日本舞踊『銀河鉄道999』千秋楽

20歳ぐらいの時に「これを日本舞踊にしてみたい」と思ったのは、松本零士先生の代表作「銀河鉄道999」の劇場版を観た時だった。
物語は「永遠の命」とは機械の体になり、不老不死こそが幸せだ。と生身の人間と機械化人間が主軸となり、主人公の星野鉄郎は銀河鉄道999に乗って旅をし、成長していく中で、限りある命の尊さを知り、人間と機械化人間の対立を止めるため戦う。そして目的を果たし新たな目的に向かい走って行く後ろ姿に、キャプテンハーロックが言った(私は心の声と思っているが)言葉に感銘を受けた。
「鉄郎、お前はお前の父によく似ている。鉄郎、たとえ父と志は違っても、それを乗り越えて若者が未来を作るのだ。親から子へ、子からまたその子へ血は流れ、永遠に続いていく。それが本当の永遠の命だと俺は信じる!」
純粋にかっこいと思ったし、私が日本舞踊家として進むための背中を押された気分でもあった。
日本舞踊でいえば流儀や目指すところが違っても、師匠や諸先生諸先輩から受け継いだ技や心を持ち、私たちが今という時代に輝かせ、更には次世代へと繋いでいく。
これは日本舞踊だけでなく古典芸能や、もっと言えば全ての方々にも共通することだと私は信じている
だからこそ、この作品を日本舞踊にしたい!と思っていた。

だか生活の中で薄れていった部分もあるが、個人の力でできる作品ではなく半ば諦めていたのかも知れない。。。
そして約30年経とうとした今!夢が叶った!
違う!今だからこそ見れる夢があることを知った!
未来座の制作を任命されたのだ。その時は作品は決まっていなかったが、心の中では決まっていた。
コロナ禍で公演自体が伸びたが、運の良いことにミュージカル版だったり、映画が4Kドルビーで上演されたり、コラボのビールが出たり、とにかく「銀河鉄道999」yearだ。
原作ファンの間でも「日本舞踊で⁈」とネットが騒ついていたw

未来座担当の先生方からご承認をいただき、東映アニメーション本社へ行きプレゼンをし、松本零士先生からもご承認をいただけた!
プレゼン用に作成した脚本に目を止めていただいた。
そして「このまま仁凰さんが脚本と台本をやりなさい」更には演出チームの一人として参加することのお許しをいただいた。
こんな大きな公演の脚本・台本を担当させていただけること、そして個人的には作品づくりはしていたが、演出の一人としての立ち位置は、嬉しさと怖さが入り乱れた。
だがこの作品のメッセージは絶対に伝えたい!
そのためには劇場版の二作をまとめ上げる必要があった。ここから長い旅が始まった。

脚本だけで17稿・・・台本にしてからも5稿・・・文才がない、まとめる力がないこともあるのだが、松本幸四郎理事や原作サイドと幾度もディスカッショをしていただき、なんとか台本になった。

振付には絶大なる信頼を寄せている市山松扇さん、一度は一緒に仕事をしてみたいと思っていた実力派の花柳源九郎さん、流儀も同じで何度も私の作品なども手伝ってくれている藤間眞白さんにお願いをした。

キャストは私がずっとリスペクトしまくっている先輩方と同輩にお願いした。
実は過去の創作舞踊劇場という公演で手塚治先生の「火の鳥」を日本舞踊で上演した。
私はあの公演を今でもリスペクトしている。
あの時に出演や振付してた先輩方にオファーした!舞踊家としてのスキルが高い先輩だ。この物語を成立するには必要不可欠だ!
日本舞踊では群舞も見どころなので、実力派中堅から若手で揃えた。
更には経験豊かな仲間や新人も多数出演してくれ物語を盛り上げてくれている。
自分自身、群舞からスタートしたので群舞にも思い入れはある。

群舞のクオリティが上がると、お役の出演者のクオリティも上がることを伝えた。
更には偉そうに「5年後10年後、この作品に出演したことを誇りに思えるようにします!」と言い自分を鼓舞した。

稽古はオンラインから始まり対面になったが、コロナ禍もあり稽古期間としては約3週間しかなかった。不安もあったが少しずつ加速した。

たくさん書くことはあるが、怖くても前に進むことは決めていたし、私が伝えたいことを振付の三人だけでなく、演者も案を出してくれた!
拙い私のせいであるが「この作品を良くしよう!」「仁凰が表現したいことは、こうすると成立するよ」と言われているようなものだったので、申し訳ない気持ちではあったが、実は楽しかたし勉強になった!
やはりリスペクトした方々は、すげーよ!

そして困難もあったが初日を迎えて、本日千秋楽だ!
毎公演ノートとペンを持ち、良かった点とダメ出しのために書きながら見ているが、今日の最後の公演は純粋に観たい。

50歳手前でこんな夢が見れて実現して、こんなに嬉しいことはない!

日本舞踊家の表現力や体現のスキル、ポテンシャルを堪能できる作品になった。
それは出演者だけでなく、舞台スタッフ、音楽チーム、衣裳、小道具、、、書いたらこれもキリがない。
評判はネット上で確認して欲しい。
原作がある作品は賛否が分かれるものだが、それも覚悟していた。
だが今のところ評判が良い!本当にみんなのおかげだ!

さぁ本日、千秋楽!
私を含め「この作品に出演したかったなぁ〜!」と言わせてくれることを信じて、日本舞踊『銀河鉄道999』が走り出します!

当日券も多少ですがご用意があります。
国立劇場という名の駅でお待ちしております!

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