見出し画像

#京都大学ボヘミアン物語 結成40周年記念集会②家庭崩壊の危機

 ボヘミアン40周年記念集会の初日。昼間からビールをあおっていると、ヤマハラが深刻な表情をつくって近づいてきた。
「ねえ、フジャー、ひとつ大事なたのみがあるんだけど……」

 どうせたいした話ではない。

「本のことでだれかにバカにされたんか?」と言うと、
 じつは……と口ごもったあと、ヤフーニュースにボヘの本の紹介記事があったのを娘が見て……と、話しはじめた。娘はいきなりヤマハラにたずねた。
「ねえ,パパってボヘミアンだったって言ってたよね?」
「なんだっけ、そんなことあったっけー?」
 ヤマハラは内心ドキドキしながらシラを切った。
 だが、娘が上手だった。何日かあと、ヤマハラの目の前にミイラ男の表紙の本をおいた。
「紀伊國屋で買ってきたよ。『九州男児』って書いてあるクスノキさんがパパなの?」
「それはちがう!」
 ヤマハラは堂々と否定した。
「じゃあ、このヤマハラさんだよね?」
 登場人物紹介欄を娘に指さされてヤマハラは観念した。
 しかも娘はボヘ40周年合宿の日程を知って
「この本をもっていって!」と言う。
「いや、どうせみんなもってるから、わざわざもっていかなくていいよ」
 逃げ腰のヤマハラに娘は追撃をくらわせた。
「ちがうの、筆者のサインをもらってきて!」

「ボヘのことだけはバレたら家庭崩壊やって、家ではひたかくしにしていたのにばれちゃいましたぁ。でも娘に言われたんで、サインしてください。私としては忸怩たるものがありますが……」
「オーケーオーケー、へたくそな字でええなら、いくらでも書くで。で、せっかくだからメッセージも書いたほうがいいよな?」
 そう言ってぼくがペンを手にすると、大きくかぶりをふって、懇願した。
「よぶんなことは書かず、○○さんへ、とだけにしてください!」
 
 ヤマハラは「京都大学ボヘミアン物語」をネットで連載しているときから
「ぼくの学生時代のあだ名は足がつくかも知れないのでのせないでください」
「ボヘにいたことが家族にばれたら、家庭崩壊ですー」と泣きついてきた。
 出版がきまると、ヤマハラの恋人? トミーも同様にうったえた。
「名前をかえて個人が特定されなくても、問題ありまくりの活動やし、公表しないほうがいいよ。書くなら70歳ぐらいになってからにしましょうよ」
 ヤマハラは冗談めかして(でもたぶん半分は本気で)言った。
「法的措置も考えちゃいますよ!」
「ええよ。それでマスコミで報道されたら本が売れるし、オレはありがたいわ」
 ぼくがそうこたえて、議論はおわった。

 この本の登場人物はたいてい「大半の記述は正しいが、オレのことだけは訂正を要求したい」と言う。「こんなヤバい本は家族にはみせられん」と、本棚の裏側にかくすヤツもいる。一方、「究極のもてない男」アシカワのように、「子どものみえるところにわざとおいているけど、読んでくれない」というケースもある。よっぽどオヤジの地位が低いのだろう。
 アシカワは、「フジャーとオレはもてない男の双璧だったからね」とみんなの前で公言する。
 女の子との合コンすら避けていたお前とはレベルがちゃうで! いっしょにされるのは心外やわ!(つづく)
(写真は近江舞子での湖畔の2次会)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?