【虎に翼・第12週感想】寅子よ。その信念に火は付いているか?

家庭裁判所の発足をやり遂げた寅子は最高裁判所家庭局事務官 兼 東京家庭裁判所判事補を任命される。
ついに裁判官(判事補)としての任を受けた寅子。敗戦からの立ち直りを目指す、日本社会の中で裁判官としてのキャリアを歩み始める。しかし、裁判官として法の番人として仕事にあたる前に、彼女は家庭局事務次官なのだ。戦争の1番の被害者は親や居場所を無くした子どもたちであり、彼らを守る家庭局として寅子は奔走しなければならなかった。悪事を働いてでも生きていくために必死の子どもたちが溢れている。寅子は1人1人と丁寧に接していくも全員と平等に触れ、助けてやれることは不可能だ。
その中で売り言葉に買い言葉で寅子が家に引き取ることになったのが道男だ。スリを行う少年たちのリーダーで問題が多く、引き受け先も見つからなかった道男だが猪爪家と触れ合う中で人のやさしさや自分が生きていても良い存在だということに気付かされ、巣立っていく。

道男にスポットを当てれば素敵な話しなのだが、寅と翼は寅子の物語だ。寅子はもっと周りの人をよく見て、大切にするべきだ。そして、自分がどれほど周りに甘えているか、助けられているかを考え直さないといけないだろう。

道男を救ったのはハルさんだ。寅子では無い。むしろ、ハルの今際の際の願いとして、今まで迷惑を掛けたお返しに道男を呼びに行った寅子は自分が道男に救われているのだ。

正義は誰もがそれぞれにもっている。寅子だって、道男だって、ハルさんだった、戦争をしていたアメリカだってそれぞれの正義を持っている。
それらは見方が違うだけでどれもが正義だ。

だけど正論は共通のはずだ。
盗みは駄目と言う正論は分かっても、生きるための正義として避けられないときもあった。嘘であっても、上司の正義のために嘘を通すしか無いときもあった。

寅子の正義感は独りよがりなのだ。自分だけが満足する正義を求め、そのために周りのことを顧みない。
その正義感を持って振りかざされる正論には、桂場が言っていた純度が無い。

かつて司法試験に合格し、女性初の弁護士としてコメントを求められた寅子は、「困っている方を救い続けます。男女関係無く」と宣言した。
素晴らしい正論だ。
その信念は変わっていないだろうが、果たしてそこに純な思いは灯っているのだろうか。

6月も下旬に差し掛かり、朝ドラもひとまず折り返し。
物語の登場人物は入れ替わり、寅ちゃんらしくいられる環境を支えてくれた人たちも少なくなってくる。
寅子が自分の翼で立つ姿をこれから見せてほしい。

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