400文字の……(21)夢から記憶へ

 夢の中で、リビングの床に鉢植えからこぼれた土をきれいにしようとしていた。すごくイライラしていた。その前に米をたこうとして、もち麦をこぼしたことが夢に反映されたのだろう。とても散文的な夢だ。
 夢のことを考えていて、幼稚園の時、自分の椅子を雑巾で磨くという作業があったことを思い出した。ふいに。僕は水飲み場で濡らしたぞうきんを絞り忘れてしまった。そこで、園庭に置かれた椅子のところにいく前、まわりにぞうきんをぬらそうとしている同級生が並んでいる中で、絞ってしまった。水が飛び散って、周りからみんなが、わっととびのいた。
  僕は自分が「やってしまったこと」を知った。自分を中心にみんなが距離をとる様子が、俯瞰で撮影したようなビジュアルで記憶の中に残っている。自分は、どんくさくて間が悪く、気をつけないとそういう失敗をする。それが自分の体験の中に刻み込まれた。幼稚園児の小さな脳味噌に。散文的な夢はたぶんそこに繋がっている。

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