見出し画像

漫才論| ⁸⁷「使い捨てのネタ」と「進化し続けるネタ」って何が違うの❓

時事漫才のように,「一回しか使えないかもしれない」という覚悟のうえでやるのは,一つの立派な漫才スタイルです

しかし,そういう覚悟があるわけではなく,「使い捨てのネタを作っている」という意識もまったくないのに,結果的に「使い捨てのネタ」を量産しているとすれば,「使い捨てのネタ」と「進化し続けるネタ」の違いについて理解したほうがいいと思います


ネタは育つ

図らずも「使い捨てのネタ」を作っている人は,「ネタは育つもの」ということを知らないのかもしれません。その結果,「とにかく"今"その場でウケるネタ」を作ろうとして,ギャグっぽいネタになってしまったりします(これは,「ギャグ漫才」が好きであえてそういうネタを作っている人のことではありません)

「ネタが育つ」というのはどういうことなのでしょうか?台本として完成した段階というのは言ってみれば"一番おもしろくない状態"で,それを実際に演じることによってどんどんおもしろくなっていくということです。もちろん,台本として完成した段階でもそれなりにおもしろくないと,いくら演じ続けても一向におもしろくならない場合が多いですが・・・

完成度の高いネタ

「進化し続けるネタ」というのは,ギャグを羅列したような漫才ではなく,話にストーリーがあって,その流れに沿ってボケを入れていくネタのことです。俗にいう「完成度の高いネタ」です。ボケ数を増やそうとして,話の流れとは関係のないボケを入れたくなることもありますが,これをやると,大抵完成度が下がります

ネタを育てるためには,そのネタを何回も演じる必要があります。ストーリーがある完成度の高いネタであれば何回も演じることが可能になりますが,ネタの完成度が低いと,演じる側もみている側も結構すぐに飽きてしまうので,何回も演じることが難しくなり,育てることも難しくなります

「飽きる」という大敵

もちろん,どんなに完成度の高いネタを作っても,それをいつも台本通りに演じるだけならそれ以上ネタは育ちませんし,結構すぐに飽きてしまいます。ネタを育てるうえで,「飽きる」というのは大敵です

ネタを育てるために必要なのは,アドリブを入れながら演じることです。毎回アドリブを入れて新鮮さを保ち,そのアドリブによって新たなボケや展開などが生まれるのを楽しみ,そのようにしてネタが育っていく喜びを感じることができれば,自分たちも飽きずに同じネタを演じ続けることができます。何度も何度も演じ,何年も何年も演じ続け,永遠に育てることも可能です

このテーマに関する質問・意見・反論などは
「みんなで作る漫才の教科書」にお寄せください

みんなで作る漫才の教科書とは,テーマ別に分類した「漫才論」にみなさんから「質問」「意見」「反論」などをいただいて,それに答えるという形式で教科書を作っていこうというプロジェクトです

THE MANZAI magazine
❶「自分たちにしかできない漫才スタイル」を確立する方法 ❷しゃべくり漫才のうまさは「相槌」で決まる ❸「漫才台本の書き方」と「オチのつけ方」 ➍ボケやツッコミってどのようにして思いつくものなの? ❺「言い訳-関東芸人はなぜM-1で勝てないのか-」は"現代漫才論"ではない-ナイツ塙さんが何を「言い訳」しているのかが分かれば,関東芸人がしゃべくり漫才でM-1王者になる道が見えてくる- ❻漫才詩集「38」

フィクション漫才『煮豆🌱』-いとこい師匠のテンポで-
作: 藤澤俊輔  出演: おせつときょうた

WeClipからのコメントはこちらから

あらゆるオチを誰よりも先に小噺化するプロジェクト『令和醒睡笑』過去の創作小噺を何回も何回も回すと"古典小噺"になる・・・はず・・・【小噺はフリー台本】