ジン太

SFとゲイ小説。ぼちぼちと書きます。藤丸心太名義でKindleでも出してます。好きな作…

ジン太

SFとゲイ小説。ぼちぼちと書きます。藤丸心太名義でKindleでも出してます。好きな作家は、パトリック・ネス、ケリー・リンク、飛浩隆、トーベ・ヤンソン

最近の記事

サニー/レイニー/レインボー #4/6 Wish you were here.

●Green  能登が教室に入ると、数人の生徒が教科書を開いて勉強していた。 「おはよう……」 「おはよう! あれ、元気ないね。寝不足?」天池が心配そうに訊く。 「ん、えっと……。ちょっと夜更かししてて」能登は腫れた目を伏せた。 「勉強?」 「ん、ええっと、まあそんなところ」 「あんまり無理すんなよ」  大丈夫ー、と軽く応えて、能登は自分の席についた。ふうと一息つく。  お母さんも、いまごろ職場だろうか。  結局、朝食のときもほとん

    • サニー/レイニー/レインボー #3/6 Mirror on the wall, who is me ?

       ●Yellow  翌朝。といっても、もう日も高く昇った午前十時ごろ。地面を焦がす夏の太陽と、湿気でむせ返る空気。能登は汗まみれで自転車を漕いでいた。  土曜日なので、道路はそれほど混んでいない。けれど、公園に近づくと、休日を楽しむ人たちの賑やかな声が聞こえてきた。公園の門をくぐり、公園の中を散歩する家族連れや、元気に駆け回る子どもたちの間を通り抜けて、さらに奥へと進む。小さな白い建物が見えてきた。児童館だ。その玄関の前に、見覚えのある顔があった。 「おうー

      • サニー/レイニー/レインボー #2/6 I’ve got to keep lying

        ●orange  いつもより早い学校。教室に入る前に、能登は大きく深呼吸をした。よし、と小さく気合いを入れて扉に手をかけた。 「みんな、おはよう!」  しかし返事はない。まだ教室には誰もいなかった。 「……一番乗りか」  教室を端から端まで見渡した。誰もいない教室は寂しく見える。  自分の机に鞄を置くと、窓を開けた。朝の風はまだ熱を持っていないが、湿気があり、日差しはすでに肌を焦がす強さだ。今日も暑くなるな。能登はそう思った。  金属の澄んだ音が聞こえてくる。野

        • サニー/レイニー/レインボー #1/6 I want to make friends with someone.

           ●Red  教室から見る空は、窓にはめ込まれた絵のように見えた。  もくもくと大きな白い雲が、青い空に浮かんでいる。夏の色だ。  いまは五時間目の数学の授業中だということを思い出して、能登は机に向き直った。ノートを開いて、シャーペンの芯をノック。ノートの上にペン先を置いた。そこで手が止まった。  能登はあたりを見回した。自習中で先生は不在だ。生徒たちはほとんどが勉強しているが、中にはサボっておしゃべりしているのもいる。  みんなは、それぞれにやることがある。勉強し

        サニー/レイニー/レインボー #4/6 Wish you were here.

        • サニー/レイニー/レインボー #3/6 Mirror on the wall, who is me ?

        • サニー/レイニー/レインボー #2/6 I’ve got to keep lying

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