AR-15のゼロ(ゼロイン)の適切な距離は?

Green Eye TacticalのEric Dorenbus氏が興味深い動画をアップロードしていました。内容は表題の通りARをどの距離でゼロすべきかと言う内容です。何より面白いのは冒頭で「今回はいつも話題に出続ける、どの距離でゼロするかと言う話題に対してクイックに説明するよ」と言いながら動画左下に表示してある動画の総時間を見ると1時間17分の動画になっている点です。

Green Eye Tactical


まあ、それは冗談として、エアソフトガンでも気になるゼロの問題は実銃でも当然つきまとい、実銃もエアガンの様に弾に放物線を描かせて飛ばせるしか無いわけです。

結論としては「何の情報も無しに言われてもわからんわ(超絶意訳)」と言うことになります。あと「デルタは"6 inches window"」です。では詳細を見ていきましょう。動画が英語なので観ませんという人、よかったら最近作った曲聞いてね。

なお、本記事は結構端折ってます。そもそもこういう情報を本当に深く知りたいなら英語を勉強しましょうと言っておきます。間違いの訂正指摘はウェルカムです。

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さて、エリック氏は最低限3つの「ライン」を考慮しないといけないと述べています。

1.照準器のライン(上の画像の中で黒のライン)
2.銃身のライン(上の画像の中で青のライン)
3.実際の弾の軌道のライン(上の画像で黄色のライン)

上の画像では銃とサイトが「理想的に」地面に対し平行であり、照準器と銃身も「理想的に」平行であれば、照準器の狙うラインと銃身のラインは徹底的にどこまでも平行であり、実際に射出される弾は前に進むにつれ落下していくと考えられます。これは当然と言えば当然で、理解できると思います。

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で、当然地面に弾を当てたいわけでは無いので照準の調整をするわけです。実際は上の画像の様に銃身のラインを上に向けることで、照準のラインと弾道のラインをクロスさせることができるようになります。この時、弾道は放物線を描く事から、照準のラインと2回交差します。どうやらシューターの間ではこの照準のラインと弾道のラインの「近い交差点」と「遠い交差点」の距離を取ってゼロの距離のを表すことがある様です(例:50/200(フィフティートゥーハンドレッド))。確かメートル単位。

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世の中によく広まっているゼロインの距離としては以下の様なものがある模様。

・25/300 標準的な軍隊方針のゼロ
・50/200 標準的な修正後のゼロ
・100 スコープ向け

では、これらのゼロの距離について議論する前に、以下のことを念頭において欲しいとのこと。

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・弾薬
・ライフル
・環境

これらはゼロに影響を与える要因になるうるからです。これはエリック氏なりにわかりやすい様に3項目にブレイクダウンした内容とのこと。ここではあくまでも機械的に弾道を光学サイトに合わせるという事について話しているのであって基礎について話しているのでは無いとの説明が入っていますが正直ここは良くわかりません。

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弾薬について考えるべき項目はさらに上記画像の様にブレイクダウンされています。ここは端折ります、自分で動画を見てください。時短まとめをすると弾薬についても最も重要な点は初速です。これは弾のドロップ(落下)に大きく影響するとのこと。動画ではこの後の別の項目の説明で「5.56mm同士だから、.223同士だから『同じ弾』というわけでは無い」という説明が入ります。これは超ざっくり言うと「同じ規格」の5.56mmとされていても、作るメーカーが異なると同規格で作っているのにも関らず差が出るということです。

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さて、ライフルについてです。

・サイトの高さ
・バレルの長さ
・バレルのツイストレート

上記の3項目がゼロに影響を与えるとしています。

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最後に環境です。これは気圧、気温、風速、湿度としています。弾は空気の間を通り抜けていくので当然影響が出るわけです。

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また、補足として彼のトレーニングクラスの参加者のバレル長が違う各ARからとったドロップのデータを説明。正直Uncorrect(ed?) dropが何を指すかわからないところですが16インチバレルのARは「同じ5.56mm」の規格を使っていても弾のドロップに差が出るし、弾もバレル長も変われば当然弾のドロップはまた変わる、という解釈で良いかと思います。

さて、ここまできて分かってきたのは、弾、ライフル、環境で弾のドロップは変わる。それなのに「標準」ゼロとは何だ?ということです。Eric氏は上の画像のデータを取った参加者のライフルの弾道は全て50mで照準器のラインと「近い交差点」となり、200mで「遠い交差点」になりえるかと言えますか?と問いかけています。(当然弾のドロップが違うわけで困難です)

さて、ここからがエリック氏の「カスタムゼロ」の話になります。下の画像は先ほどの画像の中の14.5インチバレルのARの弾道データです。このARの持主はLE関係者とのことで、50ヤードでゼロを設定していたこと。理由はそうする様にと彼の組織内で指示されていたからです。

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(その隊員はヤードでゼロしていたためメートルではなくヤードで話しますが)実際に50/200になっているのかを確認すると、彼のライフルは200ヤードではPOI(着弾点)がPOA(サイトで狙いをつけている点)より4.64インチ低い結果となりました。50/200のゼロの前提であれば50ヤードと200ヤードではPOAとPOIが一致するはずなわけですが、現実にはズレていることを証明しています。

ここからはEric氏の持論ですが、彼はあくまでも自分の目的に合っていて、根拠を持って許容できるエラーのレンジを持っているのであれば別に構わないと言う前提のもとで以下の様に話します。

この200ヤードでの4.64インチのズレは人によっては「たった4.64インチ」という言うかもしれないがこれは大きな違いであるとしています。Eric氏はまず、自分が弾を通したい「枠(window)」を設定することを提案しており、彼は上下+/-3インチの枠となる様に「近い交差点」を設定すると言います。この上下3インチ(計6インチ)とは大凡頭の大きさであり、ヘッドショットを決めやすい範囲だからとのこと。具体的にはEric氏はサイトのラインからはみ出す弾道の放物線の最大上昇値を+3インチ未満になる様に設定し、弾のドロップがサイトラインから-3インチ外れる距離を割り出している様です。つまり、この6インチの「枠」のレンジであればサイトで顔面ど真ん中を狙えば頭にGood-to-Go(とりあえず当たる)と言うことです。(なお、もちろん「最初の交差点」に弾が到達する手前の距離でのサイトラインの高さと着弾点の差を理解した上で、と補足しています)

ここでEric氏が言いたいのは「標準」といった言葉に惑わされずに、適切なゼロの距離を割り出しなさいとのこと。上記LEの参加者が今後も盲目的に50/200を信じていたら彼の所属機関のシューティングレンジは200ヤードもないため、200ヤードでの着弾点を把握することはなかったでしょう。そして実際に事件が起き、出動際に200ヤード先の標的に狙いをつけるも、弾が4.62ンチドロップしてそこに人質がいたらどうするのか?とも述べています。200ヤードというのは彼らの仕事の中ではあまりにも長距離レンジに感じるが、テキサス州の学校やショッピングモールの屋内でも十分あり得る距離であり、屋内だからCQBレンジだけ気にしてれば良いとは言えず、屋外での事件であれば尚更200ヤードの射撃の可能性は捨てきれないだろうとも主張しています。

もう一つ彼が主張しているのは「データを取れ」ということです。使う弾、ライフル、環境を想定した弾のエレベーション/ドロップデータを取ることで初めてカスタムゼロができます。動画の中ではデータ採りのための機材の話も少し挟んでます。

実際にEric氏のRifle Fundamentalのコースでは自分の使うライフルと持参した弾で実際の初速を図り、弾道計算ソフトから適切なゼロの距離を割り出し、そこにサイトのゼロを合わせます。そこから初めて目標に対して弾道の修正(例えばPOAを少し上げる、下げる)が自信を持ってできる様になります。以前彼のクラスで前後の会話の流れは省きますが「標的がボディーアーマー着ていたらどうするのか?」と尋ねたら「ユニットガイの連中には『ヘッドショットオンリー』の指示が出ることもあるが、基本的には効果が出るまで撃ち込めば良い」と言われてのをよく覚えています。元デルタフォースのEric氏としてはヘッドショットを重要視している様ですので、尚更論理的なゼロを求めているのでしょう。

で、改めて結論ですが、今まで説明してきた様々な要素が絡み合いゼロを定める訳なのでただ一言「ゼロの距離はどこにすれば良いか?」ということについては万人共通の回答はないということになります。

実際カスタムゼロについては彼のクラスでも直接聞いていたのですが正直うろ覚えだったので良い復習になりました。

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