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幻の科学情報誌『ILLUME』とはなんだったのか:第1回イリュームという名前に込められた意味

連載スタートしてみます。

1号1号に思い出があるので、書くと長くなりそうだなあ。しかも、10年以上前の話で、最初は30年前になるわけですからねえ。読んで面白くするのは大変だなあ。できるかなあ。

ILLUME=イリュームに込められた想いとは

まず、この名前のことから始めたいと思います。

人間もそうですが、名前には作った人の意図と想いが込められているものだからです。こうであって欲しい(意図)とか、こうなって欲しい(想い)という何かがあって、それが達成されたかどうかはまあ、後世に振り返るということですね。

特に、この本は、企業が出版していたもの(この辺の背景の説明は次回に)なので、マーケティング的な意図もあるでしょうし、この本を立案した方がマーケティングを本業とするプロデューサーだったので(その説明もおいおい)、ネーミングには並々ならぬ熱意が込められていました。

ただ、ILLUMEという綴りから「イリューム」と読むのは難しく、担当者以外からは「いるめ」とか呼ばれていたこともありました。外国の方でも、初見で正確に発音する人は少なかったかもしれません。

今、この綴りで検索にかけると、何が出てくるでしょう。

ILLUMEを検索すると

キャンドルブランドがありました。

イリューム[ILLUME]は、1993年に女優のリネット・リードの『忙しいこの世の中で人々に、ふと何か良い香り(例えば、バラの香りとか)を思い出してもらえるような素敵な商品』を提供したいという想いから、ロサンゼルス中心の小さなブティックで始まったキャンドルブランドです。

モデル事務所のブランド

化粧品のブランド

いずれも「綺麗なもの」「輝くもの」というイメージでしょうか。

より明るくする、またはより輝かせる (make lighter or brighter)

本誌もまた、「光り輝かせるもの」という意味をもって名付けられました。

250案から選ばれた名前

この名前に辿り着くまでのプロセスとしては、まず企画段階で“国際的に通用する英語もしくはラテン語”を意図して、翻訳会社に依頼し、外国人スタッフによって250案が選出されました。

それを20案に絞って、本誌が誕生するきっかけを作ったコンペティションに企画案の中身として提出され、コンペで企画が選出された後に招聘された編集顧問による顧問会議で、決定されました。

本誌が創刊された経緯としては、このコンペティションの話をしなければならないのですが、それは次回ということにします。

それよりも、なぜ、この『ILLUME』が選出されたのか。

私は、その会議に出席していないので、聞いた話でしかないのですが(まあ、ある意味全て聞いた話ですが)、それは発行した企業のメイン事業を的確に捉えた上で、よりハイレベルな価値を与え、さらに、その背景に知的なイメージを与えるからだそうです。

その企業は、東京電力と言います。

光り輝くのは誰か

電気による灯りが与える街の輝き、また灯りの元で学ぶ知性による人間の輝き、人の叡智としての科学が放つ輝き、そうしたさまざまな輝きを集めた冊子でありたい。そして、本誌を読む読者たちを輝かせたい。

そういう意図が、イルミネーションなどの語源となる古語に由来する『ILLUME』という名前に込められています。

こうした意図は、創刊後に編集顧問の一人である山崎正和先生によってまとめられた本誌のレーゾンデートル(存在意義)を表す「イリュームの言葉」に凝縮されています。

ILLUMEのことば

ユダヤ神話によれば、
神は天地創造にあたって「光あれ」と呼びかけた。
ギリシア神話によれば、
プロメテウスは天井の火を盗んで人間に与え、そのための劫罰に耐えた。
太古以来、人間は光によって文明を興し、文明によって光を盛んにした。
天体の光を見て暦を編み大航海の進路を知り、
夜の灯火のもとで科学と哲学と詩の想をねった。
そこで得られた知恵は地上の光を大きくし、
やがて電気の輝きと原子力の火を生んだ。
今、都市は夜を知らず、家々の窓は豊かに明るい。
しかし、われわれは人類最初の火がむしろ人間の内面に灯り、
知恵と想像力の光となって輝いたことを忘れない。
技術の時代にあって、それを支える科学を豊かにするために、
さらに科学を支える創造的な心を強めるために、
われわれは、
知の先端と広い社会をつなぐ一本の道を、
天上の光を盗んで照明(illume)しつづけたいと考える。

この言葉だけで、ご飯が3杯食べられますなあ(誰がじゃ)。

イリュームという名前に付された意図がこの中に込められていることを読み取っていただけると幸いです。

次回は、なぜ、東電だったのか、あたりを書いてみたいと思います。

サポートの意味や意図がまだわかってない感じがありますが、サポートしていただくと、きっと、また次を頑張るだろうと思います。