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NHK『古代史ミステリー』を観た

前後編2週にわたる構成。先に『日本人の起源 最新の古人骨DNAが示唆すること』という拙文を上げていたので must see だったが、予約を忘れて前編は後半しか観ていない。しかし、ここでの論旨はほぼ後編に関してなのでこのまま続ける。いくつか疑問があったので列記する。

◯上記拙文はNHK-BS1の『Frontiers』を観ての感想だった。今回は『古代史ミステリー』。ともに空白の古墳時代、空白の4世紀を扱いながら、なぜ前者に対する言及・参照がないのか不思議だった。同じ社内ではないか、番組制作のタイミング等の問題があるのかもしれないが残念なことである。

◯ヤマト王権の伸張拡大を前方後円墳の広がり、馬や鉄器の導入に関連づけるのは分かるが、古人骨DNAの分析が示唆する3、4世紀に起きたと思われる大規模な渡来人の流入同化に触れないのは片手落ちである。その解明いかんによっては卑弥呼・邪馬台国とヤマト王権の関係は連続よりも断絶の相が現れるかもしれない。古代史ミステリーといえば卑弥呼・邪馬台国問題と日本人は思っているふしがあるが、より重要で本質的な謎があると『Frontiers』は示していたような気がする。

◯朝鮮半島でも前方後円墳の発見が続いているとの言及があったが、日本のそれとの先後関係に言及がなかった気がするがなぜか(たんに聞き逃し)? 。

〇5世紀の倭の五王に対していまだに天皇呼称をかぶせて解説するのは何に対する忖度かとため息が出る。天皇呼称は天武天皇に始まることは古代史の常識であろうに。

〇富雄丸山古墳や吉野ケ里遺跡での新発見にスポットを当てて、「ワァ、スゴイ!」と言っているだけではアイドルに群がるJKの感性並みで実に寒々しい。あれで驚くなら、百舌鳥・古市古墳群など、「陵墓参考地」などという非学問的レッテルに阻まれて不可触を強いられている主要古墳群には何が埋まっているか、と想像べきだろう! 先稿では古代史学者や考古学者の弱腰を責めたが、NHKこそ発掘解禁へのムーブメントを起こす起点になってほしいものである。蒙を啓くというか、反主知的な通念を打開する、それこそが公共放送の使命ではないか。(子供だましの再現ドラマにかまけている場合ではない。)

〇古墳の大宗は前方後円墳だからそれを強調するのは分かるが、他形古墳の分布から渡来人流入同化過程の解明につながるかもしれない。たとえば先稿で触れたが、方形墳の一種、山陰から北陸にかけてのみ見られる四隅突出型方形墳の解明はいわゆる出雲勢力の動態・生滅へのヒントになるかもしれない。

〇蛇足として長年あたためてきた前方後円墳にかんする疑問をひとつ。この古墳をイラストや写真で紹介する際、決まって後円部を北もしくは上部にレイアウトするのはなぜか?? 
あたかも「前円後方墳」であるかのように!

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