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目の前の一本の木

目の前に、一本の木が見える。
この木は、全国各地に一般的にあるコナラという樹種で、秋にドングリを落とす。よくある木だが、この木は、地球上で唯一、この場所の光を受けて、この場所の水を吸い、この場所で育った木だ。葉のつき方も、枝ぶりも、他のコナラとは違う。植物は根付いてからは基本的に動けないから、まさしくここだけで見られる唯一の木だ。それも何千年、何万年もの昔から、繰り返しドングリを落とし、根付いて、大きく育った親から生まれた、一つのドングリが大きく育った姿だ。その意味では、長い年月を生き抜いた生命力と運の強い木だ。
一つひとつの木を同じと見るのではなく、その違いに着目して、その場所で生きる厳しさと楽しさを、想像してみたい。

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