわけです。というよりは、エントロピーの法則は様々なものに当てはめることができるということだと思います。

2、人のエネルギーは社会を維持する
 例えば、薪ストーブで部屋の温度を高めるエネルギーというのは燃えている火がエネルギーなのだとイメージしやすいと思います。他にもガスで火をつけ水をやかんで温めたり、電気ポットで温めたりすることにエネルギーが使われているということは、誰しも理解しやすいと思います。

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 一方で、人の具体的な行動もエネルギーだと言えます。山づくりであれば、間伐、草刈り、枝葉の整頓、谷掃除などの作業をすることは山にエネルギーを注いでいることになると思います。これは山だけではなく、社会でも同じことがいえると思います。社会を維持していくために人は様々なエネルギーを自分たちの社会に注いでいるはずです。

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 また、エネルギーは具体的な行動だけではなく、その背景にある精神的なものもエネルギーだと私は考えています。この精神的なエネルギーというのは、情熱、志、誠意、我慢とかいろいろ表現できると思いますが、なかなか目に見えるものではありません。しかし、これは、まぎれもないエネルギーで、人間の具体的行動と合わせて、この精神的なエネルギーは社会を維持するものとなっています。

 いずれにしても、人が社会に対してエネルギーをかけないと社会は無秩序化していく。今、無秩序でないと感じるのであれば、それは、人々が、あるいは、誰かが、社会にエネルギーを注いでいるからだと思います。エントロピーの法則はエネルギーをかけないと秩序が無秩序に移行するということですから、私たちは様々なエネルギーを使って社会を維持しているといえるのではないかと私は考えています。

 人のエネルギーが低下すれば、山も社会も荒れてくる。そういう意味で、山も社会も同じだと考えています。

山にも社会にもエネルギーを注ぐ!
 エネルギーをかけないと山も社会も荒れてきます。そういう意味では山も社会も同じです。特に、精神的なエネルギーは、目に見えないから把握しにくいものです。それでも、これはまぎれもないエネルギーです。人の精神的エネルギーが充実していると社会には秩序が保たれ、精神的エネルギーが低下すると、無秩序に移行するということではないでしょうか。人の思いや考えというのはとても大切なんだと思います。

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