同人誌タイトルロゴメイキング
※1年くらい寝かせていた記事を書き上げたので、後半の方だいぶ記憶頼みで書いています
どうも、薄い本を作るオタクです。
装丁フェチなので、いつも装丁について語る記事をSmarksさんに書くのですが、この本は印刷所さんのフェアに全のっかりしたのであまり語ることがない。
この仕様でどうしても出したくて一冊分書き下ろしました。最高。
※リンクは昨年の情報ですが、同名のフェアを今年も開催されています
で、装丁仕様まるなげな分、普段おざなりなタイトルロゴをがんばったのでまとめてみます。メイキングというより、考え方や細かい作業工程について詳しく書くよ。
自分が作る時にこういう記事ないかと探したんですが、全然見つけ出せなかったんですよね。読みたいものはまず自分で書けってえらいひとがゆってた。
商品ロゴや企業ロゴの記事だと必ずブランディングの要素が入ってくるんですが、素人が二次創作同人誌のタイトルロゴを作るだけなので、そういうのは一切ありません。デザイン理論とかワークフローとかもなく、心の赴くまま時間の許す限りゆる~く楽し~く趣味の創作をしました。
暇な時にのんびり読んでもらえると幸いです。
アイデア出し
タイトル決め
ロゴを作りやすいタイトルをつけるところからロゴ作成に含めてしまいます。
フェアに沿って星をテーマにした短編集にすることは事前に決めていたので、フェア名と丸被りした『スターゲイザー』に決定。まあこのフェアに一目惚れして本を作ることを決めたので致し方なし。
しかし
スターゲイザーって名前の同人誌、星の数ほどありそうですよね
星だけに(爆笑)
と思ったので(あとロゴを作るときにバランスを取りやすいので)英語の副題をつけることにします。
後述のフォントを使うことを決めていたのと、プラネタリウムを舞台にした話のアイデアがすでにあったので、『BANKER in PLANETARIUM』に決定。
ラフ
マジでラフ。手書きで何となく形を決めます。
最初からデジタルで始めてしまうと細かいところにとらわれがちなので、アナログで適当に全体のイメージを具現化します。
・プラネタリウムといえば丸屋根 → 円弧
・星の光 → 放射状のあしらい
この辺の要素を入れ込みつつ、何パターンか考えてみます。確かもう一枚くらいラフの紙があったような気がするけどどっか行きました。
ラフの段階でフォントの方向性も決めてしまいます(「刻明朝?」とか「明朝体細め+プラネタリウム」とかメモ書きしてあるのがそう)。
フォント探し
フリーフォントとGoogleFontsとAdobeFontsをさまよって書体見本を漁ります。
普段はわりと太めで視認性の高い、デザイン書体やゴシック系フォントを使うことが多いです。しかし今回、
プラネタリウムというフォントをどうしても使いたい
フリーフォントまとめサイトで一目惚れして以来一年くらい、星に関連する話書く時は絶対に使いたいと思いを温めていたので(執念深いオタク)
カタカナ・欧文フォントなので今回のタイトルは全部出せるんですが、個人的にはロゴでメインタイトルを張るにはちょっと細い気がする。でも太くするとせっかくの雰囲気を台無しにしてしまうので、別のものを探します。
話の中身はシリアスが強いので明朝系がいいかな(安直)
ただ、前述の通り細くはしたくない、となると小説本文向けと言われる書体はだいたい候補から外れます。
プラネタリウムとのバランスを考えると、柔らかすぎるのも合わない。そうなると墨溜り系の明朝体もなし。
そういう時にお世話になるのが刻明朝です。
シンプルだけど硬質で上品な雰囲気が欲しい時によく使います。やわらかいフォントにピンポイントで混植したりすると、キラキラマーク10個散らしたくらいの装飾力がある(個人の感想です)
フォントが決まったところでデジタル作業に移行します。
文字を置く
まずはベタ打ち
背景色・ガイドとは別のレイヤーを作業用に新しく作って文字を置きます。あとでアウトライン化するので、文字は文字で一つのレイヤーにまとめておくと楽かもしれない。
打ち込んで気づいたんですが、プラネタリウムの欧文書体、大文字しかないんですね。最初に確認しとけよ。
前置詞を大文字で書くのは美学に反する&今回のイメージに合わないので、小文字があるフォントを混植することにします。
フォント探し その2~混植のために~
今回の混植はなるべく違和感なくしたい(あえて全然違うフォントを突っ込んで遊びを入れたい時もある)ので、まずは元フォントをよく観察して特徴をつかみます。装飾部分ではなく、書体の骨格に注目しましょう。
字幅はかなり広め(I、J以外はほぼ等幅)
字幅に対して線は細い
コントラストは弱いが、端や角に滑らかなセリフがある
……いや~……瀟洒な中にも親しみやすいカジュアルさがあり、細部には慎ましい色気が宿っている……いいフォントだ……(変態の人?)
抽出した特徴から、セリフ体の中でもグリフィック系の書体が近そう、ということで適当にフィルターかけて探します。
余談。日本語フォントはフリーフォントまとめサイトを巡回しますが、欧文はマジで数が膨大すぎるのでデフォで入ってるOSフォントかAdobeFontsで探しがちですね……よっぽど特殊なデザイン書体じゃない限り、だいたい類似したのが見つかるし。あと英語がほとんど読めないので、権利関係のことを考えると下手に海外サイト踏むのが怖い。自衛だいじ。
てなわけで、君に決めた!
微調整はあとでするにしても、雰囲気はなかなかいい感じではないでしょうか。
レイアウト調整
ラフで決めた構図に合わせて文字を配置します。表紙に対していい感じのサイズに調整した正円のガイドを置いておきます。
刻明朝のカナは横幅が狭いのが特徴ですが、プラネタリウムとのバランスを考えて等幅っぽくなるように比率を調整します。ついでにカーニングもいじっておく。
副題はパス上文字ツールで正円に乗せます。パス上文字ツールを適用すると元の図形はオブジェクトとして扱えなくなるので、事前に同じ位置にオブジェクトをペーストして非表示にしておくと何かあった時に便利。
あしらいを作る
メインタイトルとパス上文字のバランスを考えてレイアウトやサイズ調整をしつつ、あしらいも作図していきます。
左下
ガイドをもとに同心円を作る(拡大縮小・コピー)
→文字とのバランスを見ながら線の太さを決める
→適当にパスを切ってなんかいい感じに
→そのままだと線感が強いので(?)、何本か破線にする
すべてをフィーリングでやっている
右上
直線ツールを回転・コピーして作ったものを塗りと線の分割でパス化
→パスファインダーで合成・抜きをかける
イラレで一番使ってるツールはパスファインダーかもしれん
加工
もうちょっとニュアンスが欲しいので、全体にラフ加工をかけます。
塗りと線を分割してから加工しないとえらいことになるのを忘れがち。
調整
ラフ加工をかけたらなんか右上が寂しくなったので、力業で内側を足しました。
後からこういうことをやり始めるので、基本的に作ったオブジェクトは常にスペアを複数作っています。
文字加工
各書体をそれぞれ加工して、全体の雰囲気をプラネタリウムに寄せていきます。テーマは瀟洒。
まずは全ての文字をコピーしてアウトライン化してから(重要)、作業に入ります。
Maiandra GD(in)
プラネタリウムと並べるとやや太いので、文字を細らせます。
パスのオフセットで適当に数字を入れて様子を見ながら調整。瀟洒。
プラネタリウム(BANKER、PLANETARIUM)
TとIにはロケットがつきますが、今回は方向性に合わないので消します。
アウトライン化だけだと、一文字に付き一つの複合パスになっていて編集ができないので、複合パスを解除してから触ります。
刻明朝(スターゲイザー)
プラネタリウムとの親和性を増すために、いろいろ加工していきます
①シュンッとしたやつを足す
ペンツールで描いて塗りと線を分割したものを、なんとなく元のフォントの法則を参照しながら置きます。
厳密に元の字と同じではなく、今回使う字のバランスの方を重視しています。瀟洒。
②十字の光マークを置く
プラネタリウムからコピーしてきてサイズを調整します。
縦横比を変えると雰囲気も変わってしまうので保持したまま。
・「ザ」の縦棒は光マークの幅だけ削って置き換えます。
・「タ」は一画分まるっと光マークに置き換えます。
しかしこの置き換えってロゴ作成の常套手段ですけど、めちゃめちゃセンスを問われて苦手なんですよね……やりすぎと地味すぎの按配が本当に難しい。今回は上手くいった。
濁点にも光マークで抜きをかけて、あしらいを文字と合成したら完成です。
仕上げ
加工が全部終わってから、もう一度引きで全体を見て配置を微調整します。
こだわりすぎると泥沼にはまるので適当に自分を戒めながら。
正円だと表紙全体に対するおさまりが悪かったので、上部のあしらいはやや楕円につぶしてます。
右上の放射状の下部分がちょっと寂しかったので、プラネタリウムから抽出してきた光マークを飾りました。
完成!やった~!
これでだいたい作業期間は二週間くらいですかね(間に表紙の他の部分の作成とか本文組版とかを挟んでますが)。
記事用にさらっと書いてますが、実際の作業は全然用意周到でも即断即決でもなくて、
混植用のフォント探しは何種類か候補をダウンロードしてきて実際に打ってみて見比べたり、あしらいもあのラフから悩みながら作ってるので二転三転してます。
まあでも色々見ながら試しながら作って、イイ感じのロゴができるのはやっぱり楽しいもんです。
おわり
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