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[漫才] つぶつぶ(当て書き:夢路いとし・喜味こいし)

#オチの直前まで無料

#オチを予想してお楽しみください (7文字)

「数の子のつぶつぶの数を一緒に数えよう」といとしさんに誘われて,断りきれず数える羽目になるこいしさんとのやりとりをお楽しみください
オチの分類地口落ち/拍子落ち

夢路いとし:僕ね,前々から思ってることがありまして…

喜味こいし:はいはい

い:そろそろ,数の子の「つぶつぶ」の数を数えたほうがええと思うんですわ

こ:何?数の子の数?

い:数の子の「つぶつぶ」の数をそろそろ数えたほうがええ時期に来とる

こ:そんな「時期」あるか?

い:もうええかげん数えな。手遅れになりまっせ

こ:何が「手遅れ」になんねん。そもそもなんの話や。「数の子のあの『つぶつぶ』を一つぶ一つぶ数える」言うとんのか

い:あたりまえや

こ:何が「あたりまえや」やねん

い:二人で一緒に数えたらすぐやないか

こ:なんで私も数えなあかんねん

い:君なぁ,「数の子の『つぶつぶ』の数をそろそろ数えたほうがいい時期に来とる」という自覚はないんか

こ:あるわけないやろ。そんな訳の分からん自覚

い:分からんか?そろそろそういう時期やということが

こ:さっきから君が言うとる「そろそろ」というのどういうことや

い:「そろそろ」っちゅうのは,「ある時期ある状態になりつつあるさま」のことやないか

こ:それは「そろそろ」という言葉の意味や。そやなしに,「数の子の『つぶつぶ』の数をそろそろ数えなあかんとはどういう意味や」と聞いとんのや

い:これね,ちょっとまじめな話になるんやけども…

こ:まじめな話でもええわいな。ちゃんと説明してもらわな意味が分からん

い:僕はこれまで20年間,「数の子というのはあの塊で一つなんや」と自分に言い聞かせるようにして生きてきたんやけどね,でももう「これ以上自分を誤摩化して生きていくのは無理や。もう自分に嘘はつけん。これからはちゃんと数の子の『つぶつぶ』と向き合って生きていこう」,そう思うたんですわ

こ:……。君は何を言うとんのや

い:ちゃんと聞いてたんか君は。人がまじめな話しとんのに

こ:あのな,聞けば聞くほど分からなくなんねん,君の話は

い:そんな難しい話しとらんやろ

こ:「難しい話」はしてないな。訳の分からん話をしとる

い:失礼やないか君は。この話のどこが「訳分からん」ねん

こ:「これからはちゃんと数の子の『つぶつぶ』と向き合って生きていこうと思う」言われてもやな,意味分からんやろ

い:だから…,数の子というのは,「あの『塊で一つ』やなくて,あの『つぶつぶ一つぶ一つぶ』が数の子や」言うてんねん

こ:分かっとるわ,そんなもん

い:分かっとんならその事実を直視せな

こ:「直視」言われてもやな。そもそもがどうでもええ話やないか

い:君はなんでそやって数の子を軽視するような発言すんねん

こ:別に「軽視」はしてないやろ。「数の子の『つぶつぶ』の数を数えても意味ないやろ」言うてんねん

い:そやってすぐ物事になんでもかんでも意味を求めるのが君の悪い癖や。子供の頃からや。もっと義理人情を大切にせな

こ:数の子の「つぶつぶ」の数数えるのに「義理人情」が関係あるか

い:「そこに『つぶつぶ』があればそれを数える」。それが「人情」というもんやないか

こ:君はさっきから何を言うとんねん。それを言うんやったら「タラコの『つぶつぶ』の数かて数えなあかん」ということになるやろ

い:タラコを数えるやつがあるか

こ:なんでや。どっちも同じ「つぶつぶ」やないか。「人情」言うんやったら,「つぶつぶ」を差別したらあかんやろ

い:君ねぇ,タラコは誰の子か知っとるか?

こ:「誰の子」て,「人間の子」みたいに言うな。タラコは当然タラの子やないか

い:数の子は「数」の子やで

こ:ニシンの子や

い:それやがな

こ:「それやがな」てなんや

い:つまり数の子は,ニシンの子であるにもかかわらず,わざわざ「数」の子と名乗っとるわけや

こ:別に数の子本人が本人の意思で「数の子」と名乗っとるわけやないやろ

い:ニシンの子なんやから,ほんまは「ニシンの子」と名乗りたいはずや。それやのにわざわざ「数」の子と名乗っとる

こ:数の子とニシンの間に何があったんや

い:君にはそんな数の子の複雑な乙女心が分からんか?

こ:分かるか。そもそもなんで数の子が「乙女」やねん

い:とにかく僕が言いたいのは,「数の子がわざわざ『数』の子と名乗っているにもかかわらず,その数も数えんと数の子を食べるなんて数の子に対して失礼や」ということや

こ:数の子はそないなこと思うてないやろ

い:君はなんでそう「つぶつぶ」に対して無頓着やねん。もっと「つぶつぶ問題」に真摯に向き合わな

こ:「つぶつぶ問題」て,数の子以外にもあるんか,似たような事例が

い:つぶつぶオレンジの「つぶつぶ」もそやないか

こ:オレンジジュースの中に入っとるあのオレンジの「つぶつぶ」か

い:あれもそろそろ数える時期に来とる

こ:君がさっきから言うとる「そろそろ」という意味がよう分からんけどもやな,それやったらもう数えたらええわいな。つぶつぶオレンジの「つぶつぶ」の数も数えたらええし,ついでにコーンポタージュのコーンの「つぶつぶ」の数も数えたらええ

い:コーンは数えんでええねん

こ:あのな,どう違うんや。数えたほうがええ「つぶつぶ」と,数えんでもええ「つぶつぶ」は

い:分からんやっちゃなぁ…

こ:分かるか,そんなもん

い:だからさっきも言うたように,数の子は「数」の子という名前や。つぶつぶオレンジも名前からして「つぶつぶ」が強調されとるやろ?ところがや,「コーンポタージュ」という名前は,「つぶ」とか「数」を強調した名前やない

こ:……だからなんや?

い:だから,つぶつぶオレンジのつぶたちは「僕たちの数を数えてくれ!」と思うとるけど,コーンポタージュのコーンたちは「僕たちの数を数えてくれ!」とは思うてないということやないか

こ:前々から君は「訳の分からんことを言う人や」と思うてたけども,今日の話はいよいよ訳分からんな

い:「前々から」て失礼やな。人がこれだけ力説しとんのに,どこが分からんのや

こ:全体的に分からんけどもやな,特に分からんのが「つぶたちが『数えてくれ』と思うとる」というとこや

い:だからそれは,名前を見れば一目瞭然や。「数の子」も「つぶつぶオレンジ」もつぶや数を強調した名前やないか

こ:そこまでならかろうじて分からんでもない

い:そこまで分かればあとは簡単や。つぶや数を強調した名前なんやから,つぶたちは当然「僕たちの数を数えてくれ」と思うとるわけや

こ:「当然」言われてもやな,その〜「つぶたちが『僕たちの数を数えてくれ』と思うとる」っちゅうのが「意味分からん」言うてんねん

い:分かるやろ普通は。ここまで丁寧に説明したら

こ:これは説明の丁寧さの問題やないわ。そのつぶたちがなんで「僕たちの数を数えてくれ」と思うとるのかが分からん

い:これやから感情移入できん人は困るんですわ

こ:誰に「感情移入」したらええねん

い:「つぶつぶ」に対してに決まっとるやないか

こ:人やなしに「つぶつぶ」にか

い:君,「つぶつぶ」の気持ち考えたことないんか

こ:あるかそんなもん。そもそも「つぶつぶ」には感情なんてないやろ

い:君は「つぶつぶ」を人とも思わん冷徹なやっちゃな

こ:「『つぶつぶ』を人とも思わん」て,「つぶつぶ」は人ちゃうやろ

い:自分が「つぶつぶ」になったつもりで,よ〜く想像したら分かるやろ

こ:どんな気持ちや

い:「飲む前によ~く振ってほしいなぁ〜」という気持ちや

こ:それは,つぶつぶオレンジの気持ちのことを言うとんのか

い:そや。よ〜く振らないで飲むと,つぶつぶオレンジの「つぶつぶ」が最後にたくさん缶の底に残るやろ。あれは,つぶつぶオレンジの人生の中で一番悲しい出来事やないか

こ:「つぶつぶオレンジの人生」ってなんや。それやったらコーンポタージュのコーンたちだって「飲む前によ~く振ってほしいなぁ〜」と思うとるやろ

い:コーンはそんなこと思うてない

こ:なんで分かんねん。コーンポタージュのコーンもよく振らないで飲むと缶の底に残るやないか。あれは,コーンポタージュの人生の中で一番悲しい出来事ちゃうんか

い:君はほんまに「つぶつぶ」の気持ちが分からん人やな。デリカシーがない

こ:「デリカシー」関係ないやろ

い:コーンは,「僕たちのことはそっとしておいてほしい」思うてねん

こ:それはコーンの気持ちやなし,君の勝手な想像やろ

い:それくらいコーンの性格考えたら分かるやろ

こ:「コーンの性格」てなんや

い:あの沈殿してるかんじを見れば分かるやないか,性格が

こ:コーンは確かにいつも缶の底で沈殿しとるけどもやな,性格とか関係ないやろ

い:あの沈み方から察するに,「そっとしておいてほしい」,そう思うとる

こ:それやったらつぶつぶオレンジの「つぶつぶ」かて沈殿しとるやろ。「そっとしておいてほしい」思うとるかもしれないやないか

い:だから,つぶつぶオレンジは「つぶつぶオレンジ」と名乗ることによって自分たちの「つぶつぶ」をアピールしとるんやないか。自ら「つぶつぶ」をアピールしておきながら「そっとしておいてほしい」思うとるなんて,君はそこまで「天邪鬼やつや」言うんか。あの陽気なつぶつぶオレンジをつかまえて

こ:あのな,もうやめよ。話せば話すほどドツボにはまるわこの話は。そこまで言うやったら数えたらええわいな。君の気がすむまで「つぶつぶ」の数を数えたらええ

い:君に言われんでも数えますよ僕は

こ:数えろ,数えろ

い:問題は君や

こ:私?

い:ちゃんと数える気あるんか?

こ:だからないわ。さっきから「ない」言うてるやろ。なんで私が意味も分からず「つぶつぶ」の数を数えにゃならんねん

い:数の子の「つぶつぶ」の数を数えようとしている健気な兄の姿を見て,放っておけるのか君は

こ:何が「健気」や

い:心配やないんか君は

こ:「頭おかしくなったんやないか」っちゅう心配はあるな

い:「つぶつぶつぶつぶ」文句言わんと…

こ:「ぶつぶつ」や。「つぶつぶ」文句言うなんてことあるか

い:ほんなら,「ぶつぶつ」と「つぶつぶ」やったらどっち数えたい?

こ:なんやその二択は

い:どちらか言うたら?

こ:「ぶつぶつ」はなんか嫌なから,数えるんなら「つぶつぶ」やろな

い:それやったら,数の子の「つぶつぶ」から一緒に数えよ

こ:もうええわ。一緒に数えたる

い:君が早々にそう言うてくれたら,こないだらだらとつぶつぶの説明せんと,サクサクつぶつぶの数数えて,今頃ゴクゴクとつぶつぶオレンジ飲んで,ワイワイと悠々楽しくやれてたんやで?

こ:分かった。分かったから。そない「ぶつぶつ」言うな。何から数えたらええ?

い:手始めに,数の子や

こ:いきなり数の子か?

い:「いきなり」てなんや

こ:私は初心者やで。「つぶつぶ」数えるの生まれて初めてや。いきなり数の子数えるっちゅうのは…

い:それは君の言う通りや。数の子は僕のような上級者が数える「つぶつぶ」であって,君のような初心者が簡単に数えらえるようなもんやない。君のような初心者は,初心者向けの「つぶつぶ」を,初心者なりのスピードで数えて…

こ:そない「初心者,初心者」言うな

い:ほな,つぶつぶオレンジの「つぶつぶ」はどや?

こ:つぶつぶオレンジの「つぶつぶ」も結構な「つぶつぶ」の量や。最初はコーンポタージュのコーンの「つぶつぶ」くらいが…

い:いやいやいや。コーンは無理や

こ:なんでや。コーンは「そっとしておいてほしい」思うとるからか

い:それもそやけどね,コーンの「つぶつぶ」の数を数えるのは至難の業や

こ:数の子とかつぶつぶオレンジの「つぶつぶ」と比べたら,コーンポタージュのコーンの「つぶつぶ」のほうがすぐ数えられるやないか

い:あれは,初心者がやると必ず腰痛める

こ:なんでや。あんな軽いもん数えんのに腰痛めるわけないやろ

い:あのな,君は知らんと思うけど,コーンというのはトウモロコシや

こ:知っとるわ

い:なら分かるやろ

こ:何でトウモロコシだと腰痛めんねん

い:◯◯◯(◯◯◯◯)にくる

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