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旧司法試験 憲法 平成17年度 第1問


問題

 酒類が致酔性・依存性を有する飲料であり、飲酒者自身の健康面に与える悪影響が大きく、酩酊者の行動が周囲の者に迷惑を及ぼすことが多いほか、種々の社会的費用(医療費の増大による公的医療保険制度への影響等)も生じることにかんがみて、次の内容の法律が制定されたとする。
 1 飲食店で客に酒類を提供するには、都道府県知事から酒類提供免許を取得することを要する。酩酊者(アルコールの影響により正常な行為ができないおそれのある状態にある者)に酒類を提供することは当該免許の取消事由となる。
 2 道路、公園、駅その他の公共の場所において管理者の許可なく飲酒することを禁止し、これに違反した者は拘留又は科料に処する。
 この法律に含まれる憲法上の問題点について論ぜよ。

関連条文等

憲法
13条(第3章 国民の権利及び義務):個人の尊重・幸福追求権・公共の福祉
22条1項(第3章 国民の権利及び義務):職業選択の自由(営業の自由)

一言で何の問題か

1 営業の自由と消極目的規制、LRAの基準
2 新しい人権と比較衡量

答案の筋

1 酩酊者への飲酒禁止の主目的は周囲の者の安全確保という消極的目的であるため、違反した場合の処分としては業務停止命令等による抑止効果で十分であり、免許取消によって営業を一切行えなくするという重大な処分を採る必要は無い。このため、より緩やかな制限によって目的を十分に達することができ、違憲である。
2 権利の性質上制約される必要性がある自由(どこでも飲酒)であり、規制態様としての刑罰は拘留又は過料として厳罰とは言えないことから、比較的緩やかな違憲審査基準である比較衡量により決すべきであるところ、得られる公益的利益は、制限される限定的な利益よりも大きいと言え、合憲である。

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