見出し画像

暴力を伴う外交③「国際連合と戦争違法化」

かつて戦争は合法だったが、今は違法である。人類史の始まりから戦争の違法化は試みられていたが、18世紀から「戦争は国家間紛争の最終的な解決手段として主権国家が持つ正統な権利である」とされ、宣戦布告から始まり、最後は占領や講和条約により賠償や様々な利益を得ることが常態化していた。しかし2度の世界大戦を経験した各国の要請から、190以上の国が調印した国連憲章により国権の発動たる戦争は完全違法化され、武力の行使も各国の自衛権行使と国連自身の武力行使を除いて違法化された。

国連の組織として常任理事国5カ国と非常任理事国10カ国からなる安全保障理事会(安保理)が存在する。何らかの武力紛争が発生した場合、これを安保理が国連憲章39条に則り「平和に対する脅威」などと事態を認定することから対処が始まる。そして認定された事態への措置案が安保理に提案され、出席しているすべての常任理事国の同意とともに理事国9カ国以上の賛成により決議される。

措置にはいくつか種類があり、40条に基づく法的拘束力のない勧告による「暫定措置」、41条に基づく経済制裁や外交上の措置などによる「非軍事的措置」、そして42条に基づく軍事力を使った示威や封鎖その他行動による「軍事的措置」がある。非軍事的措置と軍事的措置には法的拘束力があるため、国連加盟国は安保理の決定内容に従う必要がある。特に軍事的措置は、43条に基づいて国連加盟国が兵力や援助などを安保理に提供し、この兵力を46条と47条に基づいて国連に設置された軍事参謀委員会の助言を受けた安保理が指揮し、もって編成された国連軍が措置を実行することになる。なお武力による被害を受けている国連加盟国は、国連が有効な措置をとるまでは51条に基づいて個別的・集団的自衛権を行使できるとともに、そのとった行動を直ちに安保理へ報告する義務を負う。

しかし国連は諸々な機能不全により、先に挙げた形態での国連軍を組織したことはない。国連軍の編成に必要な兵力は43条に基づいた兵力提供協定により各国が事前に提供することになっているが、この兵力提供協定が結ばれた事はない。また常任理事国が持つ安保理決議案への拒否権行使により、そもそも有効な措置を決議できないことが多々ある。この拒否権の問題は、国連総会で開催する「平和のための決議集会」にて賛成多数を得ることで決議とし、ある程度解決している。そして、正式な国連軍ではないものの、これら国連の要請により組織された軍を多国籍軍と呼び、要請が不明瞭な場合は有志連合軍などと呼ぶ。

また強制措置以外の安保理や国連総会の行動として、停戦した両国の要請によるその停戦や兵力引き離しの監視という伝統的PKO、加えて統治機構の再構築や選挙監視なども行う多機能型PKO、同意がなくとも自衛以外の武力行使も許容して積極的に平和構築を行う平和執行型PKOがある。

「戦争」は許されるのか? 国際法で読み解く武力行使のルール(稲葉義泰)
戦争の違法化について | ブログ | 愛知学院大学社会連携センター(法務支援)
戦争の違法化とその歴史
いわゆる 「無差別戦争観」と戦争の違法化

国連憲章テキスト | 国連広報センター
強制措置 | 国連広報センター

戦争を禁止し、戦争のルールを定める国際法とは
戦争の違法化について | ブログ | 愛知学院大学社会連携センター(法務支援)
戦争の違法化とその歴史
いわゆる 「無差別戦争観」と戦争の違法化
(海上自衛隊幹部学校戦略研究会 コラム 230 2022/05/12) [国際法から見たロシアによるウクライナ侵攻

正戦論 - Wikipedia
国際連合憲章第7章 - Wikipedia
平和のための結集決議 - Wikipedia
国連軍 - Wikipedia
国連軍 (朝鮮半島) - Wikipedia
多国籍軍 - Wikipedia


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?