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ムダも大切です

普通預金のお金を有効に活用しませんかと銀行員がやってきた。ノーリスクで運用できる方法があるかと聞くと、少ないリスクでそれなりのリターンがある商品なら紹介できますと答えた。それならいですと断ると、訪問を受けて商品の説明を聞いたという証明書に署名してほしいという。断る理由もないので署名してあげたが、世知辛い世の中になったものだ。余裕のない社会で若い人は大変だろうと思う。

営業のように対面仕事なんてムダが許されてこそ成果が出るのではないか。客を訪ねて世間話をしながら、この客が一番求めているのは何かを探りだし、いい商品を提供する。客が喜び、そのおかげで自分の成績にもなる。人よし、自分よし、そして社会よしの商売を追求すべきである。最近の経団連の報告書にも、そのような近江商人の心意気を取り戻そうと書いてあった。

デパート勤めの知人からお客さんにモノを売るコツを聞いたことがある。すぐに近寄ってはうるさがられる。客の動きをさりげなく観察し、どれにしようか迷い始めたタイミングで声をかけると、ほぼ買っていただけるそうだ。確かに、見始めたばかりのときに「何をお探しですか」と来られると、買う気が失せてしまう。

新聞記者をしていた知人は「メモ帳を置いてからが勝負」と言っていた。相手も緊張が解けている。世間話をしているうちに取材の補足ができたり、新しいネタが見つかることがあるというのだ。

共通するのは余裕の心だ。客が何を求めているか観察する余裕。客が喜ぶ姿を見て満足できる余裕。社会から余裕が失われている。売らんかなばかり先走るから、日本企業の生産性はいつの間にか先進国では最低水準に落ち込んだ。


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