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甘い宝石箱

小児がんを患い入院していた頃、

お見舞いにいただいて、特にワクワクしたのはケーキでした。


「食べたいだけ食べてね。足りなかったら、また買ってきてあげるよ」

いいの?やったぁ

子ども心に、大喜びした

その一瞬、自分が末期ガン患者であることを忘れた


私はケーキの箱を開けてもらって、中を覗き込んだ


中には、ぎっしり並んだ、宝石のように綺麗なケーキ

素直に幸せでお腹いっぱいになった

「点滴が終わったら、先生に食べていいか聞こうね」

僕は点滴の固定が腕から外れないように、かばいながら、ゆっくりとベッドに横になった

白い天井

白い壁

白いカーテン

看護婦さんも白色

そして、

ケーキの箱も

だけどね、

箱の中には、見たこともない綺麗な宝石がぎっしりあるから、

僕は幸せなんだ

食べるのもったいないけど、

今は体調がいいから、先生は「いいよ」って言ってくれるよね

「もう、大丈夫よ」

母の顔の表情が、どことなく雲って見えた

僕は、小児がんになって、

それでね、

末期ガンなんだ、

死んでしまうかも知れないって

お母さんが、先生の話を聞いたあと、

待合室で泣いていたんだ

僕はそのお母さんが泣いているのを見たんだ

でも、今日は少し元気になったよ

お見舞いに宝石箱を貰ったからね

あ り が と う



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