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治療効果を高めて薬剤耐性ガンに対抗 乳ガン治療におけるニンニク成分の可能性

不二バイオファームで製造しているアスタニンは、ニンニクスプラウトを主原料の一つとするサプリメントです。ニンニクには、抗酸化作用や抗炎症作用、抗血栓作用や抗血小板凝集作用のある機能性成分が含まれており、海外ではガンに対する研究も進められています。2022年に投稿されたレビューでは、薬剤耐性を持った乳ガンに対するニンニク由来成分の働きが整理されています。

薬剤耐性ガンに対する食品の効果

学術顧問の望月です。前回の記事では、不二バイオファームで製造している「アスタニン」の主原料の一つであるアスタキサンチンの研究に関するレビューを読んでいきました。アスタニンには、アスタキサンチンのほかにもニンニクスプラストを配合しています。今回の記事では、ニンニクの研究情報をご紹介します。

ニンニクは、抗ガン食品として広く知られています。『Journal of Pharmaceutical Analysis』に2022年に投稿された「Diallyl disulfide and diallyl trisulfide in garlic as novel therapeutic agents to overcome drug resistance in breast cancer」というレビューでは、薬剤耐性のある乳ガンに対するニンニクの効果が取りまとめられています。

乳ガンは、世界で最も多いガンの一つです。毎年約210万人が罹患しており、女性のガン関連死の主な原因であると報告されています。乳ガンのサブタイプはいくつかに分けられますが、ガンの発生に関係しているのは、年齢、遺伝的要因、女性ホルモン、肥満、喫煙などであることがわかっています。

今回のレビューでは、エストロゲン受容体とプロゲステロン受容体、ガンの増殖に関係しているHER2というたんぱく質がない「トリプルネガティブ乳ガン」が大きく取り上げられています。ホルモン受容体のないトリプルネガティブ乳ガンは、予後の悪いガンであると考えられています。この原因の一つとして挙げられているのが、化学療法の薬剤に対する治療抵抗性(薬剤耐性)です。

薬剤耐性という難題がある中で注目されている一つが、正常細胞への影響を最小限に抑えながら、乳ガンの発生・増殖・転移に関わる経路に直接影響を与える植物由来の機能性成分の働きです。ニンニクもガンに対する効果について研究が進められており、「トリプルネガティブ乳ガンの治療効果を高めるアプローチになりうる」と、レビューには記されています。

ニンニクに含まれている機能性成分としてピックアップされているのが、「二硫化ジアリル(DADS)」と「三硫化ジアリル(DATS)」というアリル硫⻩化合物です。これらは、ニンニクスプラウトにも含まれています。

DADSには抗酸化作用や抗炎症作用など、さまざまな薬理作用があることが知られています。抗炎症作用には、サイトカインの分泌の減少、活性の抑制などが挙げられ、酸化によるダメージから細胞を保護するグルタチオンペルオキシダーゼとスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)の活性を増強する働きも含まれています。一方のDATSには、抗血栓作用、抗凝固作用、抗血小板凝集作用などがあることが報告されています。

薬剤耐性の原因を排除してガンを攻撃

過去の疫学調査では、ネギ属の野菜の摂取は乳ガンのリスク低下と強く関連していることが報告されています。2020年に発表された別の研究では、ニンニクとタマネギの十分な摂取が乳ガンの予防効果をもたらす可能性も示唆されています。

こうした結果の背景には、ガン細胞の増殖、腫瘍の転移、血管新生を抑制するDADSとDATSの働きがあります。アポトーシス(細胞死)とガン細胞の有糸分裂(細胞分裂における核分裂)を調節する細胞シグナル伝達経路を妨害するDADSとDATSは、多様な経路で薬剤耐性乳ガンに対抗していると考えられているのです。

多様な経路で薬剤耐性乳ガンに対抗すると考えられているDADSとDATS(「Diallyl disulfide and diallyl trisulfide in garlic as novel therapeutic agents to overcome drug resistance in breast cancer」より)

薬剤耐性を引き起こす原因はさまざまで、レビューでは「細胞周期およびアポトーシス媒介薬剤耐性」「転移依存性薬剤耐性」「血管新生による薬剤耐性」「ガンの転移に関わるEMT を介した薬剤耐性」「酸化還元を介した薬剤耐性」「遺伝子発現の制御・伝達システムを介した薬剤耐性」「乳ガンの幹細胞を介した薬剤耐性」「炎症を介した薬剤耐性」「抗腫瘍免疫を介した薬剤耐性」と整理されています。

メカニズムなど詳細については省略しますが、DADSとDATSは、薬剤耐性を抑えたり、薬剤耐性を持った乳ガンに対抗したりする可能性が示唆されています。一例となりますが、NF-kB/TLR4やCXCL12/CXCR4などの経路を阻害することで炎症性サイトカインの発現を低下させるDADSは、活性酸素を減らして炎症を抑制します。こうした働きは、炎症を介する薬剤耐性乳ガンの治療に効果的であると評価されています。

DADSとDATSを乳ガンの治療の現場で使用していくためには、さらなるデータの蓄積が必要となります。興味深いことに、ニンニク化合物を体内でうまく機能させるためには、腸内細菌叢などの状態も関係していることもわかっているそうです。いずれにしても、ガン治療の選択肢に安全性の高い食品由来の成分が加わるのは望ましいことではないでしょうか。今後の研究にも期待したいと思います。

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