すげーパティシエと食べ歩きに行ったよって話②

イデミスギノをあとにした俺とコシさんは蔵前の「鷰~en~」というお店に向かった。

パティスリーではなくカフェだが、インスタで見かけたケーキがとても本格的で美味しそうだったので前から気になっていたお店だ。

俺もコシさんも初訪問なので店の場所は詳しく把握していない。
しかし大丈夫。俺には文明の利器「手の平の地球(グーグルマップ)」がある。

蔵前駅の改札を出て、店の場所を探そうとしているコシさんに向かって言う

「俺地図読めるんで!道迷ったことないんで!道案内は任してくださいYO!チェケラ!」

地図読めますよマウントをとる。隙あらばマウンティング、これは社会で生きるための必須スキルだ。

一瞬だけグーグルマップを見て、すぐにスマホをポケットにしまう。
あんまり長々とスマホを見ながら右往左往して道案内をするなんて2流のやること。
1流はマップを見た瞬間に現在地と目的地、その位置関係を把握する。もちろん俺もenの場所は完全に把握した。もはや地図などいらぬ!!!

「ついて来てくださいコシさん。俺が案内しますよ。今から俺のことは"導く者(ザ・ガイド)"とでも呼んでおくんなまし」

かっ、カッコいい。今の俺カッコよすぎる…あぁ、古今東西津々浦々天上天下唯我独尊天地無用割れ物注意…俺がいま世界で一番カッコいい…た、たまらねぇ!

ふひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!!

道を間違えました。

歩き始めて1分で気付いたんですけど、

道を間違えました。

途中コシさんに

「おぉ!enの匂いがしてきましたな!!!近い!近いですぞぉ!!!!」

とか言ってましたけど、

正反対に行ってました。

グーグルマップを5分ほど凝視して方向転換。

最初に出てきた駅の改札口の正面にお店はありました。

南無阿弥陀南無阿弥陀仏

仏の教えだけが俺に優しい。
俺、今日の食べ歩きが終わったら出家するんだ…

なんかええ感じにオシャレなお店だ。
カフェスペースの2階に上がる。

もちろんここでもケーキを食べるんだが、さすがに口直しがほしい。

メニューの「鳥の唐揚げ」という文字が視界に飛び込んできた。

鳥の唐揚げをご存知でない方に説明すると、鶏肉を調味液に漬け込んで油であげる料理だ。

つまり油であげてるから鳥の唐揚げはドーナッツだ。四捨五入したら完全にドーナッツだ。ドーナッツなのだ。

俺は鳥の唐揚げと書いてあるメニューを指差してコシさんに言う

「コシさん…俺、このドーナッツが食べたいです」

少し驚いた表情のあとに短く息を吐き、遠くを見つめるコシさん。俺に向き直るとこう言った。

「俺は今までそれを"唐揚げ"だと思っていたが、君が言うように"ドーナッツ"なのかもしれない。唐揚げとドーナッツに違いなんてない。人間が勝手に区別し、そう呼んでいるだけだ。フジノシンさん、知ってますか?宇宙から見たら国境なんてものはないんですぜ?唐揚げとドーナッツも、それと同じことなのかもしれませんね…」

再び遠くを見つめるコシさん。その目は外の景色ではなく、遠い思い出を見つめているのかもしれない。

「コシさん…あんた…」

いったいなにを言ってるんだ?

唐揚げとドーナッツは明らかに別物だし、国境がないとか、え?どゆこと?なんの話?

そもそも唐揚げとドーナッツはその成り立ちから全く違う。唐揚げはその名の通り、中国・唐の時代に確立された料理だ。いっぽうドーナッツの起源とされるのは18世紀イギリス。ドーナッツ伯爵が執事に作らせたのが始まりと言われてるんだ!

その唐揚げとドーナッツを一緒にするなんて!
ドーナッツ伯爵に謝ってほしい!!!ドーナッツ伯爵と執事がどれほどの思いでドーナッツを作ったか!!!
ちくしょう!!!ちくしょう!!!!!!

え?ドーナッツ伯爵って誰ですか?

え?ドーナッツの起源とか全くもって知らんのですけど。
誰?ドーナッツ伯爵誰?こわいこわいこわい。
ていうか執事に作らせず自分で作れよ。

そんで唐揚げって唐の時代にできたものなんですか?
俺は全く知らないんですけど。

なんやかんや俺たちはそれぞれケーキ1つずつと唐揚げを頼んだ。

まずはケーキのほうが唐揚げよりひと足早くテーブルに届いた。

あー、これは完全に映え。映え散らかしてる。
ケーキを皿の中央に置くのではなく、あえて少しズラす。これが令和スタイル。皿の真ん中に置く時代は終わったのだ。

ケーキは届いたが、俺とコシさんはまだ手をつけない。
なぜなら先に唐揚げを食べたいからだ。一回唐揚げで舌に残った甘味をリセットしたい。
そのためにあえて待つ。

ケーキを食べに来て、唐揚げ待ちをしたことがかつて有っただろうか?
いや、ない。
そもそも唐揚げを注文したことがない。
今成人男性2人がケーキを前にして唐揚げを待つという謎の光景が繰り広げられている。
店員さんから変質者だと思われても仕方がないだろう。
通報されなかったのは運が良かった。

そんな変質者二人組のテーブルに唐揚げが到着する。

唐揚げとケーキの見事なコラボレーションだ。
やはり唐揚げとケーキは切っても切り離せない関係にある。
そろそろジャパンケーキショーにも「国産米粉を使った唐揚げ部門」ができてもおかしくない。

ケーキの名前は「ソレイユ」

ココナッツのクッキーとパンドジェンヌ、センターがバナナのクリーム、周りがマンゴーのムース。

バナナのクリームと飾りのバナナが特に美味しい。
やはり前世がマウンティングゴリラなのでバナナ大好きなんですよね。

ちなみにソレイユってどういう意味か知ってますか?

俺は知らないです。

一瞬もしかしたら知ってるかもしれないと思ったんですが、やっぱり知りませんでした。ごめんなさい。

ケーキと唐揚げを食べながら、コシさんとこれからの製菓業界についてや、パティシエとしての今後、美味しいお店の共有、どうやったらアイドルと付き合えるか、遊戯王のデッキ編成など様々なことを話しました。

アイドルと遊戯王についてお互い認識を深めたところで退店。
唐揚げ代はコシさんが奢ってくれました。コシさんはほんとカッコいい、イケメン、男前、2枚目ジェーソウルブラザーズ、ブラックマジシャンだ。

それから近くのパティスリー「FOBS」でケーキを買い、解散しました。

食べ歩きの感想としては「唐揚げうめぇ〜」って感じです。最後に口に残った味も、感想も全部唐揚げに持っていかれました。

みなさんも機会があればenの唐揚げを食べてみてください。

それでは!!!

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