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これはただのバスチーじゃない。熟成バスクチーズケーキだ。そして水。

美味しいケーキ屋さんってどうやって探してるんですか?
という質問をよくされます。色々と方法はあるんですが、最近はもっぱらSNS、特にインスタやTwitterで見つけることが多いです。

その日もまだ見ぬ美味しいケーキと裏垢女子を求めてSNSの海を泳いでいるとこんなアカウントを見つけました。

ガトーショコラと熟成バスクチーズケーキを販売しているカシオリさん。
僕はこの「熟成バスクチーズケーキ」がとても気になりました。バスクチーズケーキを出すお店は数あれど、熟成されたバスクチーズケーキというのは初めて見かけたからです。

「熟成」という言葉の威力たるや恐ろしいものがございまして、熟成とつくだけでなんだかとても美味しそうに思えてしまいます。仮に「熟成裏垢女子」なんてアカウントが存在するならば気になって仕方がないでしょう。

しかしこの「熟成」という言葉は定義が曖昧で、信憑性にかけます。
蓋を開けてみれば、出来上がった後に数日置いただけということも十分に考えられる。

いやしかし、もしほんとに熟成して美味しさが増したバスクチーズケーキなら是非とも食べてみたい。
#熟成バスクチーズケーキと繋がりたい
というハッシュタグで繋がりまくりたい。そんな衝動を抑えきれず、私はカシオリさんのショップページを覗くことにしました。



「チーズケーキの熟成について」
ほほう。このページを読めばカシオリさんがどういう風に熟成を捉えているのか分かるわけですね。

そこにはこんな内容が書かれていました。

そこから熟成の本を読んだり、ネットで調べたり、熟成や発酵の先生に聞きに行ったりしました。
そこで私たちの考える熟成を定義しました。
タンパク質を生きた酵素がアミノ酸に変化させる事
熟成をさせるには生きた酵素が必要でその酵素は60度程度で死んでしまう事がわかりました。
私たちのバスクチーズケーキは200度前後の温度で焼き、菌の事を考えると75度前後まで芯温を上げるようにしています。
私たちの考える熟成は、焼いた後だと酵素は死んでしまっているので熟成出来ないと言う事になります。
そこで焼く前に熟成をするのですが、これも実はかなり苦労しました。
生クリームやクリームチーズを混ぜて熟成に使える時間は24時間以内
クリームを混ぜた後に冷蔵庫で、普通に置いておいても熟成は進みません。
そこで特殊な最新の機械を2種類入れて熟成を早めるようにしました。
結果としては24時間で5日程度熟成をした効果が出来るようになりました。

ショップページより一部抜粋

うおおおおお。ガチやん。ガチガチに熟成させてますやん。
いやしかしちょっと待って下さい。いかに特殊な機械を使っているとはいえ、より美味しくなってこその熟成。それって本当に美味しくなっているんですかい?

そんな私の疑いを見透かしているかのように、その答えは同じページに書いてありました。

熟成レポート詳細
グルタミン酸が約2倍→旨味成分が約2倍
粘性が約8倍→ねっとりさが約8倍
水分量が0.7倍→ぎゅっとつまった
熟成というのは本当に難しく、菌検査を20回以上していると思います。
自分たちでは見えないのでお客様に届けるには大切だと思っています。

ショップページより一部抜粋

ガチで美味しくなってますやん。そして衛生面も問題ないですやん。


ふ〜ん、おもしれぇバスチー


私の脳内に住む「少女漫画に出てくる大企業の御曹司で性格は歪んでいるが主人公との出会いにより徐々に真っ当な人間になっていくイケメン」の呟きが聞こえました。


あのバスチー、おもしろいですね


またもや同じく脳内に住む「主人公のワンプレーを見ただけでその才能を見抜いた神奈川県高校バスケ界で最強を誇り、全国にその名を知らしめる強豪校の2年生エース」の呟きも聞こえました。

とにかく脳内のキャラクターたちが面白いおもしろいというので取材を申し込み、カシオリさんには快く引き受けていただきました。


取材レポート


ということでカシオリさんの工房にお邪魔し取材させていただきました。

代表の田和さん、古川さんに出迎えていただき中に入ります。

さっそく熟成バスクチーズケーキのこだわりについて伺いました。

田和さん「材料については良いものを使っているけど普通のものを選んでいます。例えば高級な卵だと、卵が主張しすぎる気がしました。僕らの好きなチーズケーキってなんだろうと考えた時、チーズケーキらしいチーズ感があって、滑らかでねっとりしていて、舌触りが良くて甘さがくどくないのが僕らの好きなチーズケーキだろうとなってそこを目指そうとなりました」

古川さん「今使っている卵も標高450mの豊かで綺麗な水がある環境で育った鶏の卵を使っています。良い卵ではあるんですが黄身が主張しすぎないのでこれを使っています」

フジノシン「なるほど。広島の卵ですね」

なぜ広島の卵だと分かったかというと、たまたま目に入った卵の段ボールにデカデカと「広島」と書いてあったからです。
これは育った環境を聞いただけで産地を当てたかのようなフリができるゾォ!と思いドヤ顔で放った言葉が

「なるほど。広島の卵ですね」

すごい。すごいぞ。標高450Mで綺麗な水がある環境は広島以外にもあるに違いないが、ドヤ顔での広島宣言。シャーロックホームズもびっくりの推理力だと思われたに違いない。

古川さん「え?なんで広島って分かったんですか?!」

フジノシン「あ、いや、すいません。段ボールに書いてありました…」

取材中に見栄を張るものではない。なぜ俺は唐突に推理力があるようなフリをしたのだろうか。後悔しかない。意味がわからない。

田和さん「つまり色々試してチーズ感を邪魔しないものを選びました」

フジノシン「なるほど。ショップページに試作を500回以上されたと書いてありましたが、作り方だけでなく材料も色々と試しながら作られていたんですね」

田和さん「卵も10種類くらい試しましたし、生クリームや他の材料も色々試しました。僕たちはパティシエではないですが、1種類や2種類のケーキに絞って徹底的にやれば美味しいものを作れると思ってやっています。
ケーキ作りの常識・非常識ってあると思うんですけど、あえて非常識なこともやってみたりしました。生クリームを泡立ててから入れてみようとして、そんなの絶対にやらないよって言われたりもしたんですけど、一回やってみたら良いんじゃないのって感じでやって失敗したりもしました笑」

フジノシン「そういう先入観に囚われない感じが熟成するっていう発想に至った感じがしますね」

田和さん「そうですね。熟成チーズケーキを謳っているお店はいくつかあったのでお話を聞かせてもらったんですが、どれも僕たちの考える熟成とは違いました。

僕らの熟成の定義は”タンパク質を生きた酵素が分解してアミノ酸に変える”

調べてみると酵素は60℃で死ぬとあったので焼いた後は熟成できないんじゃね?となりました笑

なので焼く前に熟成しようということで、24時間で5日分くらい熟成が進むような機械を買って、焼いて、菌検査をして販売するということになりました」

フジノシン「ケーキでここまでガチ熟成しているのって見たことないです。そこがめちゃくちゃ面白いですよね」

田和さん「多分うちみたいに熟成と非熟成を自信を持って出しているところってないんですよ」


実食


今回は「急速冷凍した熟成バスクチーズケーキ」「急速冷凍した非熟成のバスクチーズケーキ」「緩慢冷凍した熟成バスクチーズケーキ」「冷蔵した熟成バスクチーズケーキ」の4種類を食べ比べます。

通常焼き上がった後は急速冷凍するのですが、味わいの違いを比べるため特別に緩慢冷凍したものと冷蔵したものを用意していただきました。

まずは「急速冷凍した熟成バスチー」と「急速冷凍した非熟成」を比べます。

これが熟成したもの


これが非熟成です。

同じ温度同じ焼き時間ですが焼き色が全然違います。おもしれぇバスチ。

さてさて、味の方はどうなんだぁ〜い。

熟成は甘く濃厚。力強い旨味を感じるうまピヨチーズケーキ。イメージするチーズケーキをギュッと濃くしたような味わいです。うめぇ。うめぇよ。
非熟成はチーズの香りや酸味を感じやすくフレッシュな印象。熟成よりなめらかさがあります。これまたうまピヨでございます。
例えるなら熟成が「愛」、非熟成が「恋」です。
つまりはどちらもうまピヨでどちらも素晴らしい。みんな違ってみんないい。金子みすゞにも是非食べていただきたい。ちなみに俺は熟成の方が好き。

続きまして緩慢冷凍した熟成を食べていきましょう。

伝わりづらいかもしれませんが、他のものに比べて断面が滑らかではありません。かつ若干離水しています。やはり緩慢冷凍は凍るのに時間がかかっている分、氷の結晶が大きくなって離水しやすくなってしまいます。
冷凍していたお肉を解凍するとドリップが出てくるのと同じことが起きているわけです。

とはいえ味は美味しいです笑
でも急速冷凍したものに比べると食感が悪くなっています。やはり急速冷凍は正義。いつか初恋も急速冷凍できるようになればいいですね。

最後は冷凍ではなく冷蔵した熟成

断面から伝わる通りなめらかさが違います。こいつが1番なめらかです。いわゆるバスクチーズケーキと聞いてイメージする通りのバスクチーズケーキです。しかし急速冷凍の方が粘性があり舌に残る時間が長いためか、濃厚さでは急速冷凍に軍配が上がります。
まぁ結局うまピヨ!!!!もうどれが1番美味しいと感じるかは好みでしかない!


というわけでカシオリさんでは現在「熟成バスクチーズケーキ」と「熟成と非熟成の食べ比べセット」を販売しています。オススメは食べ比べセットです。想像以上に味わいが違って驚くと思います。熟成の凄さを体験したい方は食べ比べセットを選んでみてください。

購入は以下のリンクからどうぞ!

ちなみに工房での直接販売やウーバーもされています。数に限りがあるので、もし購入したい場合は1週間前までに電話することをおすすめします。
冷蔵の熟成バスクチーズケーキは工房での販売で水木金曜限定になります。

定休日:土日
住所:〒144-0045 東京都大田区南六郷2丁目5−10 サンアイランド 101-A
雑色駅から徒歩8分
電話番号:03-6417-9636

余談

カシオリさんはクリームチーズを熟成機で熟成させて、そのクリームチーズで作った生地を更に熟成させるという2段熟成を行なっています。
カシオリさんのバスチーの美味しさの根幹を支える熟成機。そいつをお願いして見せていただきました。

はぇ〜、これが熟成機か〜とアホヅラで眺めていると、熟成機の中に気になるものを見つけました。

それは誰もが見たことがあるサントリーの天然水でした。
ちなみにマヨネーズも入っていましたが、マヨネーズはなんとなく熟成機に入れておいたら美味しくなりそうなのは分かります。
しかし水は熟成されるのか?美味しくなるのか?どうなんだ?

それが気になりすぎてもはや熟成機の説明は全く頭に入ってきません。

僕は田和さんに聞きました。

「あの、水が入っているんですが、、、」

「水も入れておくと味が変わるんですよ。なめらかになります笑」

ほんまですか!!!??????


熟成された水、、、、そんな代物をお目にかかれる機会なんてそうそうねぇ、、!!!



「あの、この水持って帰ってもいいですか?」




コノミズモッテカエッテモイイデスカ???????


俺はケーキの取材に来て何を口走っているのだろう。スイーツライターは数多いれど、取材先で水をよこせと言ったのは流石に俺が初だろう。というか初であってほしい。初じゃなければスイーツライターの民度は崩壊している。スイーツライターと盗賊がイコールで結ばれる日も遠くはないだろう。

我ながら頭が沸いているお願いでしたが、田和さんと古川さんは快諾してくださいました。

「同じサントリーの天然水なんですけど、南アルプスと奥大山って書いてある2種類があるんですよ」
「奥大山の方が熟成期間長いです。分かりやすくシール貼っておきますね」

なんと南アルプスと大奥山の2種類、合計4リットルの水をいただけることになりました。持って帰るための袋までいただいてありがたい限りです。


ということで!!!!!!
熟成水の実飲じゃ〜〜〜〜〜!!!!!!!!!

まずは近所の自販機で買ってきた天然水南アルプスを飲みます。

うん。水です。それ以上でもそれ以下でもない。
純然たる水。南アルプスかどうかなんて分かりようもないほどに飲み慣れた水。水だな〜という感想しか抱けないほどに水。

続いて熟成水南アルプスを飲んでみる。

うおおおおおお!!!!なんだか口当たりがなめらか!!!!!(な気がする)
このなめらかさはもはや飲むというより染み込むという表現の方が正しい!!!!(と思う)

続いて熟成水大奥山。
うおおおおお!!!!!こっちも口当たりがなめらか!!!!!!(当社比)
熟成の波動を感じる!!!!(個人の見解です)

ちなみに南アルプスと大奥山の違いは全く分からん!!!!!!!(分からん)

結論!!!!
水も熟成したら口当たりがなめらかになる!!!!(感じ方には個人差があり効果を保証するものではありません)


マヨネーズも貰えばよかった。



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