指先切断で知った21世紀の傷治療法
鳥取旅行中の7月26日金曜に人差し指の先5ミリほどをバッサリ切断して、医者に電話したら「血が止まっていて腫れていないなら週明けでも大丈夫」と言われた。そのまま旅行を楽しんで帰宅し、3日後にクリニックへ。
「スパッと切れましたねぇ。鋸なんかでギザギザに切れるよりはましですね」
治療は化膿止めをぬって薄いフィルムをまいて、包帯をぐるぐる巻きにして保護するだけ。切断した部分の肉がふくらんでくるのを待つのだという。
従来は、消毒してガーゼをあて、かわいてかさぶたができ、それがはがれたら治療完了だった。だが、2001年ごろから「湿潤療法」がひろまり、そのための絆創膏ジョンソン&ジョンソンの「キズパワーパッド」が04年に発売されたという。
大事なのは、①傷は十分に洗い流す ②乾かさない、かさぶたをつけない ③消毒しない。
傷を洗うには塩素消毒して雑菌がほとんどない水道水が最適だ。傷をかわかして「かさぶた」になると、それが栄養分になって一気に細菌が増える。医療用のフィルムでラップすることで、体液がかわかず、皮下神経を保護できて治癒が促される。消毒しない、というのは、消毒液が正常な細胞も破壊するからだ。切り傷の治療法の常識が180度かわったなんてはじめて知った。
フィルムでまいた指は2日もたつと甘いすえたにおいがしてくる。最初は2日に一度通院。次に3日に一度になると、古い靴下のにおいに。そしてお盆休みは6日間ある。
「すさまじい臭いになったらどうしましょう」とたずねると、
「1度だけははずして、キズパワーパッドをあてて包帯で保護してもかまいません。でも1度だけですよ」
3日目になると古靴下のにおいになった。でも、傷の部分以外を2週間ぶりにきれいにあらい、垢を落としたらだいぶにおいがおさまった。4日後、さすがににおうから、包帯とフィルムをはずして水洗いして汚れを落とした。スパッと斜めに切れていたのが、だいぶ肉がふくらんでいる。先端をさわると、最初は飛び上がるほど痛かったが、ほとんど痛まない。ただ爪が切れた部分あたりから血がでている。キズパワーパッドをあてて包帯を巻いた。
お盆休み後の8月16日に受診した。肉がふくらんだのはよいが、ふくらんだ肉に切断された爪が食いこんで、そこから出血している。
「このまま爪が食いこむことはないですか?」
「ありえます。でもふくらんだ肉は少しずつ縮まりますから」
この日でフィルムではなくふつうの包帯でギュッと圧迫して巻いて止血した。臭うようになったら、今後は普通の絆創膏でもよいという。
1週間後の8月23日の受診。ふくらんだ肉がかたまって、さわっても痛みはゼロに。
「だいぶかたまってきましたねぇ。無理にはがしたりしないでくださいね。あとはふつうのシャワーを浴びても大丈夫です」
ということで1カ月弱で治療は終了。
けがをしたおかげで新しい医療を勉強できた。
ヤクザが小指を切断するというのは痛いやろなぁ、と実感したが、逆に「小指を切らなかったら家族を殺す」とか脅されたら、「なーんだ、小指程度でいいのか」と躊躇なく切断できるような気がした。
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