「劇場版鋼の錬金術師 シャンバラを征く者」


(前口上)今は亡き某誌に掲載した「劇場版鋼の錬金術師 シャンバラを征く者」に関する評論です。「これは事件だ」と思ったので、「熱に浮かされたように書くべきだろう」と思い、こんな文章のスタイルになっております。ご照覧いただければ。そして「劇場版鋼の錬金術師 シャンバラを征く者」のBD発売になるそうです(http://www.hagaren.jp/1st/bluray_disc_box/)。未見の方はこれを機会にぜひどうぞ。


過剰さからもたらされる「これはアニメだ」というつぶやき 「劇場版鋼の錬金術師 シャンバラを征く者」

 「アニメ」を見ていると、「ああ、これはアニメだ」としかいいようのない感情に襲われることがあって、それはもちろん決して「安っぽさ」とか「商業主義」を代表するネガティブな意味合いではなく、かといって目的と手段が一体となった幸福な表現である「アニメーション」と同じ意味ではありえず、あえていうならば、手元にただ一つあったグラスにそれが唯一の誠実さとばかりに水をこぼれんばかりに注ぎ込んでしまったような過剰さであって、それこそが「ああ、これがアニメだ」と胸を突かれる最大の理由だ。


 もちろんこれはあくまで感情であって学問的定義などではありえないので普遍性などまったく気にせずに書き記しているのだが、それでも90年代に入って「ああ、これがアニメだ」と息を漏らすような作品は減ってしまったのは容赦のない事実であり、それが傑作・佳作の不在を意味しないことに、ジャンルとしてのアニメの困難があるのは間違いのないことでもある。なぜならそれは「アニメというメディアの青春が終わってしまったこと」を示しているからだ。

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