半年越しの来訪と不在

「毎日投稿やめます」の投稿から1週間。気がつけば9月。マイブームの森見富美彦の小説がメルカリで届いたので一冊読みながらゴロゴロしていた18時。突如、去年の男同期から電話が。

「こんにちは〜」

明らかに声が高い。と言うか女性の声だ。「おうおうサプライズで彼女紹介か?こいい度胸してるじゃねえか」と頭に血が昇りかけたが時は平日の夕方、さすがに同期はまだ職員室にいるはずだ。となると教員?でも、どの教員とも整合しない声。

「ええと〜?」と困惑する僕。

「先生、サトウです」と電話の主。(仮名でお送りする)

僕の記憶上、サトウと言う苗字を持つ去年の勤務校の関係者は1人しか思い浮かばなかった。自分が学校を辞める少し前に学校を旅立った卒業生である。

2020年3月初頭。コロナで実施が危ぶまれた卒業式はプログラム短縮や来賓に制限をかけ、なんとか実施された。

僕も当然卒業生一同を送り出す立場ではあったものの、彼らの3週間後には学校からいなくなる存在だったので「先生、また会いにきますね!」と言う生徒にはたいそう気まずく返事をしたものだった。

そもそも僕の担当学年は1年生であり、卒業生とはあまり関わりがなかったのだがサトウさんは別だった。1学年の生徒を保健室まで連れて行った時に、まるで養護教諭であるかのようにその生徒の対応をしてくれたのがサトウさんだった。それ以降も職員室で顔を合わせるようになり、気がつけばよく話す間柄になっていた。

そのサトウさんにでさえ、僕は辞めることを言わなかった。と言うより、彼女に関しては言えなかった。とても繊細な子で、せっかくの晴れの日に悲しい顔をされてしまうような気がしたからだ。

そして時は流れて半年後。今日になってサトウさんは卒業生として母校に顔を出しに来た。そして自分の同期と話をして、自分がいなくなったことを初めて知ったのだ。

半年ぶりではあったが話をしたのは数分だった。サトウさんとの会話で最後に言われたのはこんなことだった。

「今になって去年厳しい言葉をかけてきた先生たちの優しさに気づいたし、フジモト先生みたいな優しい言葉をかけてくれた先生のありがたさにも気づけました。本当にありがとうございました」

齢18にして思うことか、と驚いた。僕は誰もが認める「優しい先生」として去年1年間は振る舞い半ば「心のオアシス」みたいな役回りをしていた。ただ、当然だが厳しいことをいうのも教員の仕事。生徒の成長の多くは厳しい指導から生まれている。僕自身がかつて経験したことだから、よくわかる。それを卒業してすぐにわかることはもちろん、言葉にして相手に伝えると言うその心意気に僕も心を打たれた。

「自分も去年、加藤さんと話ができて元気をもらっていたから頑張れました。ありがとう」と僕は返した。

「それじゃあ、そろそろ終わりにしようか。じゃあ、noteの更新楽しみにしてますね」と、同期が言って通話は終了した。サボ…長期休業をしっかり見られてたようだ。

とまあ平日夕方の何気ない出来事でした。大学生活について詳しく聞く時間はなかったので、その辺は同期から後日聞く事にしようと思います。今年の大学生は多くの苦労を抱えていると思うので、早くことが好転することを祈っています。

それではまた。


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