見出し画像

「バラマキ」政策の問題は「ばら撒けないこと」なのではないか

選挙も終わり、公約を実行に移していただく段階になったわけですが、すでに揉めております。

公明党の「未来応援給付」を自民党が受けるかどうかという話です。

未来応援給付の原資は余っているコロナ対策費

「未来応援給付」は、18歳以下の子供一人当たり10万円で、約2000万人に配布するというものです。それだけで約2兆円が必要ですが、コロナ対策費は余っているので、原資の問題は無さそうです。

コロナ対策に使われたことが明確な770事業を分析した。計上された予算は、予備費や補正を含めて65・4兆円に上り、20年度末までに65%の42・5兆円が執行された。執行額は、震災の復興予算10年分の35兆円を上回る。未執行額は22・8兆円で、95%が翌年度に繰り越された。5%の1兆円は使い残しの「不用額」だった。

このとりあえず盛っておけと言わんばかりの予算もかなり問題ですが、その執行も色々と問題があったわけで、これからもコロナ対策費に「バラマキ」批判があるのも無理のない話です。

画像1

やりかけて途中で挫折した「GOTO」とかもありますが、改善要求が出たのはCOCOAだけだったそうです。

ココアの不具合を巡る対応では、開発したシステムのテスト体制などの管理などが不適切として厚労省に改善を求めた。

始まった時には、ずいぶんもてはやされたんですけどね。

バラマキ批判は財務省から

選挙前に各政党から出されたコロナ対策は、どれも「バラマキ」だと批判されていました。

まるで予言通りの展開になっている。「バラマキ合戦はこれまで往々にして選挙のたびに繰り広げられてきました」-。財務省の矢野康治事務次官が8日発売の月刊誌「文芸春秋」への寄稿で発した懸念だ。各党の公約が出そろう前に書かれたもので矢野氏は自民党総裁選の論戦や野党側の主張を念頭にこう記した。

そして、この矢野事務次官の記事が、さらに色々な識者の批判や検討を呼びました。

その内容をみてみると、現役の官僚が政策に対して意見することにいかに覚悟が必要なことを繰り返し述べることに紙幅の多くが費やされており、財政に関する記述に目新しいものはない。同記事を賞賛している人は本当に本文を読んだのだろうか。筆者は予告編だけで本編のない映画のような記事に感じるのだが。

ここで、そのバラマキ批判そのものへの批評はしませんが、「分配」と各政党がいう政策は、結局「バラマキ」と捉えられているのだという霞ヶ関の視点が明確になったのは、わかりやすかったと思います。

去年負けた岸田さん、今年はどうする

さて、今回の給付金は18歳以下だそうですが、去年も岸田さんと公明党は給付金をめぐって争い、結局、公明党が勝ったことは記憶に新しいところです。

昨年4月、緊急経済対策として生活困窮世帯に1世帯当たり30万円を給付する案を政調会長だった首相がまとめ、財源の裏付けとなる令和2年度補正予算案を閣議決定した。当時、この方針の決定にあたり「大企業や年金生活者などコロナの打撃がない人に配るのは不公平」と訴えた財務省の意見が反映されたといわれている。
 ところが、所得制限に伴い受給手続きが複雑になるとして公明から再考を迫られた首相官邸が土壇場で決定を撤回。全国民への一律10万円給付を決め、補正予算案の閣議決定をやり直す異例の事態をたどった。矢面に立った首相の調整力が疑問視され、「ポスト安倍」が遠のいた。

振り返ると、岸田対公明党は、財務省対バラマキでもあったわけですね。

こんなこともあってポスト安倍が菅になり、1年半して岸田に戻ってきて、またしても、公明党が立ちはだかる展開に、ネットでは「連立やめれば」という声も出ています。

茂木幹事長は、自民党独自のバラマキ政策との合体で乗り切る腹づもりのようですが、岸田総理は内心歯噛みしているんじゃないでしょうか。

本当に18歳以下に配れるのか

どういう形で実現するにしろ、実は、このバラマキ政策の大きな問題は、どう18歳以下に配るのかではないでしょうか。

加えて、18歳以下の子どもに一律給付といった場合、その給付は誰の所得と見なすのか。この給付金を課税対象とするなら、そうした問題も生じる。
結局、このような仕組みの繁雑さから、給付金を課税対象にしないことにすると、一律の給付は高所得者もそのまま受け取ってしまうことになり、所得格差を助長する。

所得制限をどういう形で設けるのか、給付金は課税対象とするのか、その場合、年末調整はどうなるのか、確定申告していないサラリーマン家庭はどうなるのか、考えることは山ほどあります。

新しい仕組みを立てれば、それに伴って手続きも必要で、担当する部署も必要になります。すでにある仕組みにオンするわけにはいかないんでしょうか?

子どもへの追加給付ということなら、児童手当の臨時増額をすれば目的は十分に達成できる。所得制限のある児童手当の臨時増額ならば、追加の手続きが不要なのに、わざわざ一律給付にするために追加的な受給申請が必要というのは、何とも皮肉なことである。

年内に現金5万円、年明けに5万円のクーポンという声も聞こえてきますが、それ誰がやるんでしょう?

去年ひとり10万円配って、散々「中抜き」とか言われましたけど、また、あの組織に頼むんじゃないでしょうね?

去年の10万円はどうなった

実は、持続化給付金事業についてどういうお金の使われ方をしたか、8月に財務省が総括しています。

こういうの、マスコミで取り上げたの見ませんでしけど、フォローアップはすべきじゃないですかね。

jizokuka20210812_ページ_02

サービスデザイン推進協議会という名前すら懐かしい感じがしますが、契約金額よりも少ない669億円を受け取ったようです。

それにしても9次下請けって、初めてみました。

jizokuka20210812_ページ_07

これ見ているだけでも面白いんですが、それが主目的ではなく、今回言いたいのは、未来応援給付でも、同様の組織が必要で、それだけの費用がかかるということなのです。

4兆円配るのに669億円かかったわけですが、2兆円配るのに今度はいくらかかるんでしょうか?

それは経済効果なんですかね?

すでにある仕組みは使えないのか

18歳以下の子供たちを支援するという「目的」は素晴らしいものだと思います。でも、子供の口座に直接振り込むわけじゃないでしょうし、結局、それは「子供のいる家庭」を支援するものになると考えられます。

そこで考えたいのは、貧困家庭の子供にお金をあげようとすると親に取られるということです。それが子供に使われるなら良いのですが、そういう家庭で起こりがちな事として、親に使われるだけという問題があります。

ならば、子供を支援する人たちに配れば良いのではないかという考えが浮かびます。

例えば、似たような名前の施策がすでにあるわけです。

画像4

内閣府が地方自治体に出しているお金です。これを補助率2分の1などと言わず、全額補助にして大規模にできないものでしょうか。

画像5

こうした資金がきちんと活用されていないために、コロナ対策費が余っているんじゃないでしょうか。

なぜ、新しいことをやりたがるのでしょう。

そこには、日本の予算の闇が横たわっているようにも思います。すでにある項目よりも新設を優遇し、先に作った仕組みを振り返らないという点です。

さらに、自民党と公明党の内部事情もあるのでしょう。

自民党は連立維持のために、公明党は婦人部のために、バラまきをやってきたわけです。こうした婦人部からの要求が常態化し、いくつかの給付が行われてきました。今回の“18歳以下に一律10万円”もその延長上にある話ですよ。

そんなことのために2兆円配るのかとか、さらに、そのほかに数百億円を使うのかとか、本当に子供に届くのかとか、問題を考えるとキリがない政策が実行されようとしているわけです。

そしてきっと、経済対策にも貧困対策にも、さしてならないんじゃないかという気がします。

その時、誰も責任を取らず「一定の成果があった」というんでしょうね。

サポートの意味や意図がまだわかってない感じがありますが、サポートしていただくと、きっと、また次を頑張るだろうと思います。