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間質性膀胱炎の尿中バイオマーカーを探索 酸化ストレスとの関連が明らかに

間質性膀胱炎・膀胱痛症候群には、酸化ストレスや慢性炎症が関わっています。近年、間質性膀胱炎・膀胱痛症候群のタイプや重症度と、尿中の酸化ストレスバイオマーカー・炎症性サイトカインとの関連を調べる研究が進められています。2022年に発表された論文では、水圧拡張術後の点状出血状態や最大膀胱容量と相関する酸化ストレスのバイオマーカーが報告されました。

酸化・炎症のレベルで病態を評価

学術顧問の望月です。前回に続き、今回の記事でも間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の最新の研究情報をご紹介します。ピックアップしたのは、『Biomedicines』に2022年に掲載された「Urine Oxidative Stress Biomarkers as Novel Biomarkers in Interstitial Cystitis/Bladder Pain Syndrome」という論文です。

頻尿や膀胱痛を特徴とする間質性膀胱炎・膀胱痛症候群になると、膀胱虚血に伴う低酸素症により酸化ストレスが引き起こされ、尿路下部の慢性的な炎症が生じます。台湾で実施された今回の研究は、間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の患者さんの尿に注目したものです。過去の研究では、酸化ストレスや炎症に関連する尿中の物質は、間質性膀胱炎・膀胱痛症候群と過活動膀胱などでは異なることがわかっています。

研究では、尿中の酸化ストレスのバイオマーカーと炎症性サイトカイン、間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の関連を調査。具体的には、間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の患者さん159人(男性20人、女性139人、平均年齢54.4±12.7歳)と対照群となる腹圧性尿失禁の患者さん28人(女性28人、58.6±9.9歳)の尿サンプルをもとに、「8-OHdG」「8-イソプロスタン」といった酸化ストレスのバイオマーカーと「MCP-1」「RANTES」「CXCL10」「エオタキシン」「MIP-1β」「 IL-8」といった炎症性サイトカインが分析されました。

なお、間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の患者さんは水圧拡張術後に点状出血が見られる1型(42人)、点状出血の見られない2型(117人)に分けられ、さらに点状出血の状態や最大膀胱容量に基づき4つのサブグループに分類されています。点状出血は、水圧拡張を伴う膀胱鏡検査のときに見られる出血です。点状出血グレードが1以下で最大膀胱容量が760mL以上(44人)、点状出血グレードが1以下で最大膀胱容量が760mL未満(46人)、点状出血グレードが2以上で最大膀胱容量が760 mL以上(18人)、点状出血グレードが2 以上で最大膀胱容量が760 mL未満(51人)という整理です。

酸化ストレスのバイオマーカーを特定

尿サンプルを分析した結果、間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の患者さんと対象群の酸化ストレスバイオマーカーと炎症性サイトカインの数値には違いがあることがわかりました。間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の患者さんは、酸化ストレスのバイオマーカーである8-OHdG、8-イソプロスタン、炎症性サイトカインであるMCP-1、RANTES、CXCL10、エオタキシンが上昇していたのです。また尿中8-OHdGについては、間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の1型よりも2型の患者さんのほうが有意に高いことも確認されました。

同様に、4つのサブグループと対象群の比較でも尿中の酸化ストレスのバイオマーカーと炎症性サイトカインの発現レベルの違いが確認されました。そのほか、点状出血グレードが2以上で最大膀胱容量が760 mL未満のグループは、サブグループの中で8-OHdGおよび8-イソプロスタン濃度が最も高いという結果が得られています。

間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の1型と2型には違いはあったのでしょうか。2型においては、8-OHDdGと8-イソプロスタンは糸球体形成グレードと正の相関があり、最大膀胱容量と負の相関がありました。また、IL-8を除いたほかの酸化ストレスバイオマーカーと炎症性サイトカインには、最大膀胱容量と負の相関があることも明らかになっています。一方、1型では酸化ストレスバイオマーカーや炎症性サイトカインと病態との間に有意な相関関係はありませんでした。

著者は、「尿8-OHdGレベルは間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の患者さん全体で有意に上昇しただけでなく、1型と2型を区別する唯一の独立した尿分析物でもあった」としています。尿の酸化ストレスバイオマーカーを調べることで、根底にある低酸素状態だけでなく、慢性的な低酸素による酸化的損傷後の膀胱機能の状態、つまり点状出血グレードや最大膀胱容量といった臨床的特徴を反映できる可能性があることを示唆しています。

8-OHdGを間質性膀胱炎・膀胱痛症候群のバイオマーカーとして用いるには課題もあります。著者も言及していますが、今回の試験の対象者の多くは女性です。性差の可能性は否定できません。個人差も同様です。また、膀胱内の全体的な低酸素症および酸化ストレス状態がほかの炎症性疾患などに起因していることも考えられるでしょう。今後のさらなる研究に注目したいと思います。

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