【旅日記】空の下&はっぴーの家ろっけん・7 【再び、はっぴーの家ろっけん】
【再び、はっぴーの家ろっけん】
はっぴーの家に帰ると、リビングでは今夜も首藤社長含むスタッフさんや、活動をしている誰かしらが、集まって何か話し合っていた。
その間、おなじみ社長の娘さんが、車いすに乗ってすごい速さで走り回っていたが、ピアノを弾き始めた時には時間も時間だったのでさすがに社長に止められていた。
社長がスタッフさん達に振る舞っている「餃子の王将」の餃子やらあんかけ焼きそばなどのおこぼれに私もあずかりつつ、リビングでまたPC作業をする。
そしてやがて夜が更けてスタッフが解散し、1人2人とリビングから全員いなくなり、私1人になった。
その時は、リビング横の事務所に詰めている夜勤スタッフもたまたま別の階へ行っていて、本当に私1人だった。
いったんどこかへ行っていた社長の娘さんが、私の隣に来てちょこんと座る。
「もう遅いのに、まだ寝ないの」なんて事は私も言わない。ここははっぴーの家ろっけんだ。
彼女とぽつりぽつりと話しながら作業をしていると、ピコンピコンと医療機器らしき音が聞こえた。
娘さんが「あっ、あの音聞こえたら鼻で息してないねん」と言って、リビングから一番近い部屋に入って行く。
どうも酸素マスクを自分で外してしまう入居者さんがいて、そのアラート音らしい。
彼女はその酸素マスクをつけ直して帰って来る。
首藤社長の言う「1人のプロより100人の素人」という言葉の意味のひとつが、ここで確認できる。
こうしてリビングに誰か居さえすれば、アラート音は聞こえる。
気づくのは介護職でなくても構わないのだ。
病院ならともかく、介護の現場であれば、
コストをかけて有資格者をわずかに雇って責任をすべて背負わせるより、
素人でも、責任や義務が無くても、たくさんの人目があってちょっとずつ気にかけてくれていたほうが、安全な場合が多い。
再び娘さんと私がリビングで過ごしていると、
やがて夜勤職員が帰って来て、しばらくしてまたアラートが鳴った。
夜勤職員が先ほどの部屋に入り、同じように酸素マスクをつけ直して出て来て、娘さんと顔を見合わせ「外したら死ぬのになあ」と、のんびりとした調子で言う。
ここでは高齢者が自由にしていられて、やりたい事をできるだけ叶えてもらえるが、絶対安全という訳ではない。
でも、そもそも生活って、基本的にそういうものではないだろうか。
ここでは、一般的な高齢者施設にいたら事故防止のため立たせてももらえないだろうというレベルの人が、1人で歩いている。
当然転ぶ事もあるが、いちいち介入されるのとどちらが良いのだろう。
それを本人に聞いてみる施設がどのくらいあるのだろう。
本人が意思表示できる内に話し合っておける家族がどのくらいいるのだろう。
私がついこの間まで勤めていた老健の利用者さん達は、ただ座って一日過ごしていた。
食事とトイレ介助だけで手一杯な職員がバタバタ働くのを気の毒そうに眺めて、
「大変だねえ、なんであんた達にこんな苦労かけてまで私は長生きしてるんだろう」とか、
「家に帰してください。私は騙されて連れて来られたんです。この歳になって何がリハビリですか。そりゃここに居ればご飯もお風呂ももらえるけど、これじゃ犬と同じじゃないですか」
などと訴えていた。
辞めてからも、それがどうしても頭から離れなかった。
はっぴーの階段は落書きがたくさんあって楽しい。
各フロアのインテリアにはコンセプトがある。これはアメリカフロア。
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