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帰省したら飼っていたカメが弟よりデカくなっていた

帰省したら、飼っていたカメが弟よりデカくなっていた。

元々は、小学生のとき、父の実家がある田舎の夏祭りに出ていた屋台で、500円で買ってもらったカメだった。

小さなプールに10㎝にも満たないほどの小さなカメがたくさん入っていて、無口なおじさんが素手でヒョイと掴んだそれを紙皿みたいなものに入れて持ち帰った。

最初は昔カブトムシを飼っていた小さな虫かごに入れていたが、段々大きく育って、僕が高校生になる頃には専用の大きな水槽を買ってもらい、のんびりした顔でエサを食べていた。

後で聞くところによると、そんなふうにカメを売買することは法律的にグレーであるらしいが、そんなことを知らないイリーガルなミドリガメは家族の一員として台所の水槽で涼しそうに水に浸っていた。

*

それが、さらに数年経ち、実家を出た僕が久しぶりに帰ってくると、カメは17歳の弟よりも大きくなっていた。

僕が驚いてどういうことだと訊くと両親も弟も、
「毎日見ているからそんなに変わったかわからない」と言った。

変わったに決まっている。
僕が実家を出たときには、まだ両手で持ち上げられるほどのサイズで、それでも僕は「お前も大きくなったなあ」と声を掛けていたのだ。

カメは175cmはある弟の身長を悠々と越し、相変わらずのんびりした顔でこちらを見ていた。

*

夜眠っていると、台所の方からガタゴトと音がした。

昔から夜になるとカメは活発的に動き出して、水槽の中を動き回ってはガタゴトと騒がしかった。

そんな音を聴いて僕はとても懐かしい気分になった。

たばこを吸いたくなったので換気扇のある台所まで行くことにした。いつも父がたばこを吸っていた換気扇の下で自分もたばこを吸うようになったのだと思うと、改めて時の流れを感じる。

台所に出ると、僕は思わず声を漏らしそうになった。

カメがシコっていた。

180cmを越えるであろうカメが、こちらに背を向けて、一生懸命に緑色の陰茎を握っていた。

カメはこちらに気付いていないようで、
左手に持った分厚い本を睨むように見ている。

それは僕が子供の頃読んでいたポケモンの攻略本だった。

僕は恐怖でたばこなんてどうでもよくなって、すぐに寝室へ戻ると布団をかぶってガタガタ震えていた。

*

翌朝、あまり眠れなかった僕はインスタントコーヒーを飲もうと、お湯を沸かしに台所に向かった。

カメは苔色の甲羅に隠れてぐっすり眠っていた。

一瞬、昨晩見たものは夢だったのかと思いそうになったが、カメの近くに落ちていたポケモンの攻略本を見つけて一気に目が覚めた。

カメックスのページに、しっかり折り目が付けられているのを見て、僕は二度と実家に帰って来ないことを決めた。

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