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静岡県立大学・山田特任教授登場 機能性食品の現状と下部尿路症状改善作用

2021年9月11日(土)に開催された第28回『日本排尿機能学会』のモーニングセミナーの中で、静岡県立大学の山田静雄特任教授(大学院薬学研究院附属薬食研究推進センター長)が「機能性食品の現状と下部尿路症状改善作用」と題する講演を行いました。山田特任教授は、キーワードの一つに「セルフメディケーション」を挙げています。山田特任教授にご登場いただき、今回の記事ではモーニングセミナーの内容をご紹介します。

蓄尿症状・排尿症状・排尿後症状の悩みが増加

近年、頻尿・尿切迫感・尿失禁、尿勢低下・排尿遅延、残尿感・尿漏れなどに悩む人が増えています。蓄尿症状・排尿症状・排尿後症状からなる下部尿路症状は、「LUTS(lower urinary tract symptoms)」と呼ばれています。下部尿路症状の背景には、前立腺肥大や神経因性膀胱、過活動膀胱や尿路結石、尿路感染症や骨盤内臓器脱といった病気が隠れています。

下部尿路症状の最大原因は高齢化です。背景にある病気を特定できれば治療が進められていきますが、薬で症状が改善する人がいる一方、治療効果が得られない人もいます。効果がなかった人のほか、副作用によって治療を断念する人も一定数存在します。副作用の例を挙げると、副交感神経を遮断する抗コリン作用のある薬を用いた場合、便秘やノドの乾きが出たり、長期服用で認知機能の低下が見られたりすることもあるのです。

また、下部尿路症状の症状が見られても治療対象とならないこともあります。正常ではないが、病気でもない──いわゆる未病や予備軍の人たちが該当します。夜間頻尿による睡眠不足や旅行中の頻尿などに悩まされている人は少なくないはずです。病気の診断はつかなくても、下部尿路症状が続くと生活の質(QOL)は低下してしまいます。一つの目安ですが、日中8回以上の排尿、就寝後2回以上の排尿があれば、QOLは下がってしまうと考えています。

私は、食事や運動・体操による下部尿路症状の改善策を模索してきました。さまざまな症状で困っている人のQOLの改善がいちばんですが、未病段階でのセルフメディケーションによって加齢の影響を緩やかにすることができれば、結果的には医療費の削減にもつながるはずです。例えば、飲酒の習慣があれば、お酒の量を少し減らすだけでも一部の下部尿路症状、それに伴う睡眠不足は改善していきます。

機能性食品はエビデンスの蓄積が重要

食事については、機能性食品にも注目しています。モーニングセミナーでは、下部尿路症状に対する効果が期待されている「ノコギリヤシ」「シークワーサー」「発芽そば発酵エキス」「クランベリーエキス」「ザクロ果実」の研究情報をご紹介しました。

ノコギリヤシは、尿トラブル関連では研究の歴史が最も古い食品です。脂肪酸やβステロールなどが含まれており、国内外で研究が進められてきました。動物実験はもちろんのこと、ヒト試験の結果が複数報告されていますが、「効果がある」「効果は低い」と評価は分かれています。

ノビレチンなどを含むシークワーサー、ケルセチンや乳酸菌などを含む発芽そば発酵エキスは国産素材が原料となっており、尿トラブルの機能性食品として知名度を上げています。発芽そば発酵エキスは、このサイトを運営している不二工芸製作所で開発されたもので、間質性膀胱炎・膀胱痛症候群といった難病に対する効果も明らかになりつつあります。キナ酸などを含むクランベリーエキス、タンニンやアントシアニンなどを含むザクロ果実も尿意ストレスなどとの関連について研究が進められています。

ノコギリヤシと同様、シークワーサーや発芽そば発酵エキス、クランベリーエキスやザクロ果実も動物実験とヒト試験が行われています。ただ、ノコギリヤシのヒト試験が国内外の複数施設で実施されてきたのに対し、下部尿路症状に対するシークワーサーや発芽そば発酵エキス、クランベリーエキスやザクロ果実は国内1〜2施設程度からの研究報告にとどまっているのが現状です。

「下部尿路症状にはコレ」という統一見解を得るには、試験参加者はもちろんのこと、医療機関や大学などの研究機関を増やした形で、さらなる研究を進めていく必要があります。今回、それぞれの食品の作用機序などにふれることはできませんでしたが、次の機会があれば、個別の研究情報の詳細をご紹介したいと思います。

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