記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。

「すてきです 先輩らしくて」(スキップとローファー感想6)

Scene12「パタパタの生徒会選挙」も大好きな回…

ずっと生徒会長志望だった高嶺先輩が、人気者の風上先輩に選挙で負けてしまう

高嶺先輩はそれでも気を取り直して風上先輩を前向きに応援しようと気を取り直そうとしているさ中、風上先輩はそんなに生徒会長業にそこまで思い入れはないらしいという話を偶然聞いてしまう…
落ち込む高嶺先輩

私……バカみたいね?

でも私
……
こ これしかできないから…

そう言って涙する高嶺先輩になんの言葉もかけてあげられなかった、とみつみちゃんは兼近先輩に話す
(兼近先輩が励ますつもりでうっかり高嶺先輩の傷口に塩を塗ってしまったので、見かねたみつみちゃんが兼近先輩に詳しい事情を教えてあげたのである)

ーーすぐに何か言ってあげたかったけど言えなかったんです
だって高嶺先輩と私はたぶん少し似てて私もこの学校で先輩と同じことに気づきはじめてたから
努力は自信になります
だけど
努力がいつか報われるって信じることはすごくすごく怖いってことです

その話を聞いた兼近先輩は、ある日急に自身が小学生の時に作った処女作「コムラ」の映画の上映会を生徒会室ではじめる
突然の黒歴史披露に兼近先輩自身も恥ずかしそうで、「じゃあなんで見せるの…?」という空気の中で兼近先輩は言う

いやだってさ
おもしろいだろコレ!
君らビミョーに気を遣ってくれてるけどさ
笑っちゃっていいんだぞ!!
そりゃ僕だっていつか最高のものを作って みんなに認められたいけど……
これだって誰にも観せないよりは君らが笑ってくれるならいいと思ったんだ

そして高嶺先輩はこの映画を見た後に吹っ切れて気持ちの整理がつく

これってみつみちゃんが「(受験に)落ちたらなんもならんもん」と言った時にふみちゃんが言った

でも挑戦したみつみちゃんにはでっかい意味があるし
それを知っとるうちにも ある

という言葉だったり、その時のことを振り返ってみつみちゃんが言った

自分のためにやってることでも
知っててくれる友達がいるのはうれしかったなぁ

を兼近先輩なりの形で体現したのが「黒歴史の処女作映画を高嶺さんたちに見せる」だったのかなあと思って
(兼近先輩自身はこのみつみちゃんの話もふみちゃんの存在も全く知らないことだとは思うけど!)

兼近先輩の夢が叶っても叶わなくてもこの日この時、兼近先輩の映画が高嶺先輩に笑顔と元気をあげたことには意味があり

だから演劇を志す兼近先輩がこれまできっと誰より考えてきていたことなんだろう

私……バカみたいね?

でも私
……
こ これしかできないから…

努力がいつか報われるって信じることはすごくすごく怖いってことです

それに対しての兼近先輩のアンサーが
拙くても、報われなくても、過程を知ってもらえて、かつそれによってほんの少しでも誰かに前向きな影響を与えることができたなら、結末がどうであれきっとその過程には意味がある
ってことだったんじゃないだろうか

もしくはもっとシンプルに「人は他人の情けない黒歴史を知ると元気が出るから、高嶺さんへの贖罪の意味も込めて僕のそれを見せてあげよう!!」
ってことだったのかもしれないけど…?

その意図はどうであれ、高嶺先輩は元気が出た
なんでもびっちり計画せずにはいられないところは相変わらずだけど、そのメモの内容は前向きで真面目で明るく高嶺先輩らしい内容で、それを見たみつみちゃんは言う

すてきです
先輩らしくて

そしてみつみちゃんの言葉に「ありがとう」とほほえむ高嶺先輩の笑顔は心なしかこれまでよりも柔らかくて

高嶺先輩は生徒会長になるためにずっと努力していたのにそれを軽い気持ちで立候補した(ように見える)風上先輩にその座を校内での人気の差で軽々持って行かれて、いろいろ複雑な気持ちや悲しみもありつつ、でも最終的には「自分も風上さんを見習ってもっと親しみやすさを獲得しよう!」って前向きな方向に持ち直して

「理不尽だ」って、風上先輩のことや風上先輩に投票した人達に向かって一生恨みつらみすることだって、高嶺先輩の立場ならぜんぜん許されていたはずなのに、でも高嶺先輩はそうしなかった

高嶺先輩は高嶺先輩だったからこそ風上先輩に投票で負けてしまったわけだけど、でも高嶺先輩がどこまでも高嶺先輩らしくいてくれたからこそ、その素敵さを見出してくれる人もいたわけだよね、みつみちゃんみたいに
兼近先輩も自分の恥ずかしい過去を晒してまで励まそうとしてくれた

そのことを無意味だなんて言いたくないな わたしも