[漫才] 空気清浄機(当て書き:夢路いとし・喜味こいし)
#オチを予想してお楽しみください (7文字)
環境問題に目覚め「世界中の空気をきれいにしよう」と活動し始めたいとしさんと,それに巻き込まれるこいしさんのやりとりをお楽しみください
オチの分類:地口落ち
夢路いとし:今度僕,「就職しよ」思うとりまして…
喜味こいし:「就職」て。君はいくつや
い:20歳すぎや
こ:何ぃ!? 20歳すぎ!?
い:20歳すぎとるがな
こ:そりゃ20歳はすぎとるけど
い:就職の面接でも「20歳すぎです」言うたら…
こ:言うたんか,「20歳すぎ」て
い:即合格
こ:どんな会社や
い:20歳すぎの元気な男性がほしかったんやろな
こ:まぁ…元気は元気や。でも,漫才はどないすんねん
い:「どない」て?
こ:やめるんか
い:なんでや
こ:普通の会社就職したら漫才する暇ないやろ
い:普通の会社やないから大丈夫や
こ:どんな会社や
い:空気清浄機の会社
こ:普通の会社やないか
い:会社は普通やけど,勤務時間は普通やないから大丈夫や
こ:「普通やない」とは?
い:時間自由なんですわ
こ:なんで今さら空気清浄機の会社に就職すんねん。その歳で
い:僕はこれまで「『笑い』で世界中の人々を幸せにしたい」思うて漫才やってきたんやけど,最近の環境問題,特に中国の大気汚染のニュース見て,「世界中の人を笑わせるだけではダメや。世界中の空気きれいにせなあかん」思うようになってやな…
こ:急にどないした。熱でもあるんか
い:僕もそういう歳になってきたんや。もうアホなことばかり言うてる場合やない
こ:やっぱり漫才やめよとしとるやないか
い:何が?
こ:「アホなことばかり言うてる場合やない」言うたやろ
い:何を言うとんねん君は。漫才を「アホなこと」思うとるんか。確かに僕が言うことはほぼ「アホなことばかり」やけどもやな,漫才は「アホなこと」やない。僕はプライド持って真剣に漫才やっとんねん。漫才で世界中の人を笑わせ,同時に世界中の空気もきれいにする。それが今の僕の夢や
こ:たまにはええこと言うやないか
い:しかしやな,この仕事結構きついんですわ
こ:空気清浄機の仕事か
い:鼻から汚い空気吸うて,口からきれいな空気を出すという仕事なんやけど…
こ:その仕事…,自分でやるんか
い:あたりまえや。仕事とはそういうもんや
こ:そういうことやなしに,空気清浄機の販売とか開発やなくて,自分で鼻から吸い込んで空気をきれいにするんか
い:それが仕事や
こ:そんなんで空気きれいにならんやろ
い:それは志次第やないか
こ:「志」の問題か?
い:まず必要なんが「気持ち」や。僕の志は相当高いで。世界中のほこりというほこりを鼻から吸い込んで,全世界の空気きれいにしよ思うてますから
こ:それはええ志や
い:だたやな,この仕事ひとりでやるんは厳し思うてんねん
こ:それはひとりでは無理やろな。世界中の空気やから
い:一緒にやってくれるんやな?
こ:誰がや
い:君がや
こ:私が?
い:君かて世界中の空気きれいにしたいやろ
こ:そりゃそやけど,鼻からほこり吸って口からきれいな空気出すなんて無理やろ
い:君は知らんだけや。我々の鼻には,天然の超高機能フィルターついてんねん
こ:鼻毛やろ
い:なんで知ってんねん!? 鼻毛が超高機能フィルターやてこと
こ:「なんで」言われても…
い:さては…,君も言ったな
こ:どこへ?
い:講習会や
こ:「講習会」というのは?
い:「鼻毛は地球を救う」という講習会や
こ:……。行きましたよ
い:なんで黙ってたんや
こ:「鼻毛は地球を救う」っちゅう講習会行ったなんて恥ずかしゅうて言えるか
い:地球救うんがそない恥ずかしいことか
こ:「鼻毛で救う」っちゅう発想が恥ずかしいやろ
い:くだらんプライドは捨てな,この仕事は務まらん
こ:まだ「やる」言うてないやろ
い:ほな,まずは呼吸法から教えますわ
こ:人の話聞いとんのか
い:まず,鼻から吸って口から吐く。これが基本や
こ:まぁええわ。やり方だけ聞きましょう
い:鼻には「鼻毛」という名の超高機能フィルターがついとるから,鼻からなら安心して吸い込むことができる
こ:鼻から吸えばええんやな
い:ちょっと待たんか
こ:なんや
い:この仕事は大量のほこりを吸い込むから,通常の鼻毛だけでは対応しきれん
こ:「通常の鼻毛だけでは対応しきれん」言われてもやな,どないしたらええねん
い:これを鼻に塗るんや
こ:なんやこれ
い:HFKや
こ:なんやそれ
い:この薬品の名前や。何の略か分かるか?
こ:HFKやから…,ヒューマン…フューチャー…
い:鼻毛・増やす・薬や。略してHFK
こ:そのまますぎるやろ。ええんかそのネーミングで
い:これを鼻に塗ると,個人差はあるが,だいたい3分もすれば鼻毛がボワッといきなり生えてくる
こ:3分でか
い:急にものすごい勢いで生えるから,ちゃんと踏ん張っておきなさい
こ:そない勢いで生えてくるんか。どんくらいつけたらええんや
い:鼻毛をどれくらいの長さにしたいのかによるな。どのくらい伸ばしたい?
こ:「どのくらい」言われてもやな,鼻毛の長さの相場が分からん。3mくらいか
い:そない伸ばしたいんか。やる気ありすぎや
こ:長すぎるか
い:最初は10cmくらいでええやろ。こんなもんで十分や
こ:こんなんでええんか
い:うぅぅわぁぁぁ~!!
こ:どないした
い:今鼻毛が急にボワッて一気に生えてきたんですわ
こ:もうか。 1分もたってないやろ
い:やる気あるとその気持ちが鼻毛に伝わって早く伸びるんや
こ:なんやそのシステム。どうなっとるんや。数秒で鼻毛ぼうぼうや。やる気ありすぎやろ
い:君は?
こ:え?
い:君は?
こ:何がや
い:まだ生えてこんのか
こ:まだや
い:君…
こ:いやいやいや。やる気ありますよ。あれ?おかしいな。まだ鼻毛が…うぅぅわぁぁぁ~!! 生えてきよった!ボワッて。一気に
い:君,今「やる気ない」言われた瞬間にすかさずやる気出したやろ
こ:偶然や。やる気あるて。最初から
い:ちょっと待て。君の鼻毛長いやないか。軽く3mはあるわ
こ:君より多めに塗ったんや。HFK
い:やる気あるやないか
こ:だから「やる気ある」言うてるやろ。世界中の空気をきれいにするやんろ?二人で力合わせて
い:君の鼻毛はすごいで。これで吸ったらすごいことなるわ
こ:吸ってもええんか
い:タイミングはこうや。吸って~,吐いて~。吸って~,吐いて~
こ:こうか
い:その調子や。僕も一緒にやるわ
(二人で吸って吐く)
い:二人でやるとものすごい勢いでほこり取れるわ
こ:ほんまか
い:ほんまや。君は天才か?
こ:「天才」て。鼻毛でほこり取る天才なんておるんか
い:よ〜し。この会場は終わりや。もうほこりない
こ:こんなんでええんか
い:君のおかげや。君は天才や。次は隣の会場行こ
こ:漫才どないすんねん
い:何が?
こ:「何が」て,まだ漫才の途中やないか。オチもつけんと行くんか
い:オチなんてつけんでもええやろ
こ:何を言うてんねん。君はプライド持って真剣に漫才取り組んどるちゃうんか
い:プライドは捨てますわ
こ:なんでや
い:◯◯◯(◯◯)は◯◯ほうがええ
あらゆるオチを誰よりも先に小噺化するプロジェクト『令和醒睡笑』過去の創作小噺を何回も何回も回すと"古典小噺"になる・・・はず・・・【小噺はフリー台本】