[漫才] 名前はまだない(当て書き:夢路いとし・喜味こいし)
#オチを予想してお楽しみください (7文字)
なかなか名前が付けられないいとしさんと,すぐに名前を付けたがるこいしさんのやりとりをお楽しみください。夏目漱石の「吾輩は猫である」と関係があるのは「猫」と「名前はまだない」という部分だけですが…
オチの分類:途端落ち
夢路いとし:最近猫を飼いはじめまして
喜味こいし:ほうほう。どんな猫?
い:しっぽがついてて,四つん這いで歩くかんじの
こ:猫っちゅうんはみんなそうや
い:「どんな猫」言うから…
こ:大きさとか,色とか,いろいろあるやろ
い:大きさはこれくらいで,色は無地
こ:「無地」とは普通言わんけどもやなぁ…,白い猫か?
い:真っ白でかわいいんですわ
こ:名前は?
い:まだない
こ:ほんなら僕が付けよか?
い:丁重にお断りいたします
こ:なんでや。私は名前付けるの得意やで。昔そういう仕事してたから
い:君は昔「猫の名前付ける仕事」してたんか
こ:どういう名前がいい?
い:白猫やから,「白」がつく名前がええね
こ:「白」がつくね。あとは?
い:「すくすくと育ってほしい」という願いを込めたかんじの
こ:「すくすくと育ってほしい」という願いね。思いつきました
い:もう思いついたんかいな!?
こ:そういう仕事してましたから
い:どういう仕事なんですか?それは
こ:「白」がついて,「男らしく元気に育ってほしい」という願いを込めて,「白飯」
い:メスや
こ:メスかいな。そういうことは先に言え
い:それにねぇ,「白飯」てお米でしょ?
こ:お米やけど,「白飯」というのはちゃんと炊き上がったお米やから大丈夫や
い:何が「大丈夫」やねん。「炊きあがってるか」なんてどうでもええねん。猫の名前やで
こ:メスやったら…女の子っぽい名前で,「白」に「美しい」って書いて…
い:「美しい」という文字はええね
こ:「白美(しろみ)」っちゅうんはどや?
い:そんな白身魚みたいな響きの名前嫌やわ
こ:君なぁ,そんな何文句ばかり言うて…,「白飯」と「白美」以外で白がつく名前言うたらあとは「白ごま」か「白味噌」くらいや
い:なんで猫に食べ物の名前ばっか付けようとすんねん。君,名前付けんでええわ。妹が付けるから
こ:猫の妹がか
い:僕の義理の妹や。猫の妹は猫やから猫に名前付けるなんて無理や
こ:義理の妹。君の嫁はんの妹か
い:そうや
こ:名前はなんて言うたかな?
い:名前はまだない
こ:まだない!? 生まれたてか?
い:んなわけあるかい。53や
こ:53歳にもなって「名前ない」ってどういうことや
い:迷ってるんですわ
こ:迷いすぎや
い:名前は一生を左右するもんやから,迷うのは当然のことやないか
こ:53年間も名前付けてもらえない時点で人生迷いっぱなしや
い:家族で話し合ってやな,「とりあえず猫の名前を先につけよう」ということになったんですわ
こ:君の嫁はんの家族大丈夫か。普通妹が先や。家族の話し合いの場にはその53歳の妹もおったんか
い:おった
こ:なら妹さんも悪いわな。53にもなって,なんで「わたしのを先につけてくれ」って言わんねん
い:妹には「名前」っちゅう概念がないねん
こ:「名前」という概念がない!? そんな53歳がおるんか。でもその妹が猫の名前を付けるんやろ?
い:だから一向に決まらん
こ:あたりまえや。猫の名前が決まらんと,妹の方も決まらんのやろ?
い:ジレンマやね
こ:そんなんジレンマちゃうわ。名前なんてもんは勢いやから。猫は「タマ」,妹は「花子」,これでええやろ
い:「花子」はうちの嫁はんの母親の名前やからあかん
こ:勢いだけで付けるとかぶることあんねん。ほんなら「花」でどや
い:「花」は一番下の妹の名前やからあかん
こ:一番下の妹?ちょっと待て。君の嫁はんのすぐ下の妹のその下の妹もおるんのか
い:いますよ
こ:その一番下の妹にはもう名前が付いてんのか
い:あたりまえや。一番下の妹言うてももう49や
こ:君の嫁はんの家族は53歳の妹の気持ちを考えたことあるんか
い:まいちゃんの気持ちを?
こ:「まいちゃん」て誰や
い:53歳の妹や
こ:「まいちゃん」てなんや。あだ名か
い:何言うてんねん。名前やがな。義理の妹の
こ:「53歳の妹にはいまだに名前がない」言うたやろ
い:53歳で名前がない人なんて聞いたことないですわ
こ:君が言い出したんや。「名前はまだない」って
い:「名前はまだない」なんて言うてない
こ:「名前はまだない」言うたやろ
い:言うてない
こ:ほんならさっきなんて言うたんや
い:名前はなだまい
こ:名前はなだまい?「なだまい」っちゅう名前か?
い:名字が「なだ」で,名前が「まい」
こ:ややこしぃな。ほんならあれはどういうことや。「家族で話し合うて,妹の名前よりも猫の名前を先につけることになった」みたいなこと言うてたやろ
い:妹の名前やなしに,「妹が飼い始めたキリンの名前よりも,うちの猫の名前を先に決めようということになった」という話ですわ
こ:君の義理の妹,キリン飼いはじめたんか?
い:「飼いはじめた」言うてももう10頭目や
こ:10頭目!? これまですでにキリン9頭飼うてて,新たにキリン1頭飼いはじめたんか
い:家族は,「キリン多すぎて名前付けるのが大変や」って嘆いてますわ
こ:名前付けるのより飼育の方が大変やろ
い:義理の妹はとにかく飼育は得意やから。それやのになぜか全然名前を付けようとしないんですわ
こ:「名前」という概念がないからや。僕が付けよか?
い:丁重にお断りいたします。君すぐ変な名前付けるやろ。「白飯」とか「白美」とか
こ:それは猫やからや。確かに猫の名前付けるんは苦手やけど,キリンの名前なら任せといて
い:「キリンの名前なら得意」とかあるんか
こ:こうゆうんは場数や。私は昔「キリンの名前を付けるっちゅう仕事」してたからね
い:例の「名前をつける仕事」て…キリンの名前やったんか
こ:キリンは早く名前付けてあげんとぐれるからね
い:キリンがぐれる!? ぐれたらどうなんの?
こ:ぐれはじめの頃は,学ランの詰め襟を長くしたりやな…
い:昔の高校生の不良みたいやな。キリンやったらえらい長うなるな,詰め襟
こ:ほぼ煙突や
い:今度例の義理の妹と一緒にキリンに会いに行くやけども…
こ:気をつけなあかんで
い:何を?
こ:ぐれたキリンは襲ってくるから
い:ヘルメットかぶって行った方がええか?
こ:ヘルメットかぶってもひとたまりもないわ。キリンの力は半端ない
い:ほんならどないしたらええねん
こ:ご機嫌をうかがう
い:キリンのか?
こ:キリンのや
い:どうやって?
こ:「今日もいいかんじで首が長いですねぇ〜」とか言うたらええ
い:キリンは嬉しいんか,それ言われて
こ:嬉しいやろ。あんだけ首長いんやから
い:長いことを気にしてるかもしれへんがな
こ:確かにそういうキリンもおるかもしれんな。太ってる人は太ってることを気にしてるかと思えば,痩せてる人は痩せすぎてることを気にしてたりするもんやから
い:首が長いことを気にしてるキリンか気にしてないキリンかはどうやって見分けたらええねん
こ:念のためヘルメットかぶってやな,キリンさんに失礼のないのないように丁重に近づくしかないな
い:結局ヘルメットかいな
こ:君の場合はすぐ言わんでもええこと言うから心配やけど
い:ほんならヘルメット何個もかぶりますわ
こ:そういや君,ええもん持っとるやないか
い:何が?
こ:ヘルメットよりええもんや。あれ△△って行き
い:何△△って行ったらええねん
こ:◯を△△って行けばいい
あらゆるオチを誰よりも先に小噺化するプロジェクト『令和醒睡笑』過去の創作小噺を何回も何回も回すと"古典小噺"になる・・・はず・・・【小噺はフリー台本】