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少年と突発的純心ツアー

マンガにあるような、
子どものする「あるある」にほっこりする。
独身の自分には縁のない世界だと思っていた。

しかし、「あるあるほっこり」が巡ってきた。

先日岐阜に住む友人のお宅を訪ねた。
その場に集まったのは
大人7人とキッズ2人。
小学6年生の女の子と、小学4年生の少年。
ママと一緒に、3人で車に乗って岐阜に来た。

話のメインは、少年Aくん。
初対面にもビビらない、コミュ力とわんぱくさ。
サッカーをやっているという。
自分も小学生の頃、サッカーをしていた。
ちょっとばかり似た境遇。
自分には姉はいなかったが。
なるほど、シンパシーを感じる。

「腕相撲しようよ」
この何の気無しの提案で、
突然の純心回帰ツアーが始まった。

腕相撲。
叩き潰すべきか、負けるべきか。
迷ったが、負けたーという演技的なことをしている自分を少し俯瞰で見る。
大人はこういう気遣いをしていたのかと子どもの頃を思い出したりした。

そのあと、
指スマ、しりとり、ワードウルフと、
昔ながらの遊びから、最近の遊びまで。
まずは序盤の深め合おうタイムを満喫する。
いいスタート。

小休憩。体力温存タイム。
自分以外の大人達がボードゲームで遊んでもらう。
今思うと、このボードゲームさえ参加していたら、最後に息切れしただろう。

夕方に差し掛かり、温泉へ向かう。
スーパー銭湯と温泉をガッチャンコしたような温泉施設。

Aくんと男湯へ。
温泉もいくつか行ったことがあるようで、
小学4年であれば一人で入れるだろうと思ったが、
「温泉ぜんぶ入ろうよ」と言う。
泡風呂、露天風呂、釜風呂、いろいろな湯を連れ立って一緒に入る。
ピュアな好奇心をぶつけてくる。
輝いてる。

一緒に狭い釜風呂に入る。
初めて子ども二人で同じ湯船に浸かった。

その時、
「見て、入れ墨!カッケー!うわ、鯉も入ってる!」
「ちょ、ちょっと静かにしようか」
マンガかよ。
刺青の入った人に向かって、騒ぐ子どもを制止する大人の図。
マンガを体験している。


湯船からお湯が流れでていく排水口を、
小石で堰き止めたりしている。
お父さんの話をする。
「パパはなかなか会えないんだ」
仕事の都合で1日2日家に帰ってこないことがあるそうだ。
別に寂しくないし、と強がっているように見えた。
少年期に感じる、父への感情。寂しさ。
心を掴まれる。


そろそろ温泉を出る。
「見て見て、これママが染めたやつ」
持っていた手拭いは、ママが染めて作ったものだった。
母への愛情をストレートに見せつけてきた。
また心を掴まれる。


「頭乾かす?」
「いい、勝手に乾くから」
と言って、先に脱衣所を出るAくん。

すると、戻ってきた。
「なんか笑われた」
「え、誰に?」
脱衣所を出ると、中学1年生ぐらいの男子3-4人。
意地悪をしたようには見えなかった。
ふと笑われたように感じただけか。
少しいじけた表情を見せる。
しかし、その顔も最高にイケてる。
もう思春期か。

わんぱくさ、いじらしさ、寂しさ、無垢さ、愛情。
感情どんだけくれんの?
温泉のワンタイムで、
体のみならず、心まで温めてくる。


男湯を出て、ママと姉、他大人たちを待つ。

「喉乾いたー」と言うAくん。
選択肢が4つ、頭に浮かんだ。

A.ママが来るまで我慢しようね。
B.冷たい水出るやつ(給水機)さがそっか!
C.ママに内緒でジュースを買う
D.ふ〜ん……

Dはできない。
イベントとして盛り上がりそうなのはCだ。
ファイナルアンサーC。

「やったー、ママ来る前に飲も」
牛乳を買い、早飲みする。
マンガのようなやり取りを演出してしまった。
楽しい。


牛乳を飲みながら歩いていると、靴下が落ちていた。
靴下を拾い、近くの受付へ。
「落とし物なんですけど」と渡す。
「あ、俺のだ」
「おいww」
だから絵に描いたようなコントやるんじゃねえって。
完璧に心を掴まれる。

ラストイベント。
この温泉施設で晩御飯。
「家族用」と書かれた札のあるテーブル席。
今日でなければ座れない。
未来の自分の家族をシミュレーションできるってか。

テーブル脇にあるアンケート用紙を見つけ、
「ねえ名前書いてよ」とか
「食べたものの欄に、自分の名前書いてる!笑」とか
「ソフトクリームたべたーい」とかAくん。
「ここで買うより、コンビニで買った方がいいよ」とママとやり取り。
「みんなに名前つけよう、じゃあねー・・」

会話すべてが平和だ。
久しく無かった、なんてことない、このやり取り。
もしかしたら、遠い過去に経験したであろう、言ったであろう会話。
親戚の集まりか、家族で外食した時か、ちょっと遠出した先の夕飯か。
どこかである会話劇。
愛おしく何気ない時間。
満腹感との相乗効果。満足感しかない。

充実した時間も終わる。
この温泉施設でお別れだ。名残惜しい。


「ねえ、これあげる」とAくん。

お菓子をくれた。
ナイショで買ったはずの牛乳のお礼と言う。
ママに、買ってもらったことを言ったのだ。
なんて正直で誠実。

選択肢Cには、このオチだったのか。
すべて思い出にしてくるなオイ。

どこの誰だかわからない自分にまで、
ストレートに優しさをくれる。
感傷的になってしまう、ヤバい。


「バイバーイ!バイバーイ!」
車に乗っても言い続けていた。


もうお腹いっぱいだ。

子どもの遊び相手をしたというより、
大人の自分が、溢れるばかりのたくさんの感情を貰い、遊んでもらい、満たしてもらった。
賑やかで、楽しい一日だった。


楽しくも苦労する親御さん達を羨ましく、
改めて尊敬した。

そして、楽しい旅行にしてくれた皆さん、
ありがとう。