見出し画像

国体という名の公共事業は見直しの時期ではないか

オリンピックパラリンピック開催の陰で、今年の国体が中止になっていたのを今頃知りました。

三重国体が中止になった上で延期もやめた理由

三重県の鈴木英敬知事は25日、スポーツ庁などと第76回国民体育大会(三重とこわか国体、9月25日~10月5日)の中止で合意した。数万人規模の選手らが県内を訪れる予定だったが、新型コロナウイルスの感染が急速に広がり開催を断念した。

8月、9月の感染状況を考えれば無理のない選択ですが、断腸の思いの決断だったろうと思います。

しかも、昨年の鹿児島国体のように延期(2023年開催予定)ではなく、完全に中止を発表しました。

 三重とこわか国体・三重とこわか大会については、8月26日の中止決定以降、市町、競技団体、関係者の皆さまなどからご意向を伺いながら、延期可否の検討を行ってまいりました。
 そのなかで、主に市町から、会場地の再選定を求める意見や、県の財政支援の拡充に向けた強い要望があったこと、県の財政面からも再度の開催には多額の経費が必要となり財政負担が大きいことなどいくつかの課題が明らかになりました。一方で競技団体からは地元開催での国体開催は競技普及、選手強化、地域振興の面で大きな効果があるといった延期を強く望む声をいただきました。
 こうした意見を踏まえ、県としても延期の可能性を求めて検討をすすめてまいりましたが、限られた期限の中では、会場地の再選定や、財政負担などの課題を確実に解決できるかどうかの判断が難しいことから、苦渋の決断ではあるものの延期申請を見送ることといたしましたのでお知らせします。

全文引用してしまいましたが、財政負担が大きいことが1番の要因としていることがわかります。

県が自治体の首長や競技団体、経済界の代表など出席者に説明したのは、少なくとも120億円、最大で182億円の追加経費が必要になることだった。県は2016年以降、県内市町への支援や運営経費など125億円を国体の準備に費やしており、さらに倍以上の負担がかかると試算した。これとは別に県は競技施設の整備に96億円を投じている。

県だけではなく自治体の負担も大きいので、返上する自治体もあるというのも、国体を歓迎しているばかりではない雰囲気が感じ取れます。

会場は県内市町の様々な施設を利用するが、中止や延期で返上を申し出る自治体があり、37競技のうち、11競技20会場を選びなおす必要が出てきた。

中止になって安堵している自治体も多いといいます。

開催費用だけでない負担とは

さらに、ここで述べられているような開催のための施設建設費や改修費、開催経費はもちろんなのですが、表には出ていない、開催県がその国体で優勝するために地域で負担している経費というのもあることは、意外に知られていません。

三重県でもスポーツ指導員や教員などとして県と市町が計80人、企業など88事業所が189人を雇用してきた。例えば百五銀行は柔道などで7人、三重交通グループホールディングスは3人の選手を抱える。企業内にチームがなくても選手を雇用して育成する。強化資金が県から企業に支払われるものの、こうした選手はあくまで「従業員」という立場が主で、給料も企業が負担する。

国体が、県のレベルでの意地の張り合いになっている一方で、それに限界を感じる自治体が出てきているのも事実でしょう。

画像1

県出身者を県の代表にするために、県内企業の所属にしたり、普段は県内で活動していない選手でも出身者であれば指定できたり、県別対抗戦としての国体は、色々と矛盾を抱えているのが実態です。

居住地である現住所や勤務地以外に、“ふるさと”登録のできる都道府県から国体に参加できる制度です。“ふるさと”登録のできる都道府県とは、卒業した小・中・高等学校いずれかの学校が所在する都道府県を指します。そのため、「ふるさと選手制度」を利用できるのは、成年種別に参加する選手のみとなります。

国体の意義も変わってきているのでは

今回、国体の開催中止・返上は、初めてだそうです。

しかし、これを機に、国体の見直しを行ってはどうかという声もある様です。

一見知事は10月11日の日本経済新聞の取材に対し、今後の国体のあり方について「(複数の県で一緒になって一つの大会を開催する)ブロック大会も一つのやり方」と述べた。そして「国体と県民との間に距離が出ている。税金を使うなら中止してもらったほうがいいという声もあった」と、県民の感情にも理解を示した。

都道府県別の限界が見えたのかもしれません。

終戦後に始まった国体は、都道府県が主催し、10年近くの準備期間をかけて行う、いわば、スポーツ界の公共事業として、県のアピール、インフラの整備、スポーツの底上げなど、いろいろな目的を持っていたものと思われます。

「国民体育大会」は世に産声をあげましたが、背景には、戦禍にあえぐ国民、とくに退廃した青少年に平和と民族愛の象徴としてのスポーツを浸透させようという大きな使命があったことも忘れてはなりません。

しかし、毎年、さまざまな競技の大会が開催される様になった中で、国体を開催する理由は、大きく変わりつつあるのではないでしょうか。その目的は既に果たしたと言えるかもしれません。

自治体に負担になる国体ならば、もういっそ、この機会に辞めてしまってはいかがでしょう?

国体は、スポーツをきっかけに開催地の食や文化、伝統に触れるという、スポーツツーリズムの側面も持ち合わせているんですね。

こうした、地域振興の側面、県内企業の売り上げ貢献など、スポーツ以外の側面が大きいことを主催団体も隠しません。

国体の実施にあたっては、老朽化した競技施設を改修したり、交通網を整備したりと、インフラ拡充がおこなわれることもあります。それ以上に、県をあげて選手団や観戦客をおもてなしすることで、レンタカー、飲食業、宿泊施設などの観光関連産業が賑わうことにもつながり、地域経済が活発に動くのです。

だからこそ毎年、各都道府県が持ち回りで開催してきたのでしょうが、もう別に開催しなくてもいいなあと思っている県も多いのではないでしょうか。

オリンピックの無観客開催を見て、冷めてしまった層もあるかも知れません。その後の有観客の大会を見て、やはり観客なしではスポーツ競技は成り立たないなと思った人たちも多いでしょう。

その中で、今年国体がなかったことに気が付かなかった私の様な人も多いのではないでしょうか。国体がなくても多くの大会が開催された競技があり、いくつもの競技がプロ化されていく中で試合が開催され、毎日スポーツのニュースで溢れています。その中に、国体の占める位置はあるのでしょうか?

もうずいぶん先まで決まっているのかも知れませんが、国体の見直しもしくは発展的解体はスポーツ庁の一つの役割ではないかと思います。



サポートの意味や意図がまだわかってない感じがありますが、サポートしていただくと、きっと、また次を頑張るだろうと思います。