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余談「冬の歌」

毎年、冬を迎える頃になると大学で教えている学生たちに課題の短編脚本を書くように指示を出す。
今年のお題は「20世紀の音楽を聞いた主人公になにか変化が訪れる」である。
音楽ネタなので先に歌詞を引用するのはなるべく禁止という形でそのまま歌詞をなぞるような物語はNGにしておいた。

現在、初稿作業に学生たちは取り掛かっており、それなりに苦労している。

20世紀の歌というと、現在55歳の自分にとって、その人生の半分ほどが20世紀でできており、多感な10代をその歌の中で過ごしてきた。
そして今は冬。

冬となると不思議と聞きたくなる歌がある。

SPEEDの「White Love」である。
むちゃくちゃSPEEDが好きだったかと言われるとそこまででもないのだが、当時のSPEEDはそのときにしかない表現力と儚さでとんでもない存在感を示しており、かなり印象的でこの「White Love」は一発で当時に自分は心を鷲掴みにしたのだった。
そしてこの曲を聞くと、自分が結婚して間もない2月くらいに、うちの奥さんが海外に旅行に行くのに成田まで車で送っていく車中でヘビロテで聞いていたアルバムの中にあって、あのときの京葉道路の朝の景色の中でこの曲というかアルバムを聞いていた思い出が色濃く思い出されるのである。


そして十代の頃、自分がよく聞いていた冬の歌がある。

大瀧詠一、EACH TIME(1984年盤)に収録されている「レイクサイドストーリー」である。
作詞は松本隆。
大瀧詠一のまどろみのような歌声で表現される儚い失恋ラブストーリーは、クリスマス感のあるアレンジでどこか爽やかにすら思えてしまう。
実はこの年、17歳の頃、痛い失恋をした思い出があり歌詞のひとつひとつが胸に突き刺さるわけで。同級生の女子たちに慰められるという……。
今はよき青春の1ページになってはいるけれど。


そして自分が中学の頃、同級生がたのきんトリオや松田聖子にハマっていた頃、自分はどこかそこに踏み込めず、姉の好きだったサザンオールスターズや、うちに転がっていたレコードの中にあったデヴィッド・ボウイを聞いていたわけで、洋楽への目覚めがちょうどこの頃でもあった。
そんなとき出会ったのがこの冬の歌。

Simon & Garfunkelの「A Hazy Shade of Winter」
邦題「冬の散歩道」である。
これはラジオから流れてきたのを偶然聞いて知った曲だった。
当時、自分の住んでいた場所は高圧線が上を通っているためなのか、茨城県ひたちなか市(当時は勝田市)の外れに家があったせいか、ニッポン放送は入らずオールナイトニッポンを聞くことはなかった。
よく入ったのはNHKラジオとTBSラジオと文化放送、そして茨城放送だった。
そのどこかからかかってきたのだと思う。
当時、我が家にはSimon & Garfunkel のアルバムは「Bridge Over Troubled Water(明日に架ける橋)」があるだけだった。この「A Hazy Shade of Winter」は収録されておらず、一度聞いただけで印象的だったことを覚えている。

そして最近になって気になる冬の歌が現れた。
iScreamの「ホワイト・ラブ」である。

奇しくもSPEEDの「White Love」と音は一緒。
一度聞いただけでがっつり鷲掴みされたのも一緒。
iScreamは個人的に推しているGirls²やLucky²と同じLDH系列のGirlsグループであり、本格的なボーカル系の三人組と勝手に思ってる。
素の感じだと普通の18歳くらいの子たちなのに、歌うとその表現力に驚かされる。
やべーのでてきたなぁ……と思ったくらいに。
(最初に鷲掴みにされたのは「Catwalk」だけれども)

冬の歌、語りだすとキリがないのでこの辺にしておくが、人生の途中途中の記憶の中に歌というものがあり、そこにはそのときの思い出が重なることがある。
そして歌との出会いとその世界から感じ取れる物語を学生たちがその発想力で描いてくれるとよいのだけれど……。

以上、今回の余談でした。短めですが。
次回をお楽しみに――。


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