漫才論| ¹"漫才論争"に決着をつける方法とは❓
M-1グランプリ2020を制したマヂカルラブリーの漫才をみて，｢あれは漫才なの？｣という漫才論争をしたくなる気持ちはよく分かります。｢そういう議論をしたい｣という気持ちも分かりますし，実際，｢論争をする｣という楽しみ方もありだと思います
でも，本気で｢答え｣を出そうと白熱しののしり合うようなことがあるなら，それは不毛な議論です。漫才の｢形｣は時と共に変わっていくという側面があり，｢答え｣などないからです
それでも，漫才論争に決着をつける方法はあります。｢漫才とは何か｣という問題の答えは出さないまま論争だけを決着させる方法です
｢正統派漫才選手権｣のような大会
それは，｢『正統派漫才選手権』のような大会を開催し，漫才師は漫才で，審査員は審査で，自分たちが思う『正統派漫才とは何か』という問題の答えを提出し，優勝者の漫才を『今年の正統派漫才』に認定する｣という方法です
これは，どうせ｢答え｣などないので，｢『漫才とは何か』『正統派とは何か』を考えるプロセス自体をショーとして見せる｣という方法です。｢論争｣というのは，答えが出ないからこそおもしろかったりもしますから，そのすべてを｢『新たな漫才の大会』というショーにして楽しんでしまおう｣という発想です
｢漫才論争｣が起こっている
根本的な理由
そしてこの大会には，もう一つの側面があります。そもそも｢漫才論争｣が起こっているのは，圧倒的におもしろい正統派漫才をするコンビが減ってきているからだと思います。そのような漫才を作ったり演じたりするのは簡単なことではなく，しかも，M-1では｢うまさ｣よりも｢新しさ｣が評価されたりしますから，正統派ではない漫才を模索するコンビが増えていったのではないかと思います。M-1の審査基準は｢とにかくおもしろい漫才｣ですから，そういう流れになるのは仕方のないことですし，それによって｢新しい漫才｣が生まれたりもしますから，それはそれでいいことだと思います
ただ，M-1の影響力があまりにも強すぎて，その結果｢正統派漫才｣が衰退してしまうようなことがあるとすれば，そのような流れは食い止めなければなりません。｢正統派漫才選手権｣のような，｢おもしろさ｣だけでなく，｢うまさ｣や｢美しさ｣も評価の対象となる大会があれば，正統派漫才を追求するコンビも増えていくはずです。審査基準は｢うまくておもしろい漫才｣です
｢正統派漫才選手権｣で漫才師たちは，おもしろいネタだけでなく，磨いてきた話芸や所作の美しさなども披露します。そして審査員は，｢あれこそまさに正統派だ｣とか，｢ああいうのは正統派とは言えない｣など，それぞれが思う｢正統派漫才｣について議論しながら，その年の｢正統派漫才｣のチャンピオンを選びます
誰もが認める
｢日本一の漫才師｣が誕生する
漫才界においてM-1があまりにも力を持ってしまったために，｢とにかくおもしろい漫才｣が評価され，｢うまくておもしろい漫才｣はそこまで評価されない状況が生まれているとすれば，それはいいこととは思えません。バランスが悪すぎます
M-1だけでなく，｢うまくておもしろい漫才｣が評価されるもう一つの大きな大会があれば，｢新しい漫才｣も発展し，｢正統派漫才｣も発展していきます。そして漫才論争は，｢正統派漫才選手権｣というショーの中で楽しむことができます。これが，答えが出ない｢決着｣です
そしてもし，｢M-1グランプリ｣と｢正統派漫才選手権｣の両方を獲る漫才師があらわれたら，誰もが認める｢日本一の漫才師｣の誕生ということになるでしょう
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❶｢自分たちにしかできない漫才スタイル｣を確立する方法 ❷しゃべくり漫才のうまさは｢相槌｣で決まる ❸｢漫才台本の書き方｣と｢オチのつけ方｣ ➍ボケやツッコミってどのようにして思いつくものなの? ❺｢言い訳-関東芸人はなぜM-1で勝てないのか-｣は"現代漫才論"ではない-ナイツ塙さんが何を｢言い訳｣しているのかが分かれば，関東芸人がしゃべくり漫才でM-1王者になる道が見えてくる- ❻漫才詩集｢38｣
フィクション漫才『煮豆🌱』-いとこい師匠のテンポで-
作: 藤澤俊輔 出演: おせつときょうた
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