料理の上達方法

料理の上達方法

枯朽 h.b.

まだ仕事が出来ない。前回のnoteにも書いたのだが僕は今諸事情により少しの間家を出れなくなってしまった。

お客様に来て頂き自ら料理を提供することでしか成り立たないこの仕事はリモートでは出来ない。

出来ないことは仕方ないので家でずっと料理を作って、寝て、Twitterを開いて、の繰り返しをしているのだが仕事をしないまま長時間経つとソワソワしてしまうたちなのでまた文章でも書くか…とnoteを開いた。前回同様、全文無料公開の有料記事だ。そしてダラダラと長い。最後まで読んで気が向いたら応援だと思って購入してくれると嬉しい。

とは言っても僕は自分から何かを発信したい、みたいな欲があまりない。淡々と制作に向き合い納得いくまで試作してようやく完成させたものを、自分の所までわざわざ足を運んで下さった方々へ披露し楽しんでもらう。ということに喜びを感じているのでSNSを使って世の中に向けてアウトプットしたいことなんか実は特にない。

料理を作るという行為自体はより引き出しを増やし、より大きな世界を見て、自分にしか出来ない新しく楽しく美味しいものをゼロから作り上げたい!という前向きな気持ちで取り組んでいるがそれを発信する先はごくごく小さな世界で良いと思ってる。このnoteも同様だ。

なので前回同様一つの質問に対して真面目に答える、といったスタンスで書いていく。Twitterを見て興味を持ち質問を投げかけてくれるというのは嬉しいことだし僕自身も答えるという作業によって自分の頭の中を整理したいから。

間借りのお客様やフォロワーの方々から日々色んな質問を受けるのだが一番多く、そして一番答えづらいのが「どうやったら料理が上手になりますか?」という質問だ。


料理が上手ってなんだろう?と考える。単純に美味しく作れること?違うと思う。最近は良くできた簡単レシピが多いので特に料理が上手でなくても美味しく作れてしまう。僕が思う料理が上手な人は料理の解像度が高く、状況や好みに合わせた最適化ができ、それらを味に落とし込む技術がある人だと思う。

例えばレシピを見ながら煮込み料理作るとしよう。
作ろうとしている煮込み料理に対しての解像度が高い人はそのレシピがどの方向性を向いてるかが目を通しただけで大体分かる。
今から作ろうとしている煮込みはソースを美味しようとしているのか、お肉を美味しくしようとしているのか、どちらも両立させようとしているのか、それらが作る前から分かっていれば料理のクオリティは格段に高くなるし何より作ることが楽しくなる。

そして読み取ったレシピが自分の好みに対してどうなのか?今ある設備で問題なく作れるのかなどを考慮し、最適化出来れば元のレシピの材料や分量をベースに自分が目指したい方向性を自分で決めることができる。レシピはソースを美味しくしようとしているが、私はお肉もおいしく食べたいな…という時にレシピの一部をアレンジして両立の方向性に自らチェンジすることも可能なのだ。

そして技術があればその想像力から生まれた新たなレシピを実際に美味しく作ることが出来る。これらの作業を自然と出来る人のことを僕は“料理上手”と思うわけだ。
ややこしい書き方をしたが無意識にやってる人は結構多いと思う。要はネットで調べたレシピを見ながら「ここもっとこうしたら美味しいんじゃないかな〜」とアレンジしてるアレだ。料理上手になるために、アレの精度をとにかくひたすらに高めよう。という話をしていく。

実際に僕が一つのレシピの解像度を高め、状況や好みに合わせ最適化し、技術を用いて料理に落とし込む作業を見てもらうのが一番手取り早いと思うので今回は「若鶏のフリカッセ」という料理を徹底的に掘り下げていく。

…先に言っておくと前回のnoteは色んな職種の方から「通ずるものがある!」と喜んでもらえたが今回はあまりないんじゃないかなと思う。本当に一つのレシピをただ、ただ、深掘りしていくだけの、やってる僕が楽しいだけのnoteだ。

料理人や料理好きの方なら少しは楽しんでもらえるかな、それでも嫌になるかもしれない。「この人またやってるな〜」くらいの感覚で楽に読んで欲しい。

それでは本日も宜しくお願い致します。

Fricasse de poulet(フリカッセドプーレ)とは簡単に言うと鶏のクリーム煮込みにマッシュルーム、小玉ねぎ、バターライスなどを添えたフランスの家庭料理だ。僕の母校の教科書に載っているフリカッセのレシピをまず見てみる。

Fricasse de poulet(フリカッセドプーレ)

〈材料〉4人分

若鶏 1羽
バター 30g
玉ねぎ 140g
人参 60g
ポロネギの白い部分 50g
小麦粉 25g
白ワイン 200ml
フォンドヴォライユ(鶏の出汁) 800ml
ブーケガルニ 1束 ※1
生クリーム 200ml

(付け合わせ)
シャンピニョンの白いゆで煮
小玉ねぎの白いグラッセ
バターライス

サラダ油、塩、胡椒
セルフィーユ

①若鶏は胸肉に胸骨をつけて四つ落としにし、手羽先を関節で切り落とす。玉ねぎ、人参、ポロ葱は薄切りにする。

②鍋にバター30gとサラダ油を熱し、塩、胡椒をした肉を皮を下にして入れ、色付けないように焼く。

③肉を取り出し、1の野菜を入れてシュエ※2 する。小麦粉を加えて炒め、白ワインを加えアルコール分をとばす。肉を戻し、フォンドヴォライユを加え、沸騰したらエキュメ※3 し、ブーケガルニを加える。

④蓋をして弱火で約20分煮る。肉を取り出し余分な骨を取り除く。2つに切り分けてマンショネ※4 し、保温しておく。

⑤煮汁を半量まで煮詰めてシノワで漉し、塩、胡椒、で味を整えてソースにする。

⑥ ⑤に肉を戻して軽く煮る。肉を器に盛り、シャンピニオン、小玉ねぎを添える。ソースをかけ、バターライスを添える。セルフィーユを飾る。

※1 パセリの茎、タイム、ローリエなどの香草をポロネギの緑の部分で包みタコ糸で縛ったもの。
※2 汗をかくの意。色付けないようしんなり炒める。
※3 アクを取ること
※4 見栄えや食べやすさのために骨の先端を出すこと

参考文献:安藤裕康.小俣勝.戸田純弘「基礎からわかるフランス料理」柴田書店 2009.4.10 p247

以上がフリカッセの一般的なレシピだ。ここからこのレシピの方向性や疑問点を読み取りフリカッセに対する解像度を高めていく。

①解像度


まず初めに疑問点などは抜きにしてこのレシピは一体どういう意図でこのような材料、作り方になっているのかを掘り下げて考える。専門家が発信するレシピには大体何故このようなレシピになったか、ある程度の理由があるはずだ。(あって欲しいと思ってる)

数ある仕上がりの中から好み、調理環境、作業時間、金銭面(家庭料理なら食費、商品なら原価率)など様々なことを考慮し取捨選択して一つのレシピが出来上がる。


僕はその意図が読み取れず(読み取る努力をせず)否定だけでレシピをアレンジする行為はレシピの考案者に対して失礼なことだと思っている。「これ、もっとこうした方が美味しいんじゃないですか?」と安易な質問を料理人や料理研究家に投げかけている人をよく見るがみんなそんなことは全部分かった上でその材料や作り方を選択しているのだ。

SNSで、早くて簡単で美味しいレシピを提案している人に対して「化学調味料をこんなに使うなんて信じられない!」と思うならわざわざ言わずに化学調味料を使わない人のSNSだけを見れば良いし「こんなに手の込んだ料理面倒くさいしお金もかかるしやってられない!」と思う人もわざわざ言わずに簡単で美味しいレシピを提案してる人だけを見れば良い。
何が良い悪いではなくそれぞれが何を選ぶかなのでそこが入り乱れると誰も幸せにならない。

…話が逸れたが、とにかくレシピには意図があるということを言いたかった。フリカッセに戻る。

若鶏を使っているのは金銭面のこともあるのではないだろうか?このレシピは丁寧に作られているが基本的にフランスでは日本で言うクリームシチューのような感覚で食べられている家庭的な料理なので比較的安価な鶏で作る場合が多いと思う。それに味は良くても加熱の仕方によっては固くなりやすい地鶏などを使うのは調理的にも少々難易度が高い。柔らかく仕上がる若鶏の方が向いているし癖のない味もクリームソースの味を邪魔しない。

香味野菜も面白い。玉ねぎ、人参、と来たらセロリを使いそうなものだがここではポロネギを使用している。レシピの考案者はセロリの清涼感よりポロネギの優しい甘味の方がクリームとの親和性が高いと判断したのではないだろうか?

それと僕の勝手な解釈だがフランス料理の基礎を学ぶ為の本としてブーケガルニを使いたい→ブーケガルニにはポロネギの緑の部分を使うため白い部分が余る→ソースのベースに使おう。といった流れもあったのではないかと思う。

このレシピを読むと僕は「これはあくまで“教科書”である」ということを強く感じる。何でも良いからとにかく美味しく!ではなくフランスの古典料理、地方料理としての定義を崩さないギリギリのラインでの最適化をしよう…という意思が見える。

“白い煮込み”というフリカッセの大前提(オマールのフリカッセやキノコのフリカッセなど、茶色いフリカッセは沢山存在するがここで言うフリカッセは鶏のブルーテに生クリームを加えた“ソース・シュプレーム”使った鶏の白いフリカッセのこと)を守らねばならないから鶏も野菜もバターも加熱時に色付けないよう気をつけているし付け合わせも全て白く仕上げている。

定義として軽いラグゥ(煮込み)に分類されるこの料理は基本的に肉を美味しく食べる為の作り方をする場合が多い。このレシピも煮込み時間が短かったり、ソースを仕上げる前に一度肉を取り出し保温している点から肉の火通しを大事にしていることが窺える。長時間煮込んで柔らかくするのではなく加熱したり休ませたりしながらジャストの火入れを目指す、という点では煮込みと言うよりローストなどに近い考え方だ。

フランス料理には同じような白い煮込みとしてブランケット・ド・ヴォー(仔牛の白い煮込み)という料理があるが厳密に言うとブランケットはポシェ(茹でる)に分類される。仔牛を冷たい水に入れ徐々に温度を上げながら長時間火を通していくことで旨みを液体へ移す。その後旨味の移った液体を煮詰めクリームを加えソースとする。つまりこちらは肉の火通しや美味しさよりもソースを美味しくすることに重きを置いた料理ということだ。ブランケットとの差を明確にしておくことも教科書として、フランス料理の調理法を順序立てて説明する上で欠かせない大事なことなのだと思う。

クラシカルなフリカッセに使われるソースはソース・シュプレームという白いソースと決まっている。このソースは鶏のブルーテに生クリームを加えたものと定義される。
ブルーテというのは「各種出し汁にルゥ(小麦粉とバターを同量合わせ加熱し、冷やし固めたもの)で濃度をつけたもの」である。つまり、上のレシピを作っている時に出来る「バターとサラダ油で鶏肉を焼いて取出し、野菜を炒め小麦粉を入れ、そこに白ワインとフォン・ド・ヴォライユを加えた液体」はほとんど鶏のブルーテだと言える。そして仕上げに生クリームを加えることでソース・シュプレームの完成である。

掘り下げの作業を終えるとそれぞれの工程の意図が自分なりに理解でき、そのレシピへの愛着も湧いてくる。それに僕は今回久々に母校の教科書を読み、教科書のレシピというのは生徒に料理の作り方だけでなく歴史まで説明する為に細かいところまで定義を守って調理しているのだな…とレシピ考案者への尊敬の念も覚えた。

このようにレシピから食材選びや調理法の意図、その料理の背景などを読み取ることでこれから作ろうとしている料理への解像度はグンと上がるのだ。


②最適化


①で考案者の意図を自分なりに読み取りレシピに対する解像度がだいぶ上がったと思う。そうすると疑問に思うことやその改善点、意図は理解するが自分なら他の方法を選択する点、今の環境では再現できない点などが浮かんでくる。


●捌いた鶏のガラはどこに行ったのだろう?

鶏を捌くと必ずガラがでる。教科書は料理学校や飲食店で料理人が作ることを前提としているので、レシピに明記されてないが恐らく「冷凍ストックしておいてフォン・ド・ヴォライユにまわしましょう」ということだと思う。

レシピのフォン・ド・ヴォライユを見ていつ仕込んだんだ?と思う人もいるだろうがフランス料理店は大体フォン・ド・ヴォライユとフォン・ド・ボー(仔牛の出汁)は常に切らさないようにしているところが多い。しかし今回はこのレシピを家で作ろうとしているためフォン・ド・ヴォライユは持っていないし捌いた後出てくるガラの使い道もないのだ。(正直家にも出汁の冷凍ストックはあるし余ったガラの使い道もいくらでもあるがこのnoteを読んでフリカッセの再現をしてみたいと思った人が陥りそうな問題は潰していきたいので敢えてないということにする)

そうすると捌いた時に出るガラを使って出汁を取る工程をレシピの序盤に組み込まなければならない。さらに言うと捌いた時に出たガラの量が出汁を取るにしては少ない場合、元々のレシピに鶏ガラ単体を加える必要がある。

●鶏の捌き方は四つ落としで良いのか?

教科書は鶏を四つ落としという方法で捌いている。胸肉×2、腿肉×2にそれぞれ骨が付いた状態で分ける捌き方だ。なぜこの時点で骨を取らないかというと加熱時に身が縮みにくくするためだと思う。骨と肉は膜や筋で繋がっているため火が入って縮もうとする肉を骨が引き止めてくれるのだ。それと皮同様、骨がクッションのような役割を果たすので肉に関節的に火が入る。これも肉が固く縮むことを防いでくれる。(ジャストな火入れを仮定している。骨つきだろうと火を通し過ぎればもちろん固くなる)肉が縮まなければ筋繊維が押し潰されないため肉汁を保ったジューシーな仕上がりになるのだ。

それなら四つ落としで良いのでは?とも思うが四つ落としという捌き方は胸骨を左右どちらかにしか付けられないため胸肉の骨のつき方に差が出てしまうのだ。せっかく骨つきの良さを出した火通しを狙っているのであれば胸肉は二つに分けず腿肉とガラを外した状態(コッフルという)のまま火を入れたら良いのではないだろうか?


●香味野菜がポロ葱である必要はあるか?

(①解像度)の序盤に、ポロネギを使用しているのはブーケガルニを使いたいからという理由もあるのでは?僕の考えを述べた。その上で自分がポロネギを使いたいかと考えるとそうでもない。ブーケガルニはタイム、ローリエ、パセリの茎などの香草をポロネギの緑の部分で包みタコ糸で縛ったもので主に煮込み料理の香り付けに使われるが正直なところ僕は真面目にブーケガルニを作り使用している人を見たことがない。理由は簡単でブーケにする意味があまりないからだ。それぞれの香草をそのまま加えれば良い。ポロ葱の緑の部分で香草を包み、糸で縛っているのはバラバラにならないようにする為。バラバラにならないようにするのは後から取り出しやすくする為だ。ということは風味が付きすぎることを防ぐために煮込みの途中でブーケガルニを取り出すという工程がレシピのどこかに入っていても良いように感じるがレシピ上ブーケガルニが取り出されるのはシノワで漉すタイミング…ということは香草がバラバラで入っていてもなんの問題もないのではないだろうか?

ソースの構成としては必要だろうか?僕は香味野菜とは香りと甘味を補うものだと考えている。ソースに欠かせない香味野菜。フランス語でgarniture aromatique (ガルニチュールアロマティック)、香りの付け合わせと呼ばれ、香ばしく焼いた時の香りは特に茶色いソースに必要不可欠だと思う。フランス料理ではガストリックソース(砂糖をカラメル状にしヴィネガーで加熱を止め出汁や果汁などを加えたソース)を除いて基本的にソースに砂糖を使用しないため野菜の甘味はソース作りに欠かせないもので、玉葱、人参、セロリの3種を使う場合が多い。

香ばしく焼く場合はこの3種とも素晴らしい香りを出すがフリカッセのように色づけないように炒めた場合、玉葱と人参は甘味、セロリは甘味と香り(キレ味)、というようなイメージになると思う。そのセロリがポロネギに変わっているということは3種の香味野菜の役割が甘味、甘味、甘味、になってしまう。これでは香味野菜ではなく甘味野菜では?と思ってしまう。


クリームソースに清涼感のある香りは邪魔だ!とする料理人も多いかもしれないが僕はクリーム系のコッテリしたソースにこそ隠し味に清涼感のある香りと酸味が必要だと思っている。さりげなく入ったその2つの要素のおかげでコッテリしたクリームソースを最後まで美味しく食べることが出来るのだ。

以上の理由で僕はポロネギの部分をセロリに変えたいと思う。

●白く仕上げる工夫が随所に見られるのに胡椒は使用して良いのか?

フリカッセは白い煮込みという定義を律儀に守っている素晴らしいレシピ、素晴らしいからこそ下味と仕上げに胡椒をひいていることに違和感を感じる。香ばしく焼いた方が美味しそうなお肉を白いソースのため「色付けないよう焼く」と明記する徹底さがあるのにソースに黒いつぶつぶが入ってしまうことは許せるんだ…という僕のめんどくさいところが出てしまった。だがこれは意識してる料理人も多いように思う。クラシックなフレンチが好きなシェフはソースの美しさやのスープの澄み具合に神経質過ぎるほど拘る。せっかくここまで意識しているなら抜かりなく美しいソースに仕上げたいところだ。胡椒の香りだけを付ける方法なら色々とある。挽いた胡椒では細かすぎてシノワも通ってしまう可能性があるため粗く砕く程度にして濾す時に取り除けるようにしても良いだろう。

●香味野菜のカットは薄切りで良いのか?

レシピでは香味野菜を薄切りにしている。これは煮込み時間が短いため短時間で味を出したいからだ。出汁やソースの香味野菜のカットは煮出し時間と比例して大きくなる。短い煮込み時間のソースで野菜のカットが大きいと香りは出ても甘みが引き出されないし長い煮込み時間の出汁で薄切りや小さいカットの香味野菜を使うと野菜がぐずぐずになり出汁に溶け込んでしまい色が濁ったり味のシャープさがなくなってしまうのだ。

今回は出汁を取るところからやるので薄切りでは野菜が溶けてしまう。1時間とちょっとで作れる出汁にするので1.5センチ角位の角切りがベストではないだろうか。


●濃度の付け方は本当にサンジェが最適?

フランス料理ではリエゾン(濃度をつけるための材料、つなぎ)の種類がいくつかあり料理によって使い分ける。

⚪︎サンジェ
紹介したフリカッセのレシピはこのサンジェという方法で濃度をつけている。食材を炒めている鍋に直接小麦粉を振り入れ、全体が馴染んだら水を加え煮込む方法。ソースの濃度を見ながら少しずつリエゾンを加える、ということができないので慣れないうちは調整が難しいのと、煮込みの序盤でとろみがつくため鍋底が焦げつきに注意が必要。

⚪︎ルゥ
同量のバターと小麦粉を加熱しバットなどで平に冷やし固めたものを細かくカットしたり削ったりして濃度付けに使う。先に加熱して粉気を飛ばしている分、粉っぽくなりにくいがバター+小麦粉なので使う量を気をつけないとソースが重たくなってしまう。

⚪︎ブールマニエ
同量のバターと小麦粉を合わせたもの。加熱してないルゥだと思ってもらったらよい。ブールマニエの利点は正直どれだけ考えてもどんな本を読んでも僕には分からないのだが強いて言うなら作るのが楽、ということだと思う。とは言っても加熱してから固めたルゥの方が扱いやすいし粉気も飛んでるから濃度もつけやすいし結局総合的に楽なのはルゥなのでは…?と思っている。それに古書を読み漁ってもなかなかブールマニエを使っている料理に出会わない。僕が知っているのはMatelote d’anguille(マトロットダンギーユ)という鰻の赤ワイン煮込みくらいだ。これは大体どのレシピを読んでもブールマニエで濃度をつけてある。なぜかは本当に分からない。粉の種類やバターとの割合が違うならまだしも本当にただの加熱してないルゥなのだ。読者の中に料理人がいたら各々のブールマニエ論をDMなどで送ってくれると嬉しい。


⚪︎コーンスターチ
名前の通りとうもろこしの澱粉。これは皆さんも使ったことがあるのではないだろうか?水溶き片栗粉と同じような使い方簡単に濃度をつけることが出来る便利なもの。ソースに片栗粉を使ってしまうと中華餡のようなトロンとしたテクスチャーになってしまうのでコーンスターチを使う場合が多い。
片栗粉より粘度が低いが温度が下がっても粘度が持続するためお菓子にも使いやすい。
少し高価だが似たようなリエゾンで葛粉という選択肢もある。透明度もあるし粉の粒子も細かく滑らかなソースに仕上がる。


まだまだ濃度の付け方は沢山あるが上記4種類が一般的によく使われる方法だ。ではこの中でなぜサンジェが使われたのだろう?
まず第一にフリカッセが炒める工程がある煮込みであることが挙げられると思う。ブランケットのように水から煮込み始める料理では根本的にサンジェをするタイミングがないため初めから選択肢に入らないのだ。

次に煮込み時間が短いということもあると思う。同じように炒めたり焼いたりという工程がある煮込みは他にもある。例えば牛肉の赤ワイン煮込み。メイラード反応の香ばしさを煮込みの液体に乗せることで美味しい煮込みが出来上がる。焼くという工程が必須な料理だが何故かサンジェで作っているのを見たことがない。おそらく煮込み時間が長いからだ。赤ワイン煮込みは肉の美味しさとソースの美味しさを両立したい煮込みだと思う。(ここについて掘り下げだすと話がさらに長くなるのでまた次回)どちらも美味しくするためには結構な時間煮込まなければならないのだがサンジェで序盤に濃度をつけてしまうと、先にも書いた通り鍋底が焦げ付きやすくなってしまう。やることが山ほどある調理場の中で2〜3時間付きっきりで煮込みの世話をするわけにはいかない。多少放っておいても大丈夫なように濃度は肉が煮込み上がり、ソースの仕上げ段階に入ってから付けたいのだ。

その点フリカッセの煮込み時間は15〜20分程度。火加減に気をつければ焦げ付く心配も少ない。であればサンジェで先に濃度をつけてしまっても問題はない、というわけだ。

レシピがサンジェを選択した理由はおそらく分かったがアレンジする上でそれは最適だろうか?

今回は最初に書いた「家にフォンドヴォライユのストックがない」ということを想定して鶏の出汁から作ろうと思っている。通常のフリカッセはフォンドヴォライユが調理場にあると仮定しているため煮込み時間が短くて済むがベースから作ろうと思うと出汁だけで1時間くらいはかかる。

ということは先に濃度をつけてしまったらその後の世話が大変になるかもしれない。それに濃度のついた液体よりサラサラした液体の方がガラや野菜の味を抽出しやすい。

ではサンジェはやめるとして残る選択肢はルゥ、ブールマニエ、コーンスターチだ。

ブールマニエは先に書いた通り利点が分からないため使用したくない。

コーンスターチは使い勝手が良いがクリーム系より茶色系のソース(ジュと呼ばれる軽めの肉のソースなど)の方がテクスチャー的に相性が良いと思っている。片栗粉まではいかないがコーンスターチのとろみも多少の“餡っぽさ”があるからだ。クリーム系には小麦粉由来のトロミの方が良い気がする。ベシャメルソースなどを想像してもらえると分かりやすいかと思う。

残るはルゥ。小麦粉がベースなので理想のとろみを付けられそうだ。バターの風味もクリームと相性が良い。使い方によっては重くなりすぎることがあるため注意は必要だがクラシカルな料理のため、多少の重厚感はあった方が良いと思う。

サンジェのところをそのままルゥに変えるとソースに対するバターの量が過剰に多くなってしまう気がするが初めに鶏を焼くときに使用しているバター(30g)を無くしサラダ油のみにすれば結果的にソースのバター含有量は増えずに済むだろう。


●クリームソースのバランスに必要不可欠な“酸味”は最初に加える白ワインだけで大丈夫?

先ほど、クリーム系のコッテリしたソースにこそ隠し味に清涼感のある香りと酸味が必要だと思っている。と書いたがレシピで酸味の要素は白ワインだけだ。鶏の凝縮したエキスと生クリームやバターのコクとのバランスが200gの白ワインだけで取れるだろうか?

好みにもよるがおそらく僕はもう少し何か欲しくなるに違いない。では何をプラスしよう?

まずガルニチュールアロマティックをポロネギからセロリに変えたがセロリはなるべく葉付きのものを選びたい。セロリの葉はえぐみがありクリームソースには邪魔な要素のように感じるが香り自体は茎よりも強い。玉ねぎ、人参、セロリの茎を炒めるタイミングで入れるとえぐみまでソースに乗ってしまうため葉は別に取っておいて仕上げの手前でその香りのみソースに抽出したらどうろうか?

酸味はやはり白ワインだけでは足りないと思うので仕上げにレモン汁を絞ろうと思う。クリームとの相性は言わずもがな抜群だ。ヴィネガーで酸味をつけることも出来るが酢酸はエッジが立ちすぎる。ライムや酢橘などの青い果実も決して相性が悪いわけではないがあくまでクラシックな路線で美味しくしたいと思ってる今回のフリカッセには違うだろう。(ハーブを効かせて青い果汁でまとめたフリカッセもかなり美味しそうなのでそれは後日改めて作りたいと思う)


このようにしてレシピを読み解き解像度を高め、浮かび上がってきた疑問点とその解決法を考え、自分の好みと擦り合わせていくという工程を経てようやく今出来るフリカッセの最適解が見えてくるのだ。

③技術


ではこれまでの内容を踏まえ考えたレシピを実際に作っていく。料理をやっている中でこの瞬間が一番ワクワクしているかもしれない。散々考え抜き、絶対に美味しくなるぞ!という気持ちで調理にとりかかる。だがワクワクしていたのも束の間、やってみると問題点がまたどんどん浮かび上がってきて試作の沼に入り途方に暮れる。その繰り返しだ。

昔は経験を積めば積むだけその繰り返しが減ると思っていた。デキる料理人は一回の試作でバチッとバランスを決めてどんどん料理を生み出せるものだと思っていた。そう思って勉強や練習を繰り返してきたのだが自分の知識が増えれば増えるほど、自分の味覚が敏感になればなるほど、自分の作るものに納得がいかなくなってくるということが最近分かってきた。

それはそうだ。昔は知らない味が沢山あったからなんとなく美味しいだけで納得できていた(知らないからそれが美味しいと思い込んでいた)が今はもうそれが出来ない。知ってしまったから。

美味しいものを知ってしまった以上、自分の知ってる最上級の味が試作ではボトムにならなければならない。でなければ自分の美味しいがいつまで経っても更新されない。試作の回数は年々増える一方だ。途方もないなぁといつも思う。楽しいから良いけど。

下記が新しいフリカッセのレシピだ。
作り方は分かりやすいよう写真を交えながら解説していく。

Fricasse de poulet 

〈材料〉2人前

・小さめの若鶏 1羽
・サラダ油 適量

・鶏ガラ 1羽分
・玉ねぎ 1/2個(140〜150g)
・人参 70〜80g
・セロリの茎 70〜80g
・ローリエ 1枚

・白ワイン 200ml
・水 1リットル

・白胡椒ホール 3g
・セロリの葉

・生クリーム47% 200ml
・サワークリーム 50g

⚪︎ルゥ 40〜60g(液体量によって変わるので濃度を見ながら調整)
・小麦粉30
・バター30

・塩 3〜5g(液体量によって変わるので味をみながら調整)
・レモン汁 適量(1/6コ分くらい)

⚪︎付け合わせ

・マッシュルーム 6個
・小玉ねぎ 6個
◉バターライス
・米 200g
・鶏の出汁 200g
・水 50g
・玉ねぎ 1/4コ
・バター 15g
・塩 4g
・鶏油 大さじ1(ガラを焼いた時に出たもの)

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〈作り方〉

①鶏を捌く。

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⑴手羽中と手羽元をハサミで切り離す。

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⑵腿肉と胸肉の間の皮に切り込みを入れる。なるべく胸肉の方に皮が残るようにする。

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⑶逆さにして十字に切り込みを入れる。

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⑷ソリレスという足の付け根あたりにある丸い肉を外す。最初に包丁の切先で少し切り込みを入れれば後は親指で外せる。

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⑸胸肉と腿肉を分ける。筋で繋がっている部分だけ包丁で切りながら手で引っ張るようする。

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⑹頭側をまな板につけ、お尻側を左手で持つ。肩甲骨に切り込みを入れる。

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⑺切り込みを入れた肩甲骨を下にし、お尻側が右に向くように置く。横隔膜に切り込みを入れる。

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⑻包丁でガラを押さえ、左手で胸肉を引き剥がす。

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⑼肩甲骨をハサミで切る

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⑽胸肉の首側にV字に切り込みを入れフルシェット(鎖骨)を取る。

(写真が撮れてませんでした…すみませんがネットなどでお調べ下さい🙇‍♂️火を入れた後、捌くときに少々邪魔になりますが絶対に取らなければ捌けない、という訳でもないのでそのままでも大丈夫です)

(11)腿肉を太腿とふくらはぎに分ける。写真の位置に間接があるのでスパッと切れる。

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(12)ふくらはぎの先を関節の手前で切り落とし骨を出す。包丁で一周切り込みを入れてからハサミで切ると楽。

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(13)レシピのガラと捌いたガラ、手羽をハサミで細かく刻む。

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※変更点

・なるべく全ての部位を骨つきのまま火入れしたいので四つ落としにせず左右どちらの胸肉も胸骨についた状態にする。

・基本的にジャストな火入れを目指していくが煮込みらしい美味しさも味わいたいため、鶏の中では比較的しっかり煮込んでも美味しい部位であるふくらはぎだけはソース作りの段階から煮込んでいこうと思う。そのため腿肉は関節で二つに分けた。

・ガラは捌いた鶏のものだけでは少ないため別でもう一羽分用意した。


②鍋にサラダ油を熱し、塩を振った鶏肉を入れる。皮目が薄く色づくまで焼いたらバットに取り出す。

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※変更点

・ルゥで濃度付けをするためここではバターを使用しない。バターの風味が強いソースも美味しいが重たくなってしまうのとキレのある味をマスキングしてしまう恐れがあるため極力使用量を減らしたいから。

・なるべく綺麗なソースに仕上げたいためここでは胡椒を使用しない。

・肉を全く色付けないよりは写真のようにソースの色に過剰に影響が出ない程度に焼いた方が美味しいと思うため教科書よりは色をつける。


③ 肉を取り出した鍋に細かく刻んだガラを入れる。ガラは色づき過ぎないよう注意しつつ脂を吐き切るように焼いていく。脂ができったら一度ザル上げして脂を取り除き、1.5センチ角の角切りにした玉ねぎ、人参、セロリの茎、ローリエと一緒に鍋に戻す。この時ふくらはぎの肉も一緒に入れる。香味野菜の香りが立ってきたら白ワインを加えアルコールを飛ばし水1リットルを加える。沸騰したらアクを取り、まずは弱火で30分ほど炊く。バターライス用の出汁も欲しいので15〜20分ほど炊いた時点で出汁を200g取っておく。その間にルゥとバターライスを仕込む。

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※変更点

・フォンドヴォライユがないので出汁を取るところから始めている。過剰に色は付けたくないが多少の香ばしさは大事なのでガラはある程度焼く。


・香味野菜はポロネギをセロリに変えカットの仕方も薄切りから1.5センチ角に変えてある。

・ブーケガル二は使用せずローリエのみとした。他の香り付けは仕上げ直前で行う。

・ふくらはぎの肉はしっかり火を通した煮込みらしいホロホロの食感を狙いたいのでこの時点で入れる。


・サンジェはしないので小麦粉は入れない。


ザル上げしたガラから出た鶏油は良い香りがするので後ほどバターライスを炊くときに使用する。


④ルゥを作る。鍋にバターを入れ弱火にかけ、焦げないように溶かしたら小麦粉を加える。ゴムベラで色づかないよう混ぜながら加熱する。濃度が最初よりサラサラなってきたら粉気が飛んだ合図なのでバットなどに入れ薄く伸ばし、粗熱が取れたら冷凍庫に入れる。固まったら使いやすいよう細かく刻んでおく。

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⑤バターライスを作る。蓋ごとオーブンに入れられる鍋を用意する。(なければアルミホイルで蓋をすれば良い)玉ねぎを微塵切りにし、バターで色付けないように炒める。しんなりしてきたら米を加える。米が割れないよう優しく混ぜ合わせ全体が熱くなったら先程200g取っておいた鶏の出汁、水50g、鶏油、塩を加える。沸騰したら蓋を閉め180度のオーブンで18〜20分加熱する。米が炊けたら優しくしゃもじで混ぜ蓋をして蒸らしておく。

バターライスをオーブンに入れるときに小玉ねぎも一緒にオーブンで焼く。皮ごとアルミホイルに包み180度のオーブンで60分程。焼けたら皮を剥いて半割りにしておく。

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※変更点

・バターライスはソースとの相性を考え固めに炊きたいので水分量を少なめにしてある。ガラを焼く時に出た鶏油を加えることで鶏の旨味や香りがお米に付くのと、米に対する油脂分の量が増えることで米がしっかり油でコーティングされるため、パラパラに炊き上がる。


・教科書は小玉ねぎをバターと砂糖でグラッセにするが、個人的に付け合わせとして甘ったるいグラッセがあるのが苦手(ハンバーグについてくるニンジンのグラッセもあまり好きじゃない。なんで元々甘い野菜を甘くするの…と思ってしまう)なのでシンプルにローストして野菜自体の甘みを引き出した。


⑥マッシュルームをトゥルネする。ペティナイフで捻りながら切り込みを入れるとこの様な模様が付く。最近はあまり見ない作業だがクラシックな付け合わせとしてよく使われる。軸と削った時に出た部分は炊いてる出汁に加える。

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※変更点

・元のレシピ通り、前もって茹でておく方法だととしなしなになってしまう。マッシュルームはさっと火が入ってサクッとした歯応えが少し残った状態が好きなので仕上げの直前でソースの中で軽く火を通す。


⑦出汁を炊き始めて30分ほど経過すると煮詰まってガラが少し液体の表面に見えてくる。(鍋のサイズにもよる)そこまできたら鶏の火入れを始める。胸肉と腿肉を皮が上になるように入れ蓋をして弱火で3分。裏返して再び蓋をし2分。ここで腿肉だけバット取り出し、胸肉はまた裏返して蓋をし3分加熱する。蓋を外し鶏肉を触ってみて押し返すような弾力があればバットに取り出し乾燥しないようラップを被せ休ませる。鶏肉が大きい場合もう少し時間がかかる。この時点での火入れは7〜8割、休ませてる間に余熱で9割くらいになるイメージ。

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※変更点

・元々は弱火で20分煮込む、となっているがそれでは肉がパサついてしまう。胸肉は煮込んで美味しい部位ではないためより衛生的に安全な範囲でジャストな火入れを目指したい。肉全体が液体に浸かっていると熱が強く当たるため、ガラと香味野菜の上に肉を置き、出汁が蒸発する水蒸気で蒸すようなイメージで優しく火入れを行う。全体に均一に火を入れたいので途中で上下を入れ替える。液体に直接触れている面は皮や骨がクッションとなっているため比較的優しく火は入るが、皮の方が骨より薄いため皮が下の時の加熱時間だけ1分短くしてある。


⑧出汁を炊き始めて1時間ほど経ったら先に新しい鍋にふくらはぎを取り出し、出汁をシノワ(なければ目の細かいザル)で漉す。漉す際に野菜が潰れるほど力強く押してしまうと野菜がペースト上になりソースに混ざってソースのシャープさがなくなってしまうので優しく押すように気をつける。(ソースによってはしっかり押すもの、絶対に押してはならないものなどもある)濾したソースを弱火にかけ2/3量に煮詰める。

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※変更点

・ふくらはぎを取り出すことを忘れない様にする。すでに柔らかくなっているはずなので優しく扱う。

・元のレシピでは半量に煮詰めているが、小さく切ったガラを焼いて取った出汁は通常のフォンドヴォライユより凝縮感のある液体になるため2/3量で充分濃厚なエキスになる。


⑨ソースを煮詰めている間にサワークリームと生クリームを合わせる。一気に混ぜるとダマができるので少し合わせると良い。ふくらはぎのマンショネもこのタイミングで行う。

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※変更点

・サワークリームを加えることで生クリーム単体では出せない乳製品らしい程よい酸味が加わる。


⑩ソースが煮詰まったら粗く砕いた白胡椒と手で揉んで香りを出したセロリの葉を加え1〜2分煮て香りを移す。⑨のクリームを加え全体を馴染ませたらルゥでトロミを付け新しい鍋に先にふくらはぎを取り出し、シノワで漉す。

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※変更点

・白胡椒とセロリの葉を香り付けで使っている。白胡椒はシノワで漉す際に通ってしまわないようミルでひかず、肉叩きや小さな鍋の底などで粗砕きにする。(後日反省点をまとめるが家のシノワがあまり細かいものではなかったため胡椒のつぶつぶが少しソースに入ってしまった…悔やまれる…)セロリは手で揉んで香りを出す。葉の量は個体差があるが写真より多くても大丈夫。むしろもうちょっとあった方が良いと思う。

・教科書はサンジェだったがアレンジ版はこのタイミングでルゥを加える。ソースの詰まり具合によって入るルゥの量は変わるので濃度をみながら調整する。好みだが、思い浮かべるクリームシチューより少しサラッとしたくらいで止めるとちょうど良いと思う。ルゥは沸騰しないと濃度がつかないため、入れすぎないよう気をつける。


⑪鶏肉を捌く。胸骨の横ギリギリに包丁を入れそのまま骨に沿って切っていけば胸肉が外れる。ササミは手で簡単に取れる。腿肉は関節部分を持って優しく引っ張り骨を外す。この時点で火入れは9割位になっているはず。このまま齧り付きたくなるような妖艶な魅力を放っているが鶏肉の中途半端な火通しはカンピロバクターの危険があるのでもう少し我慢し、ソースの中で最終的な火入れを行う。ソースを火にかけ沸騰したら弱火にし、捌いた肉と⑥のマッシュルームを加える。30秒ほど弱火で加熱し、火を止め2〜3分程まてば火入れは完了。(捌いた状態の火入れが写真より甘かったら弱火のまま1分、その後5分位待った方が良いと思う。肉が大きければもっとかかる。鍋のサイズや鶏のサイズによって加熱時間は異なり正確な時間は書けないためこのような曖昧な表記になってしまい申し訳ない)

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※変更点

・元々のレシピよりジャストな火入れを目指したいので仕上げの火入れはソースの中で行う。よりジューシーに仕上げるための変更だが食中毒には注意が必要。カンピロバクターは65度なら数分、75度なら1分で死滅する。75度までいくと肉がパサついて美味しさが半減してしまうので中心温度65〜68度を目指したい。

・マッシュルームはサクッとした食感が少し残るような火入れにしたいためこのタイミングで加える。

⑫肉をまな板に取り出したら塩とレモン汁でソースの最終的な味を整える。胸肉を1.2〜1.5センチの幅にスライス、腿肉は1/2にカットし皿に盛り付け完成。

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※変更点

・仕上げの酸味の調整にレモン汁を使用している。濃厚なソースを飽きずに食べるために欠かせない酸味だが入れすぎると濃厚さがなくなってもったいないので酸味を立たせるわけではなくあくまで味を引き締めるイメージで使う。

・通常のフリカッセは胸肉をもっと大きくカットするが今回は敢えて薄めにスライスした。これは咀嚼後にソースと肉が口の中からなくなるタイミングを合わせたいから。肉が大きいと咀嚼していくうちに美味しいソースが先になくなり後半肉だけを噛んでいるような状態になる。あくまで個人的な意見だが僕は飲み込む瞬間に感じる味や香りが一番その料理の印象に直結すると思っている。どれだけソースが美味しくても、肉のカットが大きく飲み込む瞬間口の中に残るのが咀嚼によって味が抜け切った肉だけだったらそれがその料理の印象にならないだろうか?しっかり煮込んだ柔らかい赤ワイン煮込みなどはカットが大きくてもソースと一緒に肉も口の中で溶けるようになくなるため飲み込むタイミングは大体揃うと思う。フリカッセはしっかり煮込んで柔らかくするタイプの煮込みではないため、カットの仕方を工夫し、濃厚で美味しいソースと滑らかな火入れの肉が口の中から同時に消えていくようにしたかった。


随分かかったが母校の教科書のレシピを細かく読み取り解像度を高め、家庭のキッチンという状況や自分の好みに合わせた最適化をし、それをこれまで培ってきた技術で実際再現した今の自分が思う一番美味しいフリカッセが完成した。(反省点も沢山あるのでまた後日他のnoteにまとようと思う)

決して、料理上手になるためには一つのレシピをここまで掘り下げる必要がある!と言いたいわけではない。こんなめんどくさいことを考えてる人は料理人にもなかなかいないと思う。僕も毎回必ず行なっているわけではない。ただ、暇な時に何か一つ自分の好きな料理を過剰なまでに掘り下げるというのはおすすめだ。浅く広く手を出すより一つを深く知った方が結果的に他の料理の理解も深まると思う。なにより考えれば考えるだけどんどん楽しくなってくる。どんどんその料理への愛着が湧いてくる。そういう料理が一つあるというのは幸せなことな気がする。

色んな方から聞かれる「どうやったら料理上手になれますか?」という質問、誰もこんな長文で返ってくるとは思ってなかっただろうな。僕がアレンジしたフリカッセを再現すれば料理上手になれますよ!ということが伝えたかったわけではい。そう読み取れる文になっていたら僕の文章力がなかったんだと思う。はじめの方にレシピには意図があると書いた。今日の文章もそうだ。長ったらしい解説はただのオタクの戯言として流してくれて良い。要するにどうしたら良いの?というのは各々で読み取って日々の料理に生かしてくれたらと思う。


                  枯朽 h.b.

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料理の上達方法

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