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旧司法試験 民法 昭和53年度 第1問


問題

 Aは、その所有の事務所用建物について、債権者甲のために抵当権を設定し、その登記をした後、抵当権の設定当時からその建物に備え付けられていた冷暖房用の機械を新式のものと取り替え、新しい機械を他の債権者乙のために譲渡担保に供した。
 乙は、Aが弁済期に債務を履行しないので、Aの承認の下にその機械を取り外して持ち出し、丙に売却した。
 この場合における甲・乙間及び甲・丙間の法律関係を説明せよ。

関連条文

民法
87条(第1編 総則 第4章 物):主物及び従物
183条(第2編 物権 第2章 占有権 第1節 占有権の取得):占有改定
192条(第2編 物権 第2章 占有権 第2節 占有権の効力):即時取得
242条(第2編 物権 第3章 所有権 第2節 所有権の取得):不動産の付合
304条(第2編 物権 第8章 先取特権 第1節 総則):物上代位
369条1項(第2編 物権 第10章 抵当権 第1節 総則):抵当権の内容
370条(第2編 物権 第10章 抵当権 第1節 総則):抵当権の効力の及ぶ範囲
372条(第2編 物権 第10章 抵当権 第1節 総則):留置権等の規定の準用
709条(第3編 債権 第5章 不法行為):不法行為による損害賠償

一言で何の問題か

抵当権と譲渡担保権の優劣、前者の効力の及ぶ範囲と対抗力

答案の筋

1甲丙間の法律関係について、従物も付加一体物にあたり、本件機械に甲の抵当権の効力は及ぶところ、占有改定としての乙の譲渡担保権の実行では即時取得し得ないものの、抵当目的物から持ち出された場合、登記による公示力が及ばなくなり第三者に対抗できなくなるため、甲は丙に対して抵当権に基づき抵当権設定者Aの下に戻すよう請求することは出来ない。
2 甲乙間の法律関係について、甲の抵当権を侵害する譲渡担保権の実行について、乙に故意・過失がある場合、甲は乙に対して不法行為責任を追求して損害賠償請求をなし得る。

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