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【旅日記】空の下&はっぴーの家ろっけん・5 【はっぴーの家ろっけんへ】

【はっぴーの家ろっけんへ】

はっぴーの家で大活躍の、買ったばかりのキャンピングカー。

まだ使い方を模索中らしく、待ちあわせ地点のコンビニ駐車場で、私が乗るスペースをつくるべく、ワイワイと中の荷物を並べ替えてくれる。

空の下メンバーにお礼を言って別れ、そのキャンピングカーに乗り込んで高知を出発。

ここから神戸まで、スムーズに行って4時間くらいかかる。  

ワダケンは、慣れない大きなキャンピングカーを数日にわたって運転し、子ども達の引率をしていたというのに、
「移動って、話ができる時間でもあると思うんですよ」と言って私の話し相手をしてくれる。

しばらく激しくはしゃいでいた子ども達が寝静まり、すっかり静かになった車内で、ワダケンと奥さんと、3人で、日本の福祉や教育について話す。

キャンピングカーが大きな橋を渡り始めると、海の上に街の灯りが見える。神戸だ。

高速道路の右車線を、赤く平べったいスポーツカーがブオンと音を立てて追い抜いて行く。
ワダケンが嬉しそうに「おお、関西に帰って来ましたよ。いわしとんなあ〜」と言う。
関西では、赤いスポーツカーなどがいわしているものらしい。またひとつ勉強になった。

はっぴーの家に近づく頃には、夜もすっかり更けていた。
子ども達がむくむく起き出し
「あっ!? もうはっぴーの近くにいる!?今、高知に居たのに!」
と、全身麻酔から覚めた人のようになっている。

そんな状況で、夕食を食べていないので、途中何か買って行こう、という事になる。
「マクドのドライブスルーで良いか〜?」というワダケンの言葉に、
おおやっぱり関西の人はマックの事をマクドと言うのだと、文化の違いを感じる。

いよいよ初めて訪れるはっぴーの家に着くと、子どもたちの保護者が、高知から帰った子ども達を迎えに集まっていた。

ガレージで寛いでいた男性が「私は月イチではっぴーに来ているんですよ」とニコニコする。
状況がよくわからないまま挨拶だけして通り過ぎてしまったが、今思うに、おそらく編集者の鈴木七沖さんだ。
はっぴーのドキュメンタリー映画「30(さんまる)」をつくっておられ、今年クランクアップらしい。
https://www.facebook.com/30sanmaru/


チラシ紙を硬く細く丸めた棒を持った10才くらいの少女が私の顔をのぞきこみ、関西弁のイントネーションで「だれ?」と尋ねる。
私「あ、私は、と」
少女「なぐったろ」
言い終わらない内に突然紙棒でピシッと叩かれた。
私「痛いそれ、結構痛い」

あとでわかったのだが、この少女が、はっぴーの首藤社長の娘さんだ。

キャンピングカーの中で熟睡して充電した子ども達はその後またひと騒ぎしていたようだが、私は疲れてしまっており、察したワダケンがいち早く居室に通してくれて、その日はそのまま休む事ができた。

はっぴーの家ろっけん外観

はっぴーの家外観。「家だから」という事で看板はない。

はぴ泊やねんて
はっぴーかわるでjpg


ところで、この「はっぴーの家ろっけん」は、法律的な枠組みで説明するならば、サービス付き高齢者住宅(サ高住)という事になる。

ただしここには、誰でも立ち入り自由な共有リビングがついており、地域はもとより全国から、週に200人もの人が訪れるというのが、一般的なサ高住と違う。
色々な意味で不本意な事が多くしんどかった高齢者施設勤めを辞めて、私はまず真っ先にここに行くと決めていた。

サ高住のかたちをしたコミュニティステーションであり、介護ではなく暮らしを提供する場は、

関わる人たちの生活を犠牲にして介護施設という枠を守らなければならなかった私の日常を、生活軸のホームポジションに戻してくれるだろうと思った。

はっぴーリビング

着いた次の日、起きてリビングに行くと、高齢者の方々がテーブルについて寛ぐかたわらで、スタッフの人達が数人、仕事をしていた。

私を見かけると、私みたいな客人は大勢居るだろうに、初めて来た者だと認識し、ニコニコして話しかけてくれる。

その横で、アフロ頭の男性が、イヤそうな顔をしたワダケンに何だかからんでいる。
ワダケンが触れられたくない過去について、からかい半分に言及しているらしい。
アフロ氏は面白がっているが、ワダケンは渋い顔をして本気でイヤそうだ。
ワダケン「お前なあ…。人が墓まで持って行こうとしてる秘密なんやで。それを暴き立てるお前は、墓荒らしや」

「生前墓荒らし」の称号を受けたこのアフロ頭の男性は通称アフロ。
はっぴーの一部署なのか詳しい事は知らないが、関連事業「おせっかい不動産」のメンバーだ。


はっぴーの家ろっけんは、阪神大震災で大きく被災し、一部火の海になった長田区という住宅地にある。

新長田駅近くの周辺図を見ると、碁盤の目状にきれいに整備されているのがわかる。山は近いがこの辺りはおおむね平地だ。

新長田区画_n

その中の六間道(ろっけんみち)という、過半がシャッター化している商店街のはずれに建物があるのだが、その商店街の飲食店にて、はっぴーフリースクールの生徒の保護者が週イチ食堂のようなものをやっており、それがはっぴースタッフのランチの定番となっているようで、このアフロ氏に連れて行ってもらう事になった。

六間道jpg


とてもオシャレなお店は、子連れの女性を中心に、色々な人達でほぼ席がいっぱいになっており、めいめい、土鍋からご飯をよそって食べていた。

海苔の普及活動のためおにぎりのかぶりものをかぶっている男性もいた。
なるほど、海苔のかぶりものでは意味がわからないだろう。


ランチの間、アフロ氏に、はっぴー周辺の地理状況や、おせっかい不動産の活動などについて聞かせてもらう。

高齢者施設や高齢者住宅には、今まで持っていた土地屋敷を売却して入って来る方もいる。
もともと不動産業をしていたはっぴーでは、そういう事もまるっと引き受けられるらしい。
不要になった家財道具の処分などをする事もある。

たとえば病院のケースワーカーなどとつながっていると、家が無くなってしまっている入院患者さんなどの話も入って来る。
そこで、入居者さんの不要になった家具を無償で差し上げる、などという事もしているらしい。


途中ではっぴーの他スタッフも休憩に入ったらしく、店に入って来る。
人でいっぱいなのに基本的に1人で切り盛りしているお店があまりにも忙しそうで、手伝いようもなかったので、早々に出る。

はっぴーに帰ると、杖をついた女性入居者さんが手すりにすがって歩きながらニコニコと出迎えてくれ、私に手をヒラヒラと振ってくれる。
はっぴー名物「ろっけんガールズ」のメンバーの1人で、私もネットを通してお顔と名前は存じている。
「こんにちは、初めまして」と言ったら、私の手を取って甲にキスしてくれた。


東京から急きょ見学に来たという男性が居て、ワダケンが対応する。
「良かったら一緒に」と声をかけられ、はっぴーの説明をしてもらったり、自分の活動について、社会についてなどひとしきり語り合い、再会を約束して別れる。(その後、本当に東京でお会いし、ホームの一つである高島平の広大な団地群を案内してもらう事になる)

客人


その日、夜が更けて高齢者の方達が居なくなったはっぴーの家のリビングのテーブルで、私はノートPCを開いて、自分の開催する対話イベントの事務処理をしていた。

その横で、スタッフが10名以上集まって首藤社長を中心に夜遅くまで延々と何か話し合っている。

あとから聞いたら、入居者さんがお一人、いよいよターミナル(終末期、臨終が近い事)との事で、その話し合いだったらしい。

はっぴーの家では、利用者さんのやりたい事をできるだけ叶えるという事もあり、それだけに、いよいよ、というタイミングになると、あれこれ忙しいのだろう。

はっぴーの家では過去に、
「もう一度、昔のキャバレーに行きたい」というおじいちゃんの願いを叶えるべく、ポールダンサーを呼んで建物内にキャバレーを再現したり、
お葬式もシャンパンタワーを積んで棺桶に寄せ書きをしてにぎやかに営んだり、
幻視の見える方が入居して来た時に「こんなんなってるんだからもう何か見えててもええやん」とハロウィンパーティーをやったり、
というのは有名な話だが、
その水面下で、こうしてたくさんの人が真面目に話し合い、時間をかけて準備をしている。


他のテーブルでは、関係者がやはりグループになって、それぞれの活動について話し合っている。
子どもを連れている人も数人いる。
若い人が、深夜までずっとPCに向かっている。
社長の娘さんが、床にマットを敷いて器械体操をしている。(運動神経がすごい)


皆が「港」をモチーフにしたインテリアのリビングで、それぞれに自分の活動をしていた。

港、というのが、また意味のある事なのだが、
それはまた後に。

はっぴー発信エリア



次回ははっぴーフリースクールに混ぜてもらって、また素敵な所へ行った話です。

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