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Amazonペーパーバックの印刷品質 ~booknextと比較。肌の色、校正刷りの罠~

不住水まうすです。
同じ本を、Amazonペーパーバックとbooknextの両方で作ったため、どちらもオンデマンド印刷ということで、比較してみました。
※「booknext(ブックネクスト)」は印刷会社です((株)栄光のブランド名です)。

booknextを選んだ理由は、公式HPで「オンデマンド印刷の品質が、オフセット印刷に限りなく近づいています」と書かれており、高品質を謳っているからです。

以前書いた記事↓の続編で、今回は「肌の色に違いが出そうな表紙」の比較です。

比較に使用したのは、
booknextは2022年9月に注文した本、
Amazonペーパーバック(完成本)は2023年2月に注文した本です。


・Amazonペーパーバックとbooknextの印刷品質の比較

元データ↑
Amazonペーパーバックとbooknextの比較 (どの写真もクリックで拡大。ピンチ可能)

※画像の色合いはディスプレイによって見え方が変わる場合があります。

比較したのは左から、以下の4冊です。
①Amazonペーパーバック校正刷り
②Amazonペーパーバック(黄色寄り)
③Amazonペーパーバック(ピンク寄り)
④booknext
右にいくほど綺麗、という並べ方をしています。
肉眼で実物を見ると、「④booknext」の肌の色がピンクが強く、色気があって綺麗です。
ただ「③Amazonペーパーバック(ピンク寄り)」の肌の色もかなり綺麗です。

Amazonペーパーバックは肌が黄色く印刷されるのではと思っていましたが、そんなことはなく、
booknextの方がよりピンクで色気があるものの、③もいい感じの肌の色になっていて、もし比較対象がなければ感動レベルの綺麗さでした。

ところで②と③の違いは何かと言うと、
実はAmazonペーパーバックを数日後に、もう1冊注文したのです。
それで届いたのが「②Amazonペーパーバック(黄色寄り)」でした。

あー……。
肌、少し黄色くなりましたねー……。

私個人の感覚で言うと、
③なら、booknextと遜色がないぐらいの綺麗さ(肌の色に満足できる)。
②なら、booknextの方がはっきりと上(肌の色に色気が足りない)。
という感じです。(ただ②でも、比較対象がなければ、不満は感じなかったと思います)

この本だけでなく、以前の記事で紹介した「ポチ拾いました」も2冊入手したのですが、1冊目より2冊目の方が印刷品質は下でした。
要するに、Amazonペーパーバックは「印刷品質の個体差がまぁまぁある」ということです。

なので、私はAmazonペーパーバックを作って自分用に購入する場合、表紙が「もうちょっと…!」という品質だったら、駄目元でもう1冊買おうと思っています。
(なお同時に複数冊購入した場合、印刷品質に個体差が出るのかどうかは、試したことがないのでわかりません)

ちなみにbooknextの本は、30部注文しましたが、印刷品質に個体差はありませんでした。

・Amazonペーパーバックの校正刷りと完成本は印刷品質が明らかに違う

そして左端の「①Amazonペーパーバックの校正刷り」についてですが、全体的に色がくすんでいて、透明感がありません。

元データ↑
Amazonペーパーバックの裏表紙の比較(左が校正刷り、右が完成本)

裏表紙の方がよりわかりやすい差が出たので掲載します。
左の校正刷りは明らかに色がくすんでいます。
Amazonペーパーバックの「校正刷り」と「完成本」は印刷品質が違う、という事実があるかどうかは分からないのですが、自分は違うのではないかと思っています。
これ、「校正刷りを注文して発色の悪さにショックを受ける」こともありそうなので、ご注意ください。それは罠です。

ちなみに写真の通り、Amazonペーパーバックは裏表紙の左下には、自動的にバーコードが印字されます。

他、Amazonペーパーバックとbooknextの違いを箇条書きで書きます。

・booknextの方が断裁面が綺麗

左2冊がbooknextで、右2冊がAmazonペーパーバック

どの画像も、左2冊がbooknextで、右2冊がAmazonペーパーバックです。
断裁面は、booknextの方が色が白く、小口・天・地のどこを指で触っても感触がすべらかです。
Amazonペーパーバックは、断裁面を指で触ると、小口はすべらかな傾向ですが、天と地はざらざらしている傾向があります(個体差はあります)。
明らかに凹凸がある(断裁面がまっすぐではない)本もあります。「①小口」の画像の右から2つ目の本の小口に凹凸があります。

・Amazonペーパーバックは地(下面)が斜めになっている

左2冊がbooknext、右2冊がAmazonペーパーバック(ブックエンドで立てらせた状態)

左2冊がbooknextで、右2冊がAmazonペーパーバックです。
①右から1冊目(大きい方)が縦210㎜で、
②右から2冊目(小さい方)が縦209㎜なので、1㎜しか違わないはずなのに、
立てらせると2㎜ぐらい縦の長さに差があります。
これはなぜかと言うと、②の裏表紙の長さが208㎜だからです。
つまり、地(下面)が斜めに断裁されているのです。

Amazonペーパーバック(右2冊)は下面が斜めに断裁(拡大図)

これは偶然ではありません。

【a】Amazonペーパーバックの下面は斜めになっている傾向
下面の拡大図

手元にある、Amazonペーパーバックの校正刷り5冊と完成本3冊の計8冊を
ブックエンドで立てらせて並べた写真です。どの本も下面が斜め(裏表紙の方がわずかに短い)に断裁されている傾向があります。

一方、天(上面)はどの本も水平なので、
本の見栄えに関わる上面は綺麗に水平にして、一見気づかない下面は、少し斜めでもよい、という仕様なのではないかと推測しています。

参考までに、booknextの本を8冊並べてブックエンドで立てらせた写真です。

【b】booknextの本は下面が水平

booknextの本は、上面も下面も水平であり、本のサイズにほとんど個体差もないことがわかります。

・Amazonペーパーバックは縦のサイズにバラつきがある

この本の判型は「148㎜×210㎜(A5)」ですが、
上の「【a】Amazonペーパーバックの下面は斜めになっている傾向」の
校正刷り5冊と完成本3冊の計8冊を調べたところ、
左から(Amazonペーパーバック)
148㎜、211㎜、
149㎜、210㎜、
148㎜、210㎜、
148㎜、210㎜、
148㎜、210㎜、
148㎜、210㎜、
149㎜、209㎜(裏表紙208㎜)、
149㎜、210㎜
でした。(1㎜未満の誤差はあります)

一方、上の「【b】booknextの本は下面が水平」の8冊を調べたところ、
左から(booknext)
148㎜、209㎜
148㎜、209㎜
148㎜、209㎜
148㎜、209㎜
149㎜、209.5㎜
149㎜、210㎜
149㎜、209.5㎜
149㎜、209.5㎜
でした。(1㎜未満の誤差はあります)

Amazonペーパーバックは、横148~149㎜、縦208~211㎜。
booknextは、横148~149㎜、縦209~210㎜。
Amazonペーパーバックの縦の長さは208~211㎜と、3㎜の差があり、ややバラつきがあります。

・料金の違いについて

 料金は、2023年8月現在の料金で書きます。
 この本のbooknextの料金は、「シンプルセット9営業日 オンデマンド印刷30部(A5 156ページ)」で23,520円です。
 そしてAmazonペーパーバックの料金は、「著者用コピー」で注文すると、A5 156ページなら印刷コスト508円+送料410円で、918円です。
 同じ条件にするため、Amazonペーパーバックも30部注文したとすれば、印刷コスト508円×30冊+送料1360円=16,600円です。

 1冊あたりで計算すると、
 booknextは、1冊784円。
 Amazonペーパーバックは、1冊553円になり、booknextより231円安いです。
 
 1冊あたりの原価は、部数によって変わります。
 もし60部注文すれば、
 booknextは、1冊512円。
 Amazonペーパーバックは、1冊541円(送料の影響で553円から若干変化)になり、Amazonペーパーバックの方が高くなります。

 しかしこれは理論上の話です。
 Amazonペーパーバックは、部数に関係なく○ページの本なら1冊○円と原価が決まるという少部数に有利なサービスであり、
 60部も注文するなら、(印刷会社を使ったことがある人なら)Amazonペーパーバックは普通は使いません。
 それに、Amazonペーパーバックは「著者用コピー」で本を調達してどこかで売るのではなく、Amazon上で直接販売するのが一般的な使い方です。

 というわけで、同じ条件で比較するというのがそもそも現実的ではありませんが、
 本を売るための初期費用という観点で言うと、
 booknextは(まず本を作らないといけないので)23,520円。
 Amazonペーパーバックは、0円となります。(本を売るために、本の在庫を持つ必要がないため)
 いや一度は完成本を自分の目で確認するだろうということでしたら、Amazonペーパーバックの初期費用は、918円です。これはbooknextの4%の値段となります。

・まとめ

私はこの記事で、どちらのサービスがいい、と言うつもりはありません。どちらも用途が違うからです。
(この本の場合、booknextはサイン本フェアに出す本として使い、AmazonペーパーバックはAmazonで常時売る本として使っています)

なのでこの記事では、本の品質という観点で比較しました。

一番気になる「表紙の印刷品質」は、やはりbooknextの方が上でした。
しかし、私が当初思っていた「booknextのオンデマンド印刷の方が圧倒的に綺麗に違いない」というのは、少し違っていました。
そうではなく、「Amazonペーパーバックが全然問題ないレベルだった」という方が近いです。
この本のケースで言うなら、「③Amazonペーパーバック(ピンク寄り)」を購入ガチャで引けるなら、感動レベルの本が届くことさえあります。
少部数のオンデマンド印刷において、
改めてAmazonペーパーバックは脅威的なサービスだと思いました。

また、それ以外の隠れた品質についてもいろいろ気づきました。
私も、Amazonペーパーバックの下面が斜めになっている、というのは、この記事を書いている最中に気づきました。
上面が水平であるため、気づかなかったです。
そうだよな、本の下面が水平かどうかなんて、気にしたこともなかったな、と思いました。

だからと言って、「Amazonペーパーバックは本の品質が低い」とは思わないです。
普通の人は、Amazonペーパーバックで同じ本は1冊しか買いません。
なので、サイズが均一でないとか、断裁面に凹凸があるとか、下面が水平でないとか、表紙の印刷品質に個体差があるなんてまず気づかないですし、比較対象がなければ特に不満も感じないクオリティに充分達していると思います。

こんなことに気づくのは、Amazonペーパーバックで同じ本を2冊買ったり、同じ本をAmazonペーパーバックと印刷会社の両方で作ったりする特殊な人だけです。

私が言いたかったのは、
サイズが均一であるとか、断裁面が綺麗とか、下面が水平であるとか、
普段「本とはそういうものだ」と当たり前に思っていたクオリティは、なんらかの技術がなければできないことであり、その品質をbooknextは当たり前のように実現していた、ということです。

・比較した本の紹介

 比較した本のAmazonペーパーバックはこちらです(BL小説です)。

 アンリミで読むのがお得だと思いますが、紙の本にご興味がある方は試し読み等、見てみてください……!


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