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不動産営業マンから不動産エージェントが不動産を売る時代



なぜ、不動産エージェントなのか


「営業とエージェント(代理人)の違い」

インターネットを始めとするテクノロジーの進歩によって、世の中の仕組み自体が目まぐるしく進化してきています。それに伴い、営業手法もここ数年で大きく様変わりしているのをきっと実感されているでしょう。

例えばファッション業界では実店舗ではなく、ECサイトで服を購入することが当たり前になってしまいました。これまでは試着もせずに洋服を買うなんて考えられませんでしたが、今の若い人たちは自分のお気に入りの店員さんやインフルエンサーがSNSで発信するモノを購入することが当たり前になっています。
目の前の商品が良いからではなく、あの人がSNSでおすすめしているから購入する。

アパレルメーカーもそのことをよく承知していますから、営業マンに商品を売らせるのではなく、最初からインフルエンサーに宣伝を依頼します。
従来どおりの営業マンに頼らない、新しい営業スタイルが確立しているのです。

こうした営業スタイルの変化は、もちろんファッション業界だけに限ったものではありません。
一般企業ではいわゆる「飛び込みの営業」が時代遅れになり、訪問しない営業である「インサイドセールス 」が主流になりつつあります。
スーパーのレジも徐々に、そして確実に自動精算機に取り変わってきています。
またそもそも店内にスタッフが誰もいない、無人店舗も普通に見かけるようになりました。まさにAIに仕事を奪われつつあることを実感しています。

これまでの営業マンは自社のモノを紹介し、販売するのが仕事でした。
しかし、今の時代は誰でも世界中のモノを自由にリサーチできる時代です。購入もサイトでポチるだけ。
つまり、昔ながらの営業マンは必要なくなっているのです。
不動産業界も同じです。

これまで住宅ローンを組むためには、銀行に行って審査をしてもらうのが常識でした。
それが今ではスマホで簡単に事前審査ができるようになり、数時間もたたないうちに審査結果が送られてきます。一昔前なら考えられないようなことが今、現実になっているのです。
またかつては、不動産は情報そのものが商品でした。
街にはかならず不動産屋さんがあり、そこで情報を教えてもらうのが物件の探し方だったのです。
ところが今はネットで誰でも簡単に物件を探せるようになり、内見や契約すらもネットで完結できるようになっています。不動産屋さんなんて、必要なくなってきているのです。
しかしだからといって、「人」が不要になっているわけではありません。
最初に述べたアパレル業界の販売スタイルの変化でも、全てがITやAIに置き換わっているわけではありません。
むしろ、若い人たちはインフルエンサーが発信する情報を頼りに商品を購入しています。
人間はやはり信頼できる情報を提供してくれるところから、商品を購入するのです問題となっているのは、その信頼できる情報をどこから入手するか?ということ。今はあまりにも情報が多すぎて、何を信用したら良いのか分からない、と多くの人が感じています。
またネットから自分で見つけ出した物件(情報)が本当に良いものかどうか、素人ではなかなか判断できません。

そうした時代だからこそ、信頼できるプロのアドバイスが求められているのです。しかし、営業マン=自社の商品を売り込む人。と見られていますから、信頼されるのはなかなか難しい。
でも顧客の側に寄り添う、代理人ならどうでしょうか?
エージェントは営業マンとは異なり、自社の商品を売るのが仕事ではありません。

むしろ顧客の代理人として、顧客の願うコトを実現化させるために行動します。自分が売りたいものではなく、あくまでも顧客の価値観に沿って提案しますから、そのアドバイスには重みがあります。

情報があふれ、モノの善し悪しを判断できるリテラシーが満足度を左右する決め手になっている今、求められているのは信頼できるプロからのアドバイス。そしてそれを提供するのがエージェントの役割りなのです。

住宅は人生の中でもトップクラスに高価な買い物です。だれでも不動産選びで失敗したくはありません。
しかし不動産屋さんを訪ねても、扱う不動産(情報)の量は限られているので、本当にいい物件を見過ごしていないか不安になってしまいます。でもだからといって自分で必死になって情報を集めても、これが本当に良いものかどうか確信を持てない…。

そこに、エージェントという存在の価値が生じてます。

営業マンがこれからの時代を生き残るには、エージェントとして顧客のために尽くさなければならない。

エージェントという働き方の価値について、もう少しお話させてください。

住宅や不動産の購入というものは人生でそう何度も経験することではないので、一般の人にとっては分からないことだらけです。
多くの場合、顧客は自分の価値観やネットで仕入れた情報を基準にして良し悪しを判断してしまうため、不動産業界の常識で考えると非常識なことを求められることもままあります。
しかし逆に言えば、不動産業界の常識は一般の人にとっては非常識に思えてしまいます。そしてその溝が、クレームまで発展してしまうことも珍しくないのです。
私は住宅業界に30年近くいますが、業界の仕組みやシステムもどんどん改善され、欠陥住宅というものもだいぶ減ってきました。
しかし商品のクオリティは上がっているのにも関わらず、クレームの数自体はなかなか減りません。

なぜでしょうか?

それは物件や工事の内容そのものではなく、サービスについてのクレームが増えてきているからなんです。

たとえば、こんなことがありました。

あるリフォーム会社の営業マンの話ですが、お客様は中古戸建を購入して水回りや壁紙などのリフォームを希望しておられました。
物件の引き渡しからすぐに工事に取り掛かり、なるべく最短で入居したいとのこと。そのため、その営業マンはすぐに物件を確認し、見積もりも出してくれたのでお客様も信頼して契約へとこぎつけることができました。
ところが、詳細の打ち合わせを始める段になると、営業マンのレスポンスが悪い。お客様としても工事を急ぎたいので、営業マンからの問い合わせにはすぐにメールで返信しますが、その答えがなかなか返ってこないのです。あとで問題にならないよう、記録が残せるメールでやり取りをしているにも関わらず、しまいには営業マンはメールを見る時間がないので電話にしてほしいと言ってきました。
そうしたやりとりにストレスがたまり、最後にはお客様は怒り出してしまったのです。
工事の内容や費用に問題があったのではありません。むしろ内容自体はお客様にとっても非常に良いものでした。
ところが、営業マンの対応が原因でクレームになってしまったのです。
実はこうしたことは、不動産業界では珍しいことではありません。
昨今の不動産業界もご多分に漏れず人手不足で、本当に皆さん忙しく働いておられます。メールを見る時間が取れないというのも本当なのでしょう。そのためその営業マンも自分が悪いと思っておらず、逆にうるさいお客だくらいにしか思っていなかったのかもしれません。

しかしこんな営業マンは、これからの時代には通用しません。
この営業マンは、リフォーム工事という情報を提供したことで自分の仕事は終わったと考えています。
しかし顧客の立場になって、顧客の価値観に寄り添うというエージェント的な考え方で対応していれば、きっとお客様も大満足されていたにちがいないのです。

本当に残念な話です。

世の中には良くも悪くも情報があふれ、顧客の価値観も多様化しています。Aという顧客にとって良い情報が、Bにも受け入れられるとは限りません。一人ひとりの価値観を尊重し、それにあわせた提案や助言をしなければ満足してもらうことは決してできません。
それどころか、ちょっとした気遣いが足りないばかりにクレームへと発展してしまえば、その仕事にどんな価値があるでしょうか?

住宅はお客様が楽しく暮らすために購入するものです。

しかしそもそも楽しい暮らしとはどういうものか?その顧客にとっての楽しさをもたらす住宅とはどんなものか?そうしたことを追求しなければ、真の顧客満足をもたらすことはできません。
エージェントの役割りとは、顧客の希望する楽しい暮らしがどういうものかを可視化すること、それを実現する物件を紹介、つまり具現化すること、そしてその結果として顧客の幸福を実現化させることです。
お客様は不動産に関しては素人ですから、自分たちの楽しい暮らしはイメージできても、それをもたらす住宅とはどういうものかを思い描くことはなかなか難しい。でもプロの不動産エージェントなら、それが可能です。

顧客が思いつかなかったそんな物件を可視化・具現化・実現化させることができたら、素晴らしいと思いませんか?そう、エージェントとして働くことは顧客だけではなく、自分自身にも幸福をもたらすのです。

前にも述べましたが、今は誰でもインターネットで好きな情報にアクセスできるようになり、さらにAIテクノロジーの進歩によって自分にとって最適な商品が自動的におすすめされるようになっています。今後さらにそうした流れは進み、営業マンを介さずに取引が完結してしまう時代がやってくるでしょう(すでに一部そうなっています)。

わざわざ営業マンに頼らなくても、Googleに尋ねれば自分の欲しい商品が手に入ってしまう。
単に自社商品の知識を詰め込み、マニュアル通りの感じの良い対応によってモノが売れる時代はとっくに終わっています。
自社の商品知識を詰め込み、感じの良い対応とマニュアル化された営業トークだけを武器とする営業マンは、AIやビッグ・テックに取って代わられるでしょう。
たとえ会社から独立したエージェントにならないとしても、これからの時代を営業マンとして生き残るには、エージェント的な働きが不可欠なのです。

もちろん、単なる営業マンからエージェントになるのは簡単なことではありません。
これまで以上に勉強し、顧客のことを考え、どうしたら彼らの願いを実現できるのかを追求し続けなければなりません。
でも人は自分の好きなことなら、いくらでも頑張れます。
いえむしろ、努力すること自体が普通になり、当たり前に頑張れるようになれるのです。

営業マンではなく代理人。お客様の代わりにプロとして働くエージェント。
それが当たり前の時代はすぐそこに来ていると思います。


不動産エージェントになるためのステップを本にしました。よかったら読んでみてください。

不動産エージェントのためのメディア「ワタシゴト」も是非のぞいてみてください!



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