💗Short：アグレッシブ男に煽られて

結婚して６年。夫婦は相談して、子供は１人。もうすぐ子供は小学生。小学校の学期が始まる前に、家族で旅行することになった。観光地を巡り、宿屋に着いた。彼女がバスで眠っている間も、夫と子供はスマホ・ゲームで盛り上がっていた。

食事を終えると、疲れが出たのか、夫と子供は瞬く間に床に入ってしまった。（うん、もう・・・）夫婦の会話を期待していたのに。夫はいったん寝ると、起きてはこない。（うん、もう・・・）梯子を外された感が否めない。

彼女はアルコールが飲める。酔いたくもなってきた。旅館の中にスタンドバーがあるという。

スタンドバーにはカップル客がいた。どこか華やぎ、いちゃつきあっているようだ。同じ空間で過ごしているのに。（あぁ、私も・・・）思うだけで、どこかうらやましい。

勢いよく男が一人入ってきた。「よろしくな」。男は彼女の右隣の椅子に腰かけた。カップルの座席とは離れているが、男の勢いに恐れたのか、カップルはそそくさと出て行った。

「あのー、申し訳ありません」
マスターが声かけてきた。カップルが出ていくのを待っていたのか。「用事ができているので、お二人分を用意しますので、お部屋で楽しんでいただけませんか」
「お盆にお酒とグラスを用意してお持ちします」
マスターは二人が知り合い同士だと勘違いしていた。
「あのー・・・」
彼女は否定しょうとしたが、
「俺は来たばかりだぞ。一人で飲めというのか」
彼女もほとんど飲んでいない。会計もできず、狼狽える。
「いいから、いいから、俺に任せろ」
押されるように、強く促される。彼女には男の感触が心地よかったのか、促されるまま、男の部屋に向かう。
「さあさ、さあさ」
男は彼女を強く促し、押すように彼女を部屋に案内した。男の体温と体臭が彼女の官能をくすぐっていた。

部屋に入ると、すぐマスターがお盆を持ってきた。
「これで、失礼します。明日、お伺いします」

マスターが出ていくと、男は手慣れた手つきで酒を用意する。男に乾杯を促される。（この人って・・・）男は饒舌だった。どこかアグレッシブだ。好きなように生きてきた感じがもろに出ている。

「イヤー、こんな美人と飲めるとは」「結婚しているの」「今日は何した」矢継ぎ早に質問する。彼女は言葉を濁すしかない。

男はたくましい身体をしていた。土木事業の監督をしているという。近くに工事現場があり、視察に来たという。（夫とは違う人種だな）彼女は男の饒舌に巻き込まれていた。いつの間にか飲んでもいた。

男はポケットから錠剤を取り出した。「飲み助の常備品、肝臓の薬だ」「お前も飲め」錠剤を手渡され、彼女も飲んだ。この錠剤が曲者だったが、彼女は悪酔いを避けようとしていた。

用意されていた酒がなくなろうとしていた。「仕方ないなぁ」男はビールを買いに出かけた。彼女は待つ間、ちびりちびりと飲んでいたが、下半身が疼いてきていた。（どうしたのかしら）しかし、よく下半身が疼くことが多かった。夫はなかなか応じてくれない。いつもはやり過ごしていた。時には自分で慰めていた。

男がビール缶を持ち込んで、彼女の様子の変化を敏感に察知した。（薬が効いてきたようだな）男はほくそ笑んでいた。男は自分一人で飲んでいる。男は彼女の艶が増しているのに気が付いていた。

「旦那とはうまくいっているのか」出し抜けに聞いてきた。
「・・・」彼女は言葉を発することもできず、苦笑いしている。
「一番、いい頃だろう」
彼女は思わず、反応した。「そんな・・・」何を言われているかが分かり、言葉を飲み込んだ。彼女は頭の中で思い起こしていた、夫は淡泊。

「確かめてやろうか」男に言われて驚き、彼女は思わず立ち上がった。酔っていたのか、薬が効いていたのか、彼女はよろよろとよろけた。男はよろけた彼女の身体を抱きかかえるように支えた。彼女に男のたくましい感触が伝わり、男には彼女の柔らかい感触が伝わる。

男はそのまま彼女の身体を包むように支える。男の体臭がさらに彼女を包む。男の身体の感触と体臭が彼女の官能をくすぐる。

男は力が強くても乱暴ではない。「少し横になるとよい」男は彼女を布団の上におろした。男は傍で見守る。男には魂胆があった。（女はもう疼いているな）（・・・）

男は布団の上に横たわる女の姿をめでるように眺めている。

旅館浴衣が弛んでいる。彼女の身体が勝手に蠢き始めていた。男は彼女の蠢きを見守っている。彼女が蠢けば、旅館浴衣がさらに弛んでくる。（いいねぇ）男は呟くように見守っている。

彼女は疼きが高まっている。疼きは彼女の姿態を艶めかしく蠢かしていく。（あぁ、私・・・どうしたのかしら）
起き上がろうとすると、男は軽く肩を下に押す。「気をつけな、立つと転ぶぞ」彼女は起き上がろうと試みるが、男が軽く肩を押したままだ。どういうわけか、彼女には男の手の力に逆らって起き上がることはできない。

「お願い・・・」起こしてというつもりだったが、男は「分かっている、分かってるよ」「寝てたほうが良い」
彼女の疼きが強くなってきている。
「あー、私・・・どうなっているの」
もう彼女は身体が自然に蠢くのを止めることができない。身体の芯から疼きが押し寄せてきている。

「もういいだろう」

男は待っていたかのように彼女の旅館浴衣の紐をするすると抜いてしまった。
「ぁ・・ﾝ・・・」
起き上がろうとした。男が旅館浴衣の裾を手で押さえていた。反動で、彼女の肩に掛かっていた浴衣がするりとぬけ、旅館浴衣が崩れてはだける。

「大丈夫、大丈夫、寝てたほうがいい」

男はなおも彼女を寝かそうとする。彼女は起きようと試みるが、身体の疼きが強くなっている。

（いいぞ、いいぞ）

男はほくそ笑んでいる。目の前に想像以上に好きな女が・・・。男は用心深かった。（下手に抵抗されてもな・・・）女が起き上がろうとする姿が艶めかしかった。女の藻掻くさまが煽情的だった。

女は浴衣がわずかにしか覆っていないことに気が付いているのか、気が付いていないのか、ただ襲ってくる疼きの波に襲われている。男はそれに応えるように愛撫を開始した。

＊

＊

彼女は起き上がると、隣の布団に男が仰向けに寝ている。あんな繊細な愛撫がどこに隠れているのだろう。一方で豪胆に貫く快感があり、感触が残っている。彼女は旅館浴衣を乱れ少なく着こなし、部屋に戻っていく。まだ夫と子供は夢の中にいるようだ。

彼女は残っている火照りを鎮める様に横たわる。再び、眠気が襲ってくる。身体には男の感触が燻っている。

彼女は子供の声に起こされた。夫は呆れたように、「よく寝るなぁ」
彼女は夫を冷めた目で見つめる。

やがて、彼女には男からメッセージが届く。

－－－おわり