保健所が感染症を担うのは結核が怖かったから〜〜(チコちゃん風)

新型コロナウイルス感染症の蔓延で保健所の役割が、私たちにもわかるようになってきました。

保健所の重要性が高まっている

保健所長さんの働きによって、自治体間にワクチンやコロナ対策で大きな差がついている実態も見えてきています。

一時期、保健所は役割を終えたような声もあって、どんどん統合され少なくなっていたことが、今回のコロナ対策の行き詰まりにつながっていると言う指摘もあります。

終戦直後の保健所法を1994年に改正、97年に全面施行された地域保健法を契機に保健所の数は往時の半数程度まで落ち込んでいます。仕事の多くが市町村に譲られ、数も減らすという内容でした。乳幼児の多死や結核を代表とする感染症から市民を守る地域公衆衛生の中心的役割を担ってきた保健所も衛生環境全体が改善され民間医療機関も発展するなど仕事が次第に少なくなって「役割を終えた」という声が出るほどヒマになったという時代背景があったようです。

しかし、保健所は公衆衛生という点で実に重要な役割を果たしていることが、コロナ禍の中で私たちにもわかるようになってきています。

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保健所というと、私などは、飲食店の開店時の営業許可で必要くらいの意識しかありませんでしたが、実に多岐にわたる仕事をしていることが上記の図でわかります。

保健所と感染症「2類」

そして、その中心となる役割が感染症対策、特に結核と、エイズ、性病など、感染症法の分類でいう「2類と5類」への対応であることがわかります。もちろんその他の感染症においても感染症発生情報の把握は保健所の重要な仕事です。

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でも、保健所は、その始まりからして、2類への対応が中心とも言えます。だから、保健所のことを考えても、新型コロナウイルス感染症は指定感染症から「2類」に指定してはどうかと思うのです。

色々な意見がありますが、5類では自宅療養者のフォローは今以上に行き届かなくなりますし、季節性インフルエンザと同等の病気と見るには重症化に至る流れや死亡率が全く違う上、特効薬もない状況ですから、医療従事者の声は理解できても、うなづけるものではありません。

現状の措置で感じている苦労や見直しの必要性について、m3.com意識調査で医療従事者に尋ねたところ、7割弱の医師が「2類相当措置の見直しは必要」と考えていることが分かった。

これはちょうど一年前(2020年9月8日)の記事なのですが、この一年、この論議は繰り返されつつも変化はありませんでした。

でも5類にしても保健所が関わることは多分変わらないでしょう。エイズや性病での保健所の対応が生かされるのではないかと類推します。

でも、保健所の真骨頂は、やはり結核がある2類だと思うんです。

保健所と結核

結核について、最近では知らない人も増えているかもしれません。また、明治時代の小説の中だけのことだと思っているかもしれません。

実は、今でも結核は十分に恐ろしい病気ですし、罹患する人も多いことを忘れてはならないと思います。

欧米の先進国は結核罹患率が人口10万対10以下の低まん延国になっているのに対して、日本は2017年に人口10万人あたり13.3と「中まん延国」であり、16,789人の患者が報告されています。一般の人のみらなず医療従事者も結核への関心が低下しているために発見が遅れる場合があり、集団感染の原因になっています。大半を占める高齢患者は典型的な症状がないために診断が遅れることがあり、重篤な合併症を持っているために、しばしば予後不良になります。近年は若年者を中心に外国出生の患者が増加しています。結核は今も日本の最大級の感染症です。

そして、結核こそ、保健所が公衆衛生を担う機関として全国に配置されたきっかけとも言える病なのです。

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https://jata.or.jp/rit/rj/394-18.pdf

日本の公衆衛生は、明治期から昭和まで主に結核対策だったと言っても過言ではないほど、結核は恐ろしい病気でした。今から100年前のスペイン風邪で日本でも約40万人が亡くなっていますが、この頃、結核での死者は毎年10万人を超えていました。一過性の感染症よりも蔓延する結核をいかに食い止めるかが保健所を生み、保健所が一貫して戦ってきたのが結核だと言えるのです。

そして、その対策を応用して、今のコロナ対策があります。

結核は幸いにして、今やほとんど見られない病気のように感じられますが、結核との戦いで培った検査や病院との連携などの仕組みがあったからこそ、感染症対策が十分にできるのだと言えるそうです。

しかし、コロナ対策の陰で結核の把握が遅れているそうです。

結核と診断された人がいると、保健所は家庭や職場、学校などで濃厚接触者を調査。検査してもらって拡大を防ぐ。新型コロナにおける接触者追跡、クラスター対策と全く同じ方法だ。
 ただ、保健所による家族以外の接触者追跡で見つかった結核患者は、前年比61%減。コロナの接触者追跡に忙殺された様子がうかがえる。

保健所の役割を評価し、今後も重要であることを社会的に認識するためにも、新型コロナを5類ではなく2類に固定し、結核同様の社会施策をとっていくことが求められるのではないかと思います。


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